秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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桐生 珪 ~Kei Kiryu

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__2学期
最初の試験が終わった頃になると、学校ではあるイベントが始まる。

それは、生徒会選挙。

基本的に生徒会役員に入れるのは、1年生の2学期から3年生の1学期まで。3年生は受験の為に、1学期終了と共に引退となるのだ。
そして2学期の今、生徒会選挙に向けて立候補者を受け付けているようだった。

掲示されたその概要を見てみたのだけど、わたしには面倒くさい…ぐらいにしか見えなかったが、ある1文ほど興味深い事が書かれていた。


─生徒会長は、1つだけ校則を作る事が出来る─

…それはつまり、選挙活動の際にはそれをマニフェストとして生徒に演説して、会長になるべく票を稼ぐというわけなんだ。

自分が作れる、新しい校則…!

「………………」

ちょっと考えてみたけれど、別にわたしにはそんな支配欲があるわけじゃない。
勉強して進学するだけの学校で、わざわざ面倒くさい生徒会なんか…

そう思って、その時は特に気にしなかった。
…その時は。




それから数日後には、早速生徒会への立候補者が次々ポスターを学校中に張り出した。
名前と学年、それから自己アピールやら、それこそマニフェストやら。

あまりに常識外れなものでなければ、だいたいの新しい校則は受け入れられるみたいだ。

その中の例に、体育祭を中止し学園祭の規模を大きくする。というものや、水泳の授業は男女別々ではなく混合にする。などと、かなり個人的な要求にも思えるものさえあった。

何だかバカらしい…。

そう思いながらとりあえず一通り立候補者のポスターを見て回っていると、ふと、ある立候補者の名前を見て立ち止まってしまった。


桐生珪だ!
コイツ、生徒会に立候補したんだ。


わたしは改めて桐生珪のポスターを見てみた。

1年C組…わたしのA組のクラスの隣の隣。
これで、桐生珪のクラスがわかった!

ポスターには顔写真なんか付いてるわけじゃない。
ただ名前とクラスが書かれていただけで、コイツだけはこれといったアピール的なものは何も書いてなかった。

もちろん演説当日には何か話すのだろうけど、それまで特にアピールしないなんて、よっぽど自信があるってわけなのかしら。

顔もわからない、何考えてるかもわからない。
そんな桐生珪が、わたしはどうしても気になってしまっていた。

何にしても1年C組なのはわかったんだし、教室を覗いてみればわかるかもしれない。

そう思ってポスターから目を離し教室に戻ろうとした瞬間、わたしの背後から声をかけてきた人物がいた。


「そんなにガン見するなんて、オレに1票入れてくれるの?」

「……っ」

振り返ったそこにいたのは、端正な顔立ちにスラッと背の高いスタイルの良い男子生徒だった。


「1票って…」

「見てたろ?
オレの選挙ポスター」

オレの…?
まさかコイツが、コイツが…っ


「あ あなたが…桐生…君?」


予想していたのと全然違う。

ぶ厚い眼鏡なんかしていない。
陰気そうな雰囲気なんか全くない。
整った顔付きなんか、むしろイケメンって奴……


「あぁ、オレが桐生だよ。
あんただろ?榊千歳ってのは」

「えっ!?」

急に名前を言われて驚いた。
桐生珪は、わたしの事を知ってるの!?


「どうして、わたしの事を?」

わたしは桐生珪なんて名前以外ずっと知らなかった。

以前どこかで会った?
…ううん、そんな記憶全くない。
じゃあ、どうして桐生珪はわたしの事を…


「当たり前だろ。お前みたいな有名な奴、知らない方がおかしいさ」

「有名?わたしが?」

「なんだ、全然自覚すらしてないってのか?
頭が良くて美人でおしとやかってね。
…それに、いつもオレの上を行ってた」

桐生珪の表情が、ニタリとわたしの顔を捉えたのだった。
いつもオレの上に…って、それは1学期で貼り出されていた成績の事だ。
数学以外、わたしのすぐ下にいたから…!


「き、桐生君は生徒会に立候補したのね。
ポスターには書いてないけど、生徒会長になったらどんな校則を作りたいの?」


なるべく表情を出さないようにして、わたしは訊いてみた。
頭が良いと成績が良いは違うんだから!
テストの点数だけが良いバカは、探せばいくらでもいるもんね。


「さぁ…それは演説当日までのお楽しみだね」

「…な……っ」

フッと笑うと、桐生珪はきびすを返してわたしのもとから去っていった。

な なにっ
何なのよ、あの余裕綽々と言わんばかりの表情は!

数学だけはわたしより良い成績を残したからって、絶対いい気になってるんだ!


何だか桐生珪に、わたしは更なる苛立ちを覚えた。
総合点で言えば、わたしの方が成績は上。

だけど、たまたま数学の点は追い抜かれたってだけ。そしてアイツ、桐生珪がわたしを知っているという事は、わたしをライバル視していたって事なのよね!

なのに、もしアイツが生徒会長になってしまったら…
アイツはわたしを堂々と見下すってわけね!

そんなの、絶対許さないんだから!
どうにかしてアイツを生徒会長にさせないようにしなきゃいけないってわけだわ!

でもどうやって…


「…そうか!」

簡単な事だった。
わたしが生徒会長になればいいんだ。
そうすれば、逆にわたしが桐生珪を堂々と見下す事だって出来る!

生徒会の立候補は今週中までだった。


「よぉし!」

それがわかると、わたしは早速生徒会役員立候補の手続きを行う準備を始めた。


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