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転職して欝々としていたら、友達の弟に遭遇。……ときめきとか、縁のない言葉だと思っていたんだけど!?
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今日は、ダイエットはおやすみだ。
食べたいものを、存分に食べてやる。
チーズバーガースペシャルと、ポテトのLサイズにコーラのLサイズ。
カロリーおばけなメニューをトレーに乗せ、慎重に階段を昇る。
空いている席、あるかな。
ぐるっとイートインの席に視線を巡らせた。
そのとき、窓際の席に座っていた男の子が「あ」と立ち上がった。
「菜摘さん!……ですよね?」
「あ、はい。そうですけど」
たぶん20代半ばくらいっぽい男の子は、人懐っこい顔で、私を見て笑う。
名前を呼ばれたってことは、知り合いだろうか。
けど、ぜんぜん見覚えがない。
すらっと高い身長は、私の頭半分くらい大きい。
子犬っぽい親しみやすそうな笑顔をうかべている顔は、よくテレビで見る俳優さんにも似ていて、人の美醜がよくわからない私でもはっきりわかるくらいイケメンだ。
やばい。
一目見たら忘れられないレベルのイケメンなのに、ぜんぜん誰かわからない。
仕事関係の人じゃありませんようにと祈りながら、「えーと」っと首をかしげた。
すると男の子は、ちょっとがっかりしたように肩を落としつつ、笑って、
「あ、わからないですよね。小野です。小野咲良の弟の高良です」
「あぁ!咲良の……!えー!! 久しぶり。大きくなったねー」
高校の時からの親友の名前を聞いて、思い出した。
そうだ。
確かに咲良には4歳年下の弟がいた。
咲良が大学を卒業して一人暮らしを始めるまでは、実家にもちょこちょこ遊びに行っていた。
だから、弟くんにも何度も会っていた。
けど、弟くんが高校生の時で、記憶が止まっていたから、ぜんぜんわからなかった。
「大きくって……。菜摘さんに最後に会ったのって高校の時ですよね。あのころからはそう身長のびてませんけど」
「そうなの? でも、大きくなった気がしたよ。大人っぽくなったからかなぁ」
「まぁ、もう大人ですしね。俺ももう働いている社会人なんですよ」
小さな頃から知っている子だから、ついつい子ども扱いをしてしまう。
高良くんは、苦笑した。
「そうなんだよねー。月日が経つのははやいわ。お父さまのところで働いているの?」
「そうです。去年まで、他の事務所で働いていたんですけど。そろそろ父の事務所の仕事を覚えようと思って」
「会計士さんかぁ。高良くん、数学得意だったもんね。すごいなぁ」
高校生のころ、中学生の高良くんに数学を教えてもらったこともあったっけ。
しみじみ言いながら、まだ若いのに立派にキャリアを築いている高良くんと、自分との格差を感じて、すこし悲しい。
ほんとこのくらいの年になると、年齢よりその人がどう生きてきたかが問われるよね。
でも勝手だけど、姉的な気分で、そんな高良くんのことを誇らしくも思う。
高良くんは「そんなことないですけど」と照れたように笑って、
「菜摘さん、今から食べるんですか? よかったら、一緒しません?」
自分が座っていた席を視線で示す。
夕食時だからか、お店には他に空いている席がなかった。
「いいの?ありがとう」
食べたいものを、存分に食べてやる。
チーズバーガースペシャルと、ポテトのLサイズにコーラのLサイズ。
カロリーおばけなメニューをトレーに乗せ、慎重に階段を昇る。
空いている席、あるかな。
ぐるっとイートインの席に視線を巡らせた。
そのとき、窓際の席に座っていた男の子が「あ」と立ち上がった。
「菜摘さん!……ですよね?」
「あ、はい。そうですけど」
たぶん20代半ばくらいっぽい男の子は、人懐っこい顔で、私を見て笑う。
名前を呼ばれたってことは、知り合いだろうか。
けど、ぜんぜん見覚えがない。
すらっと高い身長は、私の頭半分くらい大きい。
子犬っぽい親しみやすそうな笑顔をうかべている顔は、よくテレビで見る俳優さんにも似ていて、人の美醜がよくわからない私でもはっきりわかるくらいイケメンだ。
やばい。
一目見たら忘れられないレベルのイケメンなのに、ぜんぜん誰かわからない。
仕事関係の人じゃありませんようにと祈りながら、「えーと」っと首をかしげた。
すると男の子は、ちょっとがっかりしたように肩を落としつつ、笑って、
「あ、わからないですよね。小野です。小野咲良の弟の高良です」
「あぁ!咲良の……!えー!! 久しぶり。大きくなったねー」
高校の時からの親友の名前を聞いて、思い出した。
そうだ。
確かに咲良には4歳年下の弟がいた。
咲良が大学を卒業して一人暮らしを始めるまでは、実家にもちょこちょこ遊びに行っていた。
だから、弟くんにも何度も会っていた。
けど、弟くんが高校生の時で、記憶が止まっていたから、ぜんぜんわからなかった。
「大きくって……。菜摘さんに最後に会ったのって高校の時ですよね。あのころからはそう身長のびてませんけど」
「そうなの? でも、大きくなった気がしたよ。大人っぽくなったからかなぁ」
「まぁ、もう大人ですしね。俺ももう働いている社会人なんですよ」
小さな頃から知っている子だから、ついつい子ども扱いをしてしまう。
高良くんは、苦笑した。
「そうなんだよねー。月日が経つのははやいわ。お父さまのところで働いているの?」
「そうです。去年まで、他の事務所で働いていたんですけど。そろそろ父の事務所の仕事を覚えようと思って」
「会計士さんかぁ。高良くん、数学得意だったもんね。すごいなぁ」
高校生のころ、中学生の高良くんに数学を教えてもらったこともあったっけ。
しみじみ言いながら、まだ若いのに立派にキャリアを築いている高良くんと、自分との格差を感じて、すこし悲しい。
ほんとこのくらいの年になると、年齢よりその人がどう生きてきたかが問われるよね。
でも勝手だけど、姉的な気分で、そんな高良くんのことを誇らしくも思う。
高良くんは「そんなことないですけど」と照れたように笑って、
「菜摘さん、今から食べるんですか? よかったら、一緒しません?」
自分が座っていた席を視線で示す。
夕食時だからか、お店には他に空いている席がなかった。
「いいの?ありがとう」
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