秘密の生徒会室 君とふたりきり

むらさ樹

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「…ん…ぁ…桐生く…っ」

長い長い乱暴なキスから解放されると、わたしは乱れた呼吸を整える為に肩で息をした。

胸もドキドキバクバク高鳴って、身体全体が熱くて苦しい。

「…嫌なら嫌って、何で抵抗しないんだよ!」

「…桐生…君…?」

息を乱すわたしに、桐生珪は真剣な顔付きで言った。
でも桐生珪の乱暴なキスにビックリはしたけど、嫌悪感は感じなかったよ。

「別に、嫌だったわけじゃ…」

ただ、こんな事したって…っ

「じゃあ言えばいいだろ?
オレは榊が好きなんだって!
榊はオレの事どう思ってんだよっ!」

「それは…」

言ってどうなるの?

この学校は恋愛禁止。この秘密の生徒会室にすら居られなくなったわたしに、今更そんな事を言ってどうなるって言うのよ!

そんなの、ただ苦しくなるだけじゃない!
だったらいっそ…

「榊っ!」

肩を掴まれ、強引に身体を揺さぶられる。
わたしと桐生珪の視線が繋がり、離せない。

「…わたし……」

はらはらと頬を伝って涙がこぼれ落ちる。
それに伴って目の前の桐生珪の姿が歪んで見えた。

「わたしも……桐生君が……………好き……」

ようやく口から出たわたしの本音。
言った直後にギュッと抱き寄せられた身体。

「やっと、聞けた。…榊の気持ち」

そう言った桐生珪は、今度は優しい優しいキスをしてくれた。

想いを口にして初めて気付く。
わたしと桐生珪は心が繋がったんだって。

でも、いつの間に桐生珪を好きになってたのかは自分でもわからない。
気が付いたらいつも頭の中にいて、いつも声が聞こえていた。

なのにそれが何て感情なのかわからなくて、ずっとイライラしてたんだ。

「榊…」

「…何?」

「執行部、本当に辞めるのか?」

「うん…しょうがないわよ。
ママは生徒会長じゃないと意味ないって思ってるんだもん」

わたしにいきいきした高校生活を送ってほしいわけじゃなく、単に名誉の為だけだもんね。

2票差だろうと100票差だろうと関係ない。
トップでいる事に意味があるの。

「だからここに居られるのも、これで最後。
アンタとこうしていられるのも、これで…」

いくらやっと想いを口にしても、行き着く先の現実はこうなんだ。

「も…帰ろ。
日が暮れるの早いんだから、暗くなっちゃうよ」

ここから出てしまえば、わたしたちは校則に従って一切の恋愛を許されなくなる。
どんなに気持ちは通じあっていても、規則には逆らえないんだ。

「…榊」

「ん?」

「オレ思