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「…なんだ更科先輩、やけに榊に馴れ馴れしくなかったか?」
帰り際の更科の行為が目についた桐生珪が、そうわたしに言ってきた。
更科がわたしに馴れ馴れしくしてきた理由…さすがにそれは桐生珪には言えなかった。
わたしがここから居なくなれば解決する問題なんだし、話をややこしくする必要はないもんね…。
「あのね桐生君。
さっきみんなに言おうと思ったんだけど、なかなか言えなくって…」
言ってる途中から、桐生珪は座るわたしの肩を抱く。
ふわっとあったかい感触。
さっき更科にも同じ事をされたわけだけど、やっぱり全然違う…。
「桐生君…」
この感触を味わえるのも、もう最後なんだ。
「あの ね、わたし…
もうここに居られなくなったんだ…」
そんなわたしの言葉に、桐生珪は腕を緩めて顔を覗き込んだ。
「…なんで?」
「副会長なんて辞めなさいって、ママから言われたのよ。
だから…」
だからわたしとアンタのこの関係も、これで終わりなんだよ。
…まだ本当の気持ち、伝えてないのにね。
言おうと思ってた。
桐生珪にわたしの本当の気持ち。
だけど…わたしがこの生徒会室に入れなくなったら、意味ないんだもんね。
だから…やっぱり言わないままにしとくね。
「榊、それ本当の話かよ」
「本当よ、ママの言う事は絶対なんだから。
だからまたわたしは、いつもの生活に戻るだけ」
…そう、それだけなんだから…。
「榊は…それで納得してるのか?」
「え?
わたしは…」
決して喜んで辞めるわけじゃないんだけど…
でもこれはわたしに課せられた人生なんだからっ
「別に生徒会の仕事がしたくて立候補したわけじゃないのよ。
辞める事に未練なんかないわよ」
ただせっかく居心地よかったこの生徒会室に入れなくなる事が…
桐生君に自分をさらけ出して話す事ができなくなるのがちょっぴり寂しいだけなのよっ。
「…だから…ここで会えるのも…これで最後だからね…」
ほんの短い間だったけど、わたしは楽しかったと思う。
嫌な奴だと思ったアンタが実は意外な苦労があるって事 、知れてよかったわよ。
「だから…先生に辞めさせてもらうように、わたし言ってくるねっ」
座っていたイスを引いて立ち上がった。
理由とか訊かれると思う。
就任して1ヵ月も経ってないんだもん、多少は怒られるよね。
ま、家庭の事情だし、しょーがないよね…。
話は早い方がいいと思い、すぐに職員室に行こうとドアの方へ向かうと、ギュッと腕を掴まれた。
「待てよ、その前に…」
グイッと引っ張られ、全身を包むように抱きしめられた。
「桐生…君…」
「…………………」
アンタもわかってるんだよね。
わたしが生徒会から離れるって意味。
抱きしめられた腕がゆっくりと緩む。
桐生珪の手のひらがわたしの頬に添えられる。
それから、わたしは少しだけ上を向いて桐生珪の顔を見る。
「……………榊…」
「ん……」
そっと合わさった唇と唇。
切なかった胸が、ドキドキと熱く高鳴る。
もう片方の手はわたしの背中をしっかりと支え、身体を密着させた。
もう、これで最後。
やっぱり、言いたい。わたしの本当の気持ち。
これで最後なんだから言っても意味はないんだけど…でも、胸の奥がざわついて仕方ない。
言いたい、伝えたい、聞いてもらいたい。
わたしもね、アンタの事が本当は……!
「…榊、また泣いてる」
「…あ……」
言うより先に、感情が涙となって現れてしまった。
やっぱり、わたしだって辞めたくないんだもん。桐生珪との時間を、失いたくないんだもん!
「じゃあ…もう帰らなきゃ。
遅くなるとママに、まだ生徒会辞めてなかったの!って言われるから」
わたしは未だ密着させる身体を離すと、桐生珪の腕から外れた。
「じゃ…ね…」
クルリと振り返り生徒会室を出ようとすると、今度は背中から抱き留められる。
「だから…何で言わないんだよっ榊の本音。
言わないから、苦しいんじゃねぇの?
言わないから、そんなに泣いてんじゃねぇの?」
わたしの本音…!
言わないんじゃない。
言いたいんだよっ
ただ、言えないだけ…っ
「言えよ。何で肝心な事は言わないんだ?
オレは言ってるだろ。榊の事…好きだって!」
好き…!
桐生珪のその言葉に、胸が鷲掴みにされる。
わたしだって!
わたしだって…!
