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番外編(上村の話)
「結婚しようかな」とつぶやいたところ、幼馴染に求婚されました。ずっと溺愛されてたなんて知りませんっ……!-5
目をふせても、圭司が上村を見つめている視線は痛いほど感じる。
あけっぴろげに好意を伝えてくる視線は、むかしから慣れたもののはずなのに、圭司の姿が変わっただけで、その視線を受け取る上村の気持ちは違ってしまう。
これがお芝居なら、きっとここから恋がはじまるのだろう。
上村は、そわそわとした甘酸っぱい自分の気持ちを、そんなふうに考えてしまった。
誰かに見つめられただけでどきどきするなんて、お芝居や小説の中だけのことだと思っていた。
……いや、それも違うか。
上村は、初音を見つめるあやかしの統領の視線をおぼえている。
あの、他人から見てもあきらかなほど、初音への愛情たっぷりの視線を。
それに、高田が婚約者のことを語るときの視線のとろけるようなあまさと熱情も見知っていた。
高田は、婚約者に見つめられると顔が熱くなって恥ずかしいと言っていた。
見つめられるだけでどきどきするということは、お芝居や小説だけでなく、現実にもあるのだろう。
ただ、上村には無縁だっただけだ。
そしてこれからも、ずっと無縁だろうと思っていたのだけれど……。
いま、目の前に、自分への好意を隠さず見つめてくる男性がいる。
彼のことは、よく知っている。
どんくさいけれど真面目で、すごく優しい人だ。
特に、上村にはいつだって優しくしてくれる。
もしかすると、圭司は、上村のことが好きかもしれない……?
幼馴染としてではなく、恋、という意味で。
そんなことって、あるのだろうか。
上村は、記憶の中の圭司との思い出と、目の前の圭司を観察しながら、その可能性について考えてみた。
けれど、やはりわからない。
圭司が上村のことを恋という意味で好きという可能性はありそうで、けれど、それが上村の都合のいい思い込みではないかという気もした。
「千鶴ちゃん……? どうかしたの?」
目をふせたまま黙りこくる上村に、圭司が心配そうに声をかける。
「あぁ、ごめんなさい。ついぼんやりしてしまいました」
上村は、まばたきをひとつして、ほほ笑んだ。
いくら親しくしている幼馴染相手とはいえ、お客様の前でぼんやりするなんて、失礼だった。
まして、相手の好意をはかるようなことを考えるなんて。
上村は反省した。
けれど、自分の微笑を見た圭司が「そ、そう……?」と心配そうにしつつも、頬を赤らめるのに気づいてしまった。
これは、やはり、もしかすると、もしかするのではないだろうか。
上村が、そう思った時。
ふたりのやりとりを横で見ていた修司が、上村に声をかけた。
「そういえば、さ。千鶴ちゃん。圭司は、しばらく国を離れるかもしれないんだ」
「え……。そうなんですね。ご旅行ですか?」
修司たちとは違い、圭司はまだ仕事についているわけではない。
学校で学んでいる最中なのだから、旅行かなにかで外国へ行くのかと思って、上村は圭司に尋ねた。
けれど圭司は、上村から視線をそらし、苦い表情で修司に言う。
「修司兄さん、その話は、まだ決めたわけでは……」
「そうなのか? だけど、いい話じゃないか。サイエ国は、西の大陸の中でも屈指の科学大国だ。残念だが、現在のわが国では比べ物にならない。そのサイエ国の国立研究所に研究員として招かれるなんて、これまでは年配の教授陣でも片手で数えられる程度の人数しかいなかったんだぞ。圭司くらい若い年齢で招かれたのは、わが国では初めてのことだろう?」
「それは、そうだけど……」
「まぁ……! それは、すばらしい栄誉ではありませんか!」
上村は心から驚いて、称賛のまなざしで圭司を見た。
けれど、なぜだろう。
胸のどこかが、なぜだかさむざむしい。
あけっぴろげに好意を伝えてくる視線は、むかしから慣れたもののはずなのに、圭司の姿が変わっただけで、その視線を受け取る上村の気持ちは違ってしまう。
これがお芝居なら、きっとここから恋がはじまるのだろう。
上村は、そわそわとした甘酸っぱい自分の気持ちを、そんなふうに考えてしまった。
誰かに見つめられただけでどきどきするなんて、お芝居や小説の中だけのことだと思っていた。
……いや、それも違うか。
上村は、初音を見つめるあやかしの統領の視線をおぼえている。
あの、他人から見てもあきらかなほど、初音への愛情たっぷりの視線を。
それに、高田が婚約者のことを語るときの視線のとろけるようなあまさと熱情も見知っていた。
高田は、婚約者に見つめられると顔が熱くなって恥ずかしいと言っていた。
見つめられるだけでどきどきするということは、お芝居や小説だけでなく、現実にもあるのだろう。
ただ、上村には無縁だっただけだ。
そしてこれからも、ずっと無縁だろうと思っていたのだけれど……。
いま、目の前に、自分への好意を隠さず見つめてくる男性がいる。
彼のことは、よく知っている。
どんくさいけれど真面目で、すごく優しい人だ。
特に、上村にはいつだって優しくしてくれる。
もしかすると、圭司は、上村のことが好きかもしれない……?
幼馴染としてではなく、恋、という意味で。
そんなことって、あるのだろうか。
上村は、記憶の中の圭司との思い出と、目の前の圭司を観察しながら、その可能性について考えてみた。
けれど、やはりわからない。
圭司が上村のことを恋という意味で好きという可能性はありそうで、けれど、それが上村の都合のいい思い込みではないかという気もした。
「千鶴ちゃん……? どうかしたの?」
目をふせたまま黙りこくる上村に、圭司が心配そうに声をかける。
「あぁ、ごめんなさい。ついぼんやりしてしまいました」
上村は、まばたきをひとつして、ほほ笑んだ。
いくら親しくしている幼馴染相手とはいえ、お客様の前でぼんやりするなんて、失礼だった。
まして、相手の好意をはかるようなことを考えるなんて。
上村は反省した。
けれど、自分の微笑を見た圭司が「そ、そう……?」と心配そうにしつつも、頬を赤らめるのに気づいてしまった。
これは、やはり、もしかすると、もしかするのではないだろうか。
上村が、そう思った時。
ふたりのやりとりを横で見ていた修司が、上村に声をかけた。
「そういえば、さ。千鶴ちゃん。圭司は、しばらく国を離れるかもしれないんだ」
「え……。そうなんですね。ご旅行ですか?」
修司たちとは違い、圭司はまだ仕事についているわけではない。
学校で学んでいる最中なのだから、旅行かなにかで外国へ行くのかと思って、上村は圭司に尋ねた。
けれど圭司は、上村から視線をそらし、苦い表情で修司に言う。
「修司兄さん、その話は、まだ決めたわけでは……」
「そうなのか? だけど、いい話じゃないか。サイエ国は、西の大陸の中でも屈指の科学大国だ。残念だが、現在のわが国では比べ物にならない。そのサイエ国の国立研究所に研究員として招かれるなんて、これまでは年配の教授陣でも片手で数えられる程度の人数しかいなかったんだぞ。圭司くらい若い年齢で招かれたのは、わが国では初めてのことだろう?」
「それは、そうだけど……」
「まぁ……! それは、すばらしい栄誉ではありませんか!」
上村は心から驚いて、称賛のまなざしで圭司を見た。
けれど、なぜだろう。
胸のどこかが、なぜだかさむざむしい。
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