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③
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「…桐生君…」
「どうしたんだ?榊。
何か元気ないな」
「………………」
わたし、副会長を本当に辞めなきゃならなくなったんだ。
なんて、どうやって言おう。
だってこれはわたしの意思じゃないんだもの。
ママの言いつけは絶対なんだから仕方ないじゃない。
「お、これ例の提案書?
ちょっと見せてよ」
机に置いたクリアファイルからレポート用紙を取り出した桐生珪は、1枚1枚めくりながら読み始めた。
ねぇわかってる?
これでわたし、生徒会やめちゃうんだよ。
せっかくわたしのマニフェストを通してくれたのに、結局アンタの理想は叶わないまま終わっちゃうんだよ。
「…うん!なかなかいいじゃないか!
じゃあすぐに先生に提出して、審議してもらうよ」
先生に提出して。
これでわたしの仕事も、終わりだ。
選挙で受かって副会長になり、結局半月くらいしかいられなかった生徒会室。
だけどその短い間に、桐生珪とは深い関係になれた気がする。
わたしに心地いい場所を教えてくれた。
わたしに安心する時間を与えてくれた。
本当はもっとそうしていたい。
だけど、それが出来ないなら…
_『やっぱりオレ、榊の事すげー好きだ』
素直に、嬉しかった。
その想いに応えたい。
だってわたし、まだ桐生珪に自分の本当の気持ち言ってないもん。
わたしがまだ副会長で、生徒会室にいられる権利があるうちに。
今のうちに、わたしは桐生珪に本音を言わなきゃ…!
「あ あの…あのね…」
わたしの言葉に、いま背後にいるだろう桐生珪はわたしに姿勢を向けたようだ。
「アンタの事、最初はすごい嫌な奴だって思ってた。
アンタみたいな奴、わたしが見下してやるって…それしか考えてなかった」
「……………」
「だけどここでアンタと一緒の時間を過ごして、何か…わたし変わったわ。
すごく、自分らしくなれていった気がする」
仮面少女を演じる毎日。
それがわたしの生き方だったけど、でもそんなわたしの殻を破ってくれた。
それが桐生珪、アンタなのよ。
「わたしの事、好きって言ってくれたわよね。
なのにわたしは…素直になれなかった。ごめん…。
でも、今だから言うね。
わたし…アンタの事…」
胸が、熱い。
ずっと意地ばっか張って言えなかった本当の気持ち。
今なら言える。
わたしは、桐生珪が…
言いかけた時、イスに座るわたしの後ろから覆い被さるように腕が伸びてきた。
「……………………!?」
ゾクっとした。
何か、違う。
「何だ、副会長俺の事好きだったんだ」
「ぇ…っ!!?」
桐生珪と違う声に、わたしは驚いて後ろを振り返った。
「…更科…先輩っ」
さっきまで桐生珪がわたしの書いた提案書を持って読んでいた筈なのにっ
その桐生珪はこの生徒会室にはおらず、いつの間にか代わりに更科がそこにいた。
どうしてそんな…っ
レポート用紙もなくなっているという事は、桐生珪は職員室まで持って行ってしまったんだ。
その間に生徒会室に来た更科を、わたしは桐生珪と間違って告白しかけていたんだ!
ど、どうしようっ
わたしの告白を自分に対してのものと勘違いした更科は、後ろから更にギュッと抱きついてきた。
「や、待っ…!」
その腕を払いのけようと、わたしは懸命に抵抗する。
「どーしたの、副会長。
好きなんだろ?俺の事」
「違うんですっ
わたしは…っ」
「違うって、何が違うのさ。
それとも、まさか俺じゃなくって他の誰かと間違えたとか言わないよな?」
ギクリ。
ここで否定したら、今のわたしの告白が桐生珪へのものとバレちゃうじゃないっ
ううん、それだけじゃない。
今までここで色々あった事が、恋愛行為があった事がコイツに知られてしまう!
「副会長、俺以外にも告白してきた奴がいるわけ?
