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めちゃくちゃだ!
何もかも、全部、みんな。
何が何だかわからなくなり、通常の思考すら出来なくなってる。

ちょっと考え事していたら、すぐにアイツの顔が頭の中に浮かんでくる。忘れようとすればするほど、しつこくわたしに付きまとってくる!

こんなにもバカにされた事、一度だってなかった。
屈辱的よ!


家に帰ってからも頭の中によぎるアイツの姿を忘れようと、わたしは勉強に集中しようとした。

だけど、参考書の文字を目で追う度に現れる桐生珪の幻覚が、それすらもわたしを妨害した。

大っ嫌い!
なのに、1年も同じ執行部でいないといけないなんて。
本っ当、サイテーよ!






__あの日から、放課後の集まりには参加しているものの、事務的に仕事をこなすだけこなしてさっさと帰宅した。

少しでもアイツの顔は見たくない。
声も聞きたくない。
なのに、家に着いても頭の中はアイツでいっぱいだった。





そうしていくうち、試験の日はやって来た。

3日間に渡って行われる今回の中間試験。
さすがにこの日だけは生徒会の集まりはない。
唯一、学校に来て桐生珪の顔を見なくて済む貴重な日。

わたしは試験に集中して励んだ。
…つもりだった。


だけど

───『2人だけの秘密』

どうしてもこの言葉だけは、試験中でも耳の奥から消えなかった。

どの教科も桐生珪には負けない。
最初はそう思っていたけど、そうじゃない。

とにかく一番になる。
わたしは、わたしと勝負すればいいのよ!




貴重に思えた3日間に渡る試験期間は、あっと言う間に終わった。

けれど、何だか…ずっと調子悪かったような気がする。


試験が終わってからは、今度は総会の日が近いのでまた忙しくなる。
そして…またアイツと会わなきゃならないかと思うと、自然と足取りも重くなった。





総会に使う資料を片手に生徒会室に向かうと、3階の廊下の先にメンバーたち3人がドアの前に立っていた。

あれ?
どうして中に入らないのよ。

そう思いながら3人のもとまで行くと、みんな待ってましたと言わんばかりの様子でわたしを迎えた。


「遅かったですね、待ってましたよ」

「今日から本番まで日にちないんだから、早く終わらせねぇとな」

「…え?
桐生君が先に来てるんじゃないの?」

「生徒会長なら、今日は学校をお休みですよ。
なんでも身内に不幸があったみたいで、今日から3日間は忌引なんです」


桐生珪が忌引…

「だから、生徒会室のカギを持っているのは副会長だけなんですから、早く開けて始めましょう。
会長が休んでる分も、作業を進めないと!」

「あ…うん」

いると思ってたからこそ嫌な気分だったけど、いないとなると何だか拍子抜けしてしまった。

この日から3日間、桐生珪なしで総会に向けての準備や広報作業をメンバーたちと他愛のない話をしながら進めた。


余計な冷やかしもないから動揺する事もない。
集中して活動できたからその分成果も上がり、この3日だけで殆ど作業は終了した。




「案外早く終わりましたね」

「会長がいない方が能率よかったなんて。
本人には言えないですね」

「ま、とにかく終わったんだからいいじゃん」


今週はこれで学校も終わり、休日を挟んだら月曜からは総会の木曜までに配布する資料を一応生徒会長である桐生珪に確認取ってもらってコピーすればいい。

これらの作業は後のメンバーの3人でやってくれるようだから、わたしの仕事としてはようやく一旦解放されたわけだ。


やれやれ…。
と、安堵感があったと同時に、何だかもの足りないような感覚もあった。
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