背中から抱きしめた桐生珪は一旦腕を離すと、わたしを振り向かせた。
そしてそのまま、またわたしの背中に手をまわして抱きしめると今度は無理やり唇を重ねた。
「……んんっ…っ」
重ねたと言うよりも、乱暴という表現が合うかもしれない桐生珪のキス。
上から強引に押さえつけられ、呼吸すら苦しくなる。
だんだんと頭の中もいっぱいになり、もう何も考えられなくなってくる…っ
帰り際の更科の行為が目についた桐生珪が、そうわたしに言ってきた。
更科がわたしに馴れ馴れしくしてきた理由…さすがにそれは桐生珪には言えなかった。
わたしがここから居なくなれば解決する問題なんだし、話をややこしくする必要はないもんね…。
「あのね桐生君。
さっきみんなに言おうと思ったんだけど、なかなか言えなくって…」
言ってる途中から、桐生珪は座るわたしの肩を抱く。
ふわっとあったかい感触。
さっき更科にも同じ事をされたわけだけど、やっぱり全然違う…。
「桐生君…」
この感触を味わえるのも、もう最後なんだ。
「あの ね、わたし…
もうここに居られなくなったんだ…」
そんなわたしの言葉に、桐生珪は腕を緩めて顔を覗き込んだ。
「…なんで?」
「副会長なんて辞めなさいって、ママから言われたのよ。
だから…」
だからわたしとアンタのこの関係も、これで終わりなんだよ。
…まだ本当の気持ち、伝えてないのにね。
言おうと思ってた。
桐生珪にわたしの本当の気持ち。
だけど…わたしがこの生徒会室に入れなくなったら、意味ないんだもんね。
だから…やっぱり言わないままにしとくね。
「榊、それ本当の話かよ」
「本当よ、ママの言う事は絶対なんだから。
だからまたわたしは、いつもの生活に戻るだけ」
…そう、それだけなんだから…。
「榊は…それで納得してるのか?」
「え?
わたしは…」
決して喜んで辞めるわけじゃないんだけど…
でもこれはわたしに課せられた人生なんだからっ
「別に生徒会の仕事がしたくて立候補したわけじゃないのよ。
辞める事に未練なんかないわよ」
ただせっかく居心地よかったこの生徒会室に入れなくなる事が…
桐生君に自分をさらけ出して話す事ができなくなるのがちょっぴり寂しいだけなのよっ。
「…だから…ここで会えるのも…これで最後だからね…」
ほんの短い間だったけど、わたしは楽しかったと思う。
嫌な奴だと思ったアンタが実は意外な苦労があるって事 、知れてよかったわよ。
「だから…先生に辞めさせてもらうように、わたし言ってくるねっ」
座っていたイスを引いて立ち上がった。
理由とか訊かれると思う。
就任して1ヵ月も経ってないんだもん、多少は怒られるよね。
ま、家庭の事情だし、しょーがないよね…。
話は早い方がいいと思い、すぐに職員室に行こうとドアの方へ向かうと、ギュッと腕を掴まれた。
「待てよ、その前に…」
グイッと引っ張られ、全身を包むように抱きしめられた。
「桐生…君…」
「…………………」
アンタもわかってるんだよね。
わたしが生徒会から離れるって意味。
抱きしめられた腕がゆっくりと緩む。
桐生珪の手のひらがわたしの頬に添えられる。
それから、わたしは少しだけ上を向いて桐生珪の顔を見る。
「……………榊…」
「ん……」
そっと合わさった唇と唇。
切なかった胸が、ドキドキと熱く高鳴る。
もう片方の手はわたしの背中をしっかりと支え、身体を密着させた。
もう、これで最後。
やっぱり、言いたい。わたしの本当の気持ち。
これで最後なんだから言っても意味はないんだけど…でも、胸の奥がざわついて仕方ない。
言いたい、伝えたい、聞いてもらいたい。
わたしもね、アンタの事が本当は……!
「…榊、また泣いてる」
「…あ……」
言うより先に、感情が涙となって現れてしまった。
やっぱり、わたしだって辞めたくないんだもん。桐生珪との時間を、失いたくないんだもん!
「じゃあ…もう帰らなきゃ。
遅くなるとママに、まだ生徒会辞めてなかったの!って言われるから」
わたしは未だ密着させる身体を離すと、桐生珪の腕から外れた。
「じゃ…ね…」
クルリと振り返り生徒会室を出ようとすると、今度は背中から抱き留められる。
「だから…何で言わないんだよっ榊の本音。
言わないから、苦しいんじゃねぇの?
言わないから、そんなに泣いてんじゃねぇの?」
わたしの本音…!
言わないんじゃない。
言いたいんだよっ
ただ、言えないだけ…っ
「言えよ。何で肝心な事は言わないんだ?
オレは言ってるだろ。榊の事…好きだって!」
好き…!
桐生珪のその言葉に、胸が鷲掴みにされる。
わたしだって!
わたしだって…!
背中から抱きしめた桐生珪は一旦腕を離すと、わたしを振り向かせた。
そしてそのまま、またわたしの背中に手をまわして抱きしめると今度は無理やり唇を重ねた。
「……んんっ…っ」
重ねたと言うよりも、乱暴という表現が合うかもしれない桐生珪のキス。
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だんだんと頭の中もいっぱいになり、もう何も考えられなくなってくる…っ
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