秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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「…榊はいっつも本音を言わないんだな」

「な……っ」

背中に回された手がわたしの身体を締めつける。
頭の中じゃあ逃げ出そうと思っているのに、身体の方は全く動かなかった。


「思ってる事、言えばいいじゃん。
何度も言ってるだろ? ここには誰も入ってこれないし、誰の目にも触れない。
オレたちふたりだけだって」

今のわたしには桐生珪の顔は見えない。
桐生珪の肩越しに見える2台の長机だけが目に映った。

そして心臓はドキドキと鳴り、桐生珪の身体を伝って響いてくる。


「この生徒会室だけで見せる榊の顔、オレ好きだよ。
オレの前じゃ、作った顔するなよ」


作った顔…。
わたしが榊千歳を演じる為に作った顔を、桐生珪は見抜いている。

誰も知らないわたしの本当の顔を知っているのは、桐生珪だけなんだ…!


「…ぅ……っ」

だんだんと目頭が熱くなり、やがて雫となって頬を伝い流れた。


「…わたし…」

「うん、どうした?」

桐生珪に抱きしめられドキドキしていたのが、だんだんと和らいでいった。

男子に抱きしめられるとか初めてで最初はドキドキしちゃったけど、今は何か違う。
すごく心地よくって、何だか安心してしまうっていうか…。

だけど、どうしてそんな気持ちになるのかはわからない。わたしから何もかもを奪い取ったりするからイライラしてのに。


「…ムカつくのよ。
いつもいつもわたしの頭の中に現れて」

「オレが?」

「先週からずっとそうだった。消そうと思ってんのに、いつも目の前にいるような感覚で。
わたしの頭の中はアンタでいっぱいで、迷惑してたのよ」

「榊…」

ギュッと抱きしめられていた身体が、スッと緩んだ。
今度は桐生珪がわたしの顔を覗き込む。

「ゃ…」

言ってる間にボロボロとこぼした涙で汚れた顔を見られたくなく、わたしは顔を伏せた。

どうしてこんなに泣いてんのよ。
どうしてこんなに胸が熱くなってんのよ。

どうして…


「言えよ。それってつまり、どうなんだ?
榊はオレの事、どう思ってるんだよ」

「わ、わたしは…」

こんなにもわたしを動揺させ、こんなにもわたしをイライラさせるの。
こんなにもわたしを夢中にさせ、こんなにもわたしをいっぱいにさせる。

わたしは、桐生珪が……


「アンタなんか…大っ嫌いよ!」

ドンと両手で身体を突き飛ばし、桐生珪がひるんだ隙にわたしは生徒会室を飛び出した。

「榊!」

副会長なんて、わたしの方から辞めてやる!
生徒会室に来るのも、これで終わりなんだから!






3階から階段を駆け下りて、一旦手荒い場で涙で汚れた顔を洗うと教室に戻った。

そして机のサイドにかけておいた通学カバンを持つと、その足で昇降口まで走り靴を履き替えて出た。



__と、その時。


「榊さん」

わたしを呼ぶ声に反応して、振り返った。

そこには、クラスメイトの女子が何だかソワソワしながら立っていた。


「…えっと、叶…さん?」

普段よく話すとかそんな仲じゃない子だ。
彼女の友達はわたしなんかじゃなく、ちゃんと別にいる。

そんな彼女が、珍しくわたしに話しかけてきたんだ。


「榊さん、いま生徒会の帰り?」

「あ…うん」

帰りって言うか、勝手に飛び出して来たわけでもあるけど。まぁ他の3人ももう帰ったんだから、帰りって言えば帰りかな。

「ねぇ榊さん。
もう執行部のみんなは帰っちゃったの?」

「うん、仕事が早く片付いてるから今日はもう帰ったよ。
あ…会長はまだ上にいるみたいだけどね…」


今も書き上げた書類を見てるかしら。
それとも、持って帰って家で読み直すのかな。
ま、どっちにしてもわたしには関係ないけど。


「桐生クン、まだ残ってるんだぁ。
…ね、榊さん。生徒会室ではどう?」

「どうって?」

「新しい校則、今度から恋愛してもOKになるんでしょ?」

OKって言うか、総会で生徒によって可決すればの話であって、しかもわたしが反対したものだから校外だけでって事なんだよね…。
だけど、それはここで勝手に話しちゃいけない事だから、今ははっきり頷く事も首を振る事も出来ない。

「ホントは校則が始まってからにしようかと思ってたんだけど、それじゃ他の女子と戦争になりそうだからやっぱり今のうちにしようと思ってね」

「は…?」
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