秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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本音 ~honne ➀

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「へぇ~、榊は医者になるんだ。
すげぇな!」

__鍵のかかった生徒会室。

仮に教員の誰かが来たとしても急にドアを開けたりは出来ないから、今は本当に密閉されたふたりだけの空間。

わたしは桐生珪と隣同士で座ると、ゆっくりと自分の事を話した。

「なるっていうか、ならされるのよ。
わたしは別になりたいわけじゃないもの。
パパがドクターやってるから、ママはわたしもドクターにしたいのよ」

「榊ん家って開業してんの?」

「そういうわけじゃないんだけどね。
全部ママのワガママよ」

そう、その為にわたしには普通の女子学生らしい生活は送っていなかった。学校行って勉強して、家に帰っても勉強して。また朝には学校行って…。
楽しい事なんて何にもない。ま、頭の悪い友だちなんか欲しいとも思ってないんだけども。


「だから勉強頑張ってたんだな」

「まぁね…」

とはいえ、誰かにそうやって理解をしてもらえると、何だか勉強に対して重く感じてたものが少しだけ軽くなったような気がした。
こんな事を誰かに話したの、初めてだからかな。


「で?桐生君は何の為に勉強頑張ってんの?」

「オレ?
オレは単に天才なの」

「アンタねぇ」

「冗談だよっ
オレは助成金の為。ここで良い成績残すのを条件に、タダで高校行かせてもらってんの!」

助成金?
タダ?

確かに、そんな制度を聞いた事はある。
だけどよっぽど貧乏かよっぽど頭が良い生徒とかじゃないとそんな事…


「オレん家、兄弟はいるけど親はいないんだ」

「えぇっ」

「だから、国から支給されてるお金は殆ど生活費に回してて、学費はこうしないと高校も行けないわけ。
あ、誰にも言うなよ?生徒会長が貧乏で親無しだなんて、絶対ネタにされるもんな」

「わ、わかってるわよ…っ」

まさか桐生珪に、そんな秘密があったなんて知らなかった。もちろん、そんな秘密を知る由もなかったんだけど。

だけど…両親ともいなくて兄弟だけって…。
普段そんな素振りは全く見せなかったのに、桐生珪にもこんな事情があったなんてね…。



「でも家に両親がいないって…おじいちゃんとかおばあちゃんとかは…?」

「一応母方のじーさんに世話してもらってたんだけど、そのじーさんもこの間死んじゃったからなぁ」


あ…。
先週、忌引で休んでたっけ。
じゃあ頼れる人とかは、誰もいなくなっちゃった…?


「だから…桐生君は勉強も頑張ってるし、生徒会長にもなったのね」

うちはお金で苦労するなんてないから、桐生珪のそんな苦労なんてちっとも気付いてあげられなかった。
わたしの事も、自分に無いものを持ってるって言ってたけど、そういう意味だったんだ。



「榊、それは一部違うぞ」

「え、何が?」

「生徒会長になるのは別に条件じゃない。
この学校の、生徒会長になったら校則を作れるって話に乗っただけだ」

「あ…そうなんだ…」

でもコイツのマニフェストは恋愛の自由化。
しかもせっかく生徒会長になって校則の案を提出する権利を得たってのに、それもわたしの案に変えちゃったり。
これじゃあ意味をなさないんじゃない?

「じゃあどうして…わたしの案に譲ってくれたのよ。
恋愛したくて恋愛禁止令を解除する予定じゃなかったの?」

「あぁ、そうだったよ。
だけど禁止されてた方がいいんだ。そうすりゃ誰もオレや榊に声をかけてこれなくなるもんな」

「…ねぇ、意味わかんないんだけど。
結局アンタは何がしたかったのよ」

それじゃあ恋愛したいんだかしたくないんだかわかんないじゃないっ
恋愛したいのに声をかけてこれなくなるのがいいわけ?


「…榊。
お前まだわからねぇの?
頭良いんだか悪いんだか、それこそわかんねぇな」

「な、なによっ
アンタの考えてる事なんか誰だってわかるわけないでしょ!!」

「…好きなんだよ。
榊の事が」

「…………は……?」

桐生珪の言葉は、わたしには未だ理解出来なかった。
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