秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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「…あ……」

ママの指差した箇所というのは、生徒会のメンバーの自己紹介欄だった。

生徒会長 1年C組桐生珪

副生徒会長 1年A組榊千歳

会計 2年A組伊集院雅

書記 2年B組更科翼

〃 1年B組相良忍


…明らかに書き記された、わたしの名前の横の生徒会長の文字。

わたしを生徒会長と思い込んでいるママは、当然書き間違いだと思っている。
だけど…こんなウソ、いつまでも突き通せるわけはない。どうせいつかはバレる事なんだ。


「…あのね、ママ…」

ま、たいした間違いじゃないわよね。生徒会長も副会長も、似たようなものよ。
だいたい桐生珪とは2票しか差がなかったんだから。

わたしはたいした問題じゃないと思い、これを機にママには本当の事を言った。


「副…会長?」

「あ、うん。
だけどね、この桐生って人とはほんの2票差で…」

たいした問題じゃない。
…そう思っていたのは、わたしだけだった。

「千歳、あなた生徒会長になれなかったの…?」

「…う、うん。だけどね…」

「なのに!バカみたいに成績を落としたっていうの!?
生徒会長じゃないのに!?」

「マ、ママ…?」

生徒会メンバーとして活動するという事に、意味があるものだと思っていた。
だけど、ママの考え方はそうじゃなかったんだ。

「副会長だなんてっ
そんなの、全く意味がないわ!
会長だからやりがいのある仕事なんでしょ!?」

「でも、新しい校則はわたしの案をね…」

ママが目指すものはいつでもナンバーワン。
2番目も3番目も同じものなんだ。

活動の内容なんて関係ない。
1番だから、意味がある。

「たかが副会長になったくらいで成績下げるなんて。
そんな事なら、副会長なんて辞めてしまいなさい!
いいわね、絶対よ!!」

副会長を辞める…?
それは生徒会メンバーから外れる…つまり、生徒会室に入れる資格を失うという事になるんだ…!

「千歳、返事は!?」

申請すれば、任意退任自体は不可能ではない。
もともと生徒会に興味があって入ったわけじゃない。
実際これらの仕事は、はっきり言って面倒くさい。
だけど…

ようやく見つけた、自分をさらけ出せる空間。
ようやく見つけた、わたしを理解してくれる人。

今わたしが副会長を辞めるという事は、そういう事も意味するんだ。

つまらない理由で立候補した生徒会…
わたしと恋愛したくて生徒会長を目指した桐生珪。

その権利である新しい校則をわたしのマニフェストで通し、且つわたしが副会長を辞めてしまったら…
もう、桐生珪と特別な関係でいる事は出来なくなってしまうって事。

嫌。そんなの…嫌っ
でも…

「……うん、わかった。
ごめんなさいママ…」

ママの言う事は絶対なんだ…。









__次の日の放課後。


誰よりも早く生徒会室に来た。
まだ誰も来ていないひとりきり。

ようやく完成させた教師選択システムのレポート用紙をクリアファイルごと机の上に置いた。

とりあえずやるべき事は終わったって感じ。これを提出すればわたしの仕事は終わり。
そうすれば、もういつでも副会長を辞めたっていいんだ。

そうしたら、またわたしは毎日学校と家を往復しながら勉強だけをする生活に戻る。
何事もなかったかのように、以前の生活に戻るだけ────。






「よっ、榊。
今日は早いじゃん!」

生徒会室のドアを開けた桐生珪が勢いよく入ってきた。
わたしの今の、こんな事情や思いなんて知らないで。
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