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番外編(高田の話)
「貴女を愛することはない」という年上の次期番頭に玉砕覚悟で告白したら、溺愛されています……? -6
1週間、高田は考えに考えた。
怜二のために、自分はどう行動するのがいちばんいいのか、と。
父に言われたことも加味して考えて、考えて。
結論をだした。
怜二に求婚しよう、と。
そして、父を通して、怜二を自宅の客間に呼び出してもらった。
「とつぜん呼び出すなんて、なんの用事ですか。万智子お嬢様」
仕事終わりに高田の屋敷に顔を出した怜二は、そこにいるのが万智子だけだと気づいて、眉をひそめた。
女中が用意したお茶をぐいっと飲み干し、ちらりと万智子を睨む。
「呼び立ててしまって、申し訳なかったわ」
不機嫌そうな顔。
仕事の終わりに雇い主に呼び出されたと思えば、呼び出したのは雇い主ではなくその子どもだなんて、さぞ迷惑に感じているのだろう。
申し訳ないと思うのに、それよりもいまから自分が話すことへの羞恥と恐怖が勝つ。
万智子は顔を赤らめて、もじもじと指を胸の前で交差させた。
「どうかしたんですか……?」
万智子の態度がいつもと違うことに気づいたのだろう。
怜二の態度に警戒が混じる。
けれどすこしだけ万智子を案じてもいるような目つきで、万智子をじっと見つめてくる。
その無遠慮な視線にさらされて、万智子はさらに顔を赤らめた。
(あぁ、好き……。わたくし、この人のことが、好きだわ)
冷たくて、ぶっきらぼうで、意地悪なくせに、ふとした瞬間に優しさを見せる。
悪い男の典型だと思うのに、この目で見つめられると、もっと自分を見てほしいと思ってしまう。
怜二は、高田のことなんて、単なる雇い主の娘としてしかみていないってわかっているのに。
怜二のことを好きだと思えば思うほど、よけいに怜二に求婚することがこわくなる。
この話をきりだしてしまえば、もう元には戻れない。
怜二は、高田のことを軽蔑しないだろうか。
嫌いにならないだろうか。
この店から去ってしまったら、どうしよう。
もう怜二に会えなくなってしまったら、どうしよう……?
不安で、逃げ出したくて。
高田は、お守りのように、初音のことを思い出す。
たっぷりの愛情を注がれることで幸福そうに花開いた、元級友。
彼女のように、怜二を幸せにしたい。
他でもない高田が、たっぷり怜二に愛を注いで、彼を幸せにしたい。
初音の婚約者のようになんでもできるわけではない自分には、しおれた人を幸せにするだなんて、だいそれたことはできないかもしれない。
けれど、怜二が欲しがっているものが、怜二を愛する気持ちが変わらないという保証なら、いくらでも請け負える。
怜二が、好きだ。
今日も、明日も、きっと何十年たっても。
許されることなら、怜二のそばで、自分が彼を幸せにしたい。
(すくなくとも、わたくしと結婚すれば、この店は手に入りますし……)
怜二を想う他の娘たちが聞けば、はりたおされそうなことを、それと自覚して高田は考える。
(わたくしは、卑怯です。傲慢な娘です。けれども、それでも、怜二のそばにいられる権利を得られるのなら。どれほど卑怯だとそしられても、自分のもてるものすべてを賭けて、勝負にでたい……!)
怜二さえ、それを許してくれるのなら。
高田は、勇気をふりしぼって、口を開いた。
「怜二。わたくしと結婚してくださいませんか。わたくし、あなたのことをお慕いしております。ぜったいにあなたを裏切ったりはいたしません。そしてもし了承してくださるのなら、この店は将来、あなたのものになります……!」
怜二のために、自分はどう行動するのがいちばんいいのか、と。
父に言われたことも加味して考えて、考えて。
結論をだした。
怜二に求婚しよう、と。
そして、父を通して、怜二を自宅の客間に呼び出してもらった。
「とつぜん呼び出すなんて、なんの用事ですか。万智子お嬢様」
仕事終わりに高田の屋敷に顔を出した怜二は、そこにいるのが万智子だけだと気づいて、眉をひそめた。
女中が用意したお茶をぐいっと飲み干し、ちらりと万智子を睨む。
「呼び立ててしまって、申し訳なかったわ」
不機嫌そうな顔。
仕事の終わりに雇い主に呼び出されたと思えば、呼び出したのは雇い主ではなくその子どもだなんて、さぞ迷惑に感じているのだろう。
申し訳ないと思うのに、それよりもいまから自分が話すことへの羞恥と恐怖が勝つ。
万智子は顔を赤らめて、もじもじと指を胸の前で交差させた。
「どうかしたんですか……?」
万智子の態度がいつもと違うことに気づいたのだろう。
怜二の態度に警戒が混じる。
けれどすこしだけ万智子を案じてもいるような目つきで、万智子をじっと見つめてくる。
その無遠慮な視線にさらされて、万智子はさらに顔を赤らめた。
(あぁ、好き……。わたくし、この人のことが、好きだわ)
冷たくて、ぶっきらぼうで、意地悪なくせに、ふとした瞬間に優しさを見せる。
悪い男の典型だと思うのに、この目で見つめられると、もっと自分を見てほしいと思ってしまう。
怜二は、高田のことなんて、単なる雇い主の娘としてしかみていないってわかっているのに。
怜二のことを好きだと思えば思うほど、よけいに怜二に求婚することがこわくなる。
この話をきりだしてしまえば、もう元には戻れない。
怜二は、高田のことを軽蔑しないだろうか。
嫌いにならないだろうか。
この店から去ってしまったら、どうしよう。
もう怜二に会えなくなってしまったら、どうしよう……?
不安で、逃げ出したくて。
高田は、お守りのように、初音のことを思い出す。
たっぷりの愛情を注がれることで幸福そうに花開いた、元級友。
彼女のように、怜二を幸せにしたい。
他でもない高田が、たっぷり怜二に愛を注いで、彼を幸せにしたい。
初音の婚約者のようになんでもできるわけではない自分には、しおれた人を幸せにするだなんて、だいそれたことはできないかもしれない。
けれど、怜二が欲しがっているものが、怜二を愛する気持ちが変わらないという保証なら、いくらでも請け負える。
怜二が、好きだ。
今日も、明日も、きっと何十年たっても。
許されることなら、怜二のそばで、自分が彼を幸せにしたい。
(すくなくとも、わたくしと結婚すれば、この店は手に入りますし……)
怜二を想う他の娘たちが聞けば、はりたおされそうなことを、それと自覚して高田は考える。
(わたくしは、卑怯です。傲慢な娘です。けれども、それでも、怜二のそばにいられる権利を得られるのなら。どれほど卑怯だとそしられても、自分のもてるものすべてを賭けて、勝負にでたい……!)
怜二さえ、それを許してくれるのなら。
高田は、勇気をふりしぼって、口を開いた。
「怜二。わたくしと結婚してくださいませんか。わたくし、あなたのことをお慕いしております。ぜったいにあなたを裏切ったりはいたしません。そしてもし了承してくださるのなら、この店は将来、あなたのものになります……!」
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完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。