こんな所で一緒にいられる奴って言ったら、後は書記の相良か生徒会長…」
「違うのっ
告白してきたのは、更科先輩だけですっ」
………もちろん、大ウソだ。
「どうしたんだ?榊。
何か元気ないな」
「………………」
わたし、副会長を本当に辞めなきゃならなくなったんだ。
なんて、どうやって言おう。
だってこれはわたしの意思じゃないんだもの。
ママの言いつけは絶対なんだから仕方ないじゃない。
「お、これ例の提案書?
ちょっと見せてよ」
机に置いたクリアファイルからレポート用紙を取り出した桐生珪は、1枚1枚めくりながら読み始めた。
ねぇわかってる?
これでわたし、生徒会やめちゃうんだよ。
せっかくわたしのマニフェストを通してくれたのに、結局アンタの理想は叶わないまま終わっちゃうんだよ。
「…うん!なかなかいいじゃないか!
じゃあすぐに先生に提出して、審議してもらうよ」
先生に提出して。
これでわたしの仕事も、終わりだ。
選挙で受かって副会長になり、結局半月くらいしかいられなかった生徒会室。
だけどその短い間に、桐生珪とは深い関係になれた気がする。
わたしに心地いい場所を教えてくれた。
わたしに安心する時間を与えてくれた。
本当はもっとそうしていたい。
だけど、それが出来ないなら…
_『やっぱりオレ、榊の事すげー好きだ』
素直に、嬉しかった。
その想いに応えたい。
だってわたし、まだ桐生珪に自分の本当の気持ち言ってないもん。
わたしがまだ副会長で、生徒会室にいられる権利があるうちに。
今のうちに、わたしは桐生珪に本音を言わなきゃ…!
「あ あの…あのね…」
わたしの言葉に、いま背後にいるだろう桐生珪はわたしに姿勢を向けたようだ。
「アンタの事、最初はすごい嫌な奴だって思ってた。
アンタみたいな奴、わたしが見下してやるって…それしか考えてなかった」
「……………」
「だけどここでアンタと一緒の時間を過ごして、何か…わたし変わったわ。
すごく、自分らしくなれていった気がする」
仮面少女を演じる毎日。
それがわたしの生き方だったけど、でもそんなわたしの殻を破ってくれた。
それが桐生珪、アンタなのよ。
「わたしの事、好きって言ってくれたわよね。
なのにわたしは…素直になれなかった。ごめん…。
でも、今だから言うね。
わたし…アンタの事…」
胸が、熱い。
ずっと意地ばっか張って言えなかった本当の気持ち。
今なら言える。
わたしは、桐生珪が…
言いかけた時、イスに座るわたしの後ろから覆い被さるように腕が伸びてきた。
「……………………!?」
ゾクっとした。
何か、違う。
「何だ、副会長俺の事好きだったんだ」
「ぇ…っ!!?」
桐生珪と違う声に、わたしは驚いて後ろを振り返った。
「…更科…先輩っ」
さっきまで桐生珪がわたしの書いた提案書を持って読んでいた筈なのにっ
その桐生珪はこの生徒会室にはおらず、いつの間にか代わりに更科がそこにいた。
どうしてそんな…っ
レポート用紙もなくなっているという事は、桐生珪は職員室まで持って行ってしまったんだ。
その間に生徒会室に来た更科を、わたしは桐生珪と間違って告白しかけていたんだ!
ど、どうしようっ
わたしの告白を自分に対してのものと勘違いした更科は、後ろから更にギュッと抱きついてきた。
「や、待っ…!」
その腕を払いのけようと、わたしは懸命に抵抗する。
「どーしたの、副会長。
好きなんだろ?俺の事」
「違うんですっ
わたしは…っ」
「違うって、何が違うのさ。
それとも、まさか俺じゃなくって他の誰かと間違えたとか言わないよな?」
ギクリ。
ここで否定したら、今のわたしの告白が桐生珪へのものとバレちゃうじゃないっ
ううん、それだけじゃない。
今までここで色々あった事が、恋愛行為があった事がコイツに知られてしまう!
「副会長、俺以外にも告白してきた奴がいるわけ?
こんな所で一緒にいられる奴って言ったら、後は書記の相良か生徒会長…」
「違うのっ
告白してきたのは、更科先輩だけですっ」
………もちろん、大ウソだ。
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