帰れぬ旅

帰れぬ旅人

…随分と…遠い場所へ来た
私の近くに見えるものは一面闇。
それもそうか、ここは宇宙。そしてここは、宇宙の深淵、ボイドなのだから
ボイドには、何もない。星も光も生命も無い、暗い深淵
私は一体、何年宇宙を旅しているんだろうか？
１０年…いや２０年以上は経っているだろう
私は探査機。仕事は二つあるが、仕事の一つ目は終わった。
それは、太陽系に近づき写真を撮ること。
そして、２つ目は…私を作った人間以外の生物に、地球のデータを詰め込んだ、レコードを渡すため…
私は二つ目の仕事のため、今も旅をしている
今の所は、生命をもつ、星は見られない
…私が壊れるのが先か、このレコードを渡せるのが先か…それでもいい…私は探査機で私は旅人なのだから
ボイドの中で、後ろを振り向くと遠くに一つだけ見える星がある
小さくて、偉大な星、地球
あの白い小さな点で私は作られた
愛も、想いも、意思も、幸福も、不幸も、悲しみも、喜びも、生も死も、全てがあの小さな点に詰まっている
…私の仕事、さっき私は仕事の一つ目は終わったと言ったが、まだ出来ていないことがあった。それは、太陽系の一つ、地球を撮っていない
私は、暗いボイドでも見れる点を撮る
どうか…あの点にデータが届きますように
さて、これで仕事は、一つだけになった
充電は宇宙と違い無限ではない。しばらくは、電源を切っておこう
…探査機から、人類へ、敬意を、そして幸運を