秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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トボトボと階段を上がり廊下を歩いた先の生徒会室のドアが急に開いた。


「じゃ、後はお願いしまーす」

「お疲れ様ですー」

そう言って中からメンバーたち3人がぞろぞろと出てきた。

「あれ、副会長」

「みんな…どこ行くの?」

「どこって…帰るんですよ。
出来た広報、今日は生徒会長に見てもらうだけだから」

「また修正の箇所があったら、明日来てみんなでやるんです」

あ、そうか。
一応アイツが休んでる間に済ませたから、後は見てもらうって話だったっけ。

て事は、今日はアイツいるんだ。
…何だかすごく久し振りに会うみたいだな…。


「じゃ、俺たちは先に帰るんで」

「お疲れ様でーす」

「あ、うん。
お疲れ様です…」


3人を廊下の先まで見送ると、わたしは振り返って生徒会室のドアに手をかけた。

ガラガラと開けた生徒会室のドアの向こうには、何枚かの書類を手にしている桐生珪が定位置のイスに座っていた。

「ぁ…」

久し振りに見る桐生珪の姿にまず何て挨拶したらいいかわからず、何となく声を漏らした。

そんなわたしに気付いた桐生珪は資料に向けた目をわたしの方に移した。

「榊、悪かったな。オレだけしばらく休んじゃって。
みんなだけでこんなに進めてくれたんだな」

「あ…ううん。
仕方ないわよ…」

ガラガラとドアを閉めて、わたしも机の定位置まで着いた。

再び視線を手元に戻した桐生珪は、パラパラと簡単にめくってわたしたちで書き上げた資料を読んだ。

「どう…かな…」

「うん、いいじゃないか。
何?オレがいない方が能率いいわけ?」

そう言って1人笑う桐生珪。
だけど今のわたしには、笑う気になんか全くなれなかった。


「他のみんなは帰っちゃったみたいね」

「あぁ、後はオレがチェック入れて良かったらコピーするだけだからな」

じゃあ、わたしも今日はここにいる必要がない。

だけど、家に帰ってもママに怒られるかと思ったら…帰る気もなくなる…。
まだここで、みんなで仕事してる方がマシだなぁ。
もちろん帰ったら同じ事なんだけど。

「……………はぁ…」

憂鬱な気分から、ついため息が出た。


「どうしたんだよ、榊。
今日はらしくないな」

読み終えた書類を机の面でトントンと揃えながら桐生珪はわたしに訊いた。

何がらしくないよ。
アンタは何もかも学年一番になって、さぞ天狗になってるんでしょうね!


「なんかもう…全部嫌になっちゃった…」

思わず、わたしも本音がこぼれてしまった。

もともと勉強だって楽しいって思ってやってるわけじゃない。進学だって、その先の進路だってわたしの意志じゃない。

誰かの為に頑張って、わたしは一体何の為にわたしをやってるのって思う。
わたしは…わたしを殺してまで頑張ってるのに…


「榊…一体どうしたんだよ」

「桐生君…。
わたし…生徒会の副会長、辞めるね…」

「はぁ?」

そうよ。
勉強を疎かにしてまで、生徒会の執行部をやる必要なんてないわ。
きっとママも、同じ事を言う。
だったら、言われる前に…


「じゃあね、桐生君。
短い間だったけど、いい経験になったわ。
ありがとう」

わたしは机に置いた生徒会の資料のファイルを、わざと置いたままにして部屋を出ようとした。

「おい、ちょっと待てったら!」

ドアを開けようとしたわたしの手を、桐生珪は駆け寄ってグイッと掴んだ。


「痛っ
離してよっ!」

「何の理由も話さないでいきなり辞めるとか言われて、黙って帰すわけないだろ!
どうしたんだって訊いてるだろ?」

グッと手首を掴まれ、振り払おうとしてもなかなか離す事が出来なかった。
そこはやっぱり男子の力には適わないって奴だろう。


「アンタには関係ないわよ!
いいわよねっ、アンタはわたしの持ってないもの何でも手に入れて。さぞ良いご気分なんでしょうよ!
今だって、心配する振りして腹の内じゃあ笑ってるんでしょ!?」

「榊!!」

怒鳴るように呼ばれ、ビクッと身を縮ませた。

その直後、ふわっと身体を包み込むようなあったかい感触。


「………………っ」

掴まれた手首は解放され、今度は抱きしめられていた。

ギュッと、わたしの身体を。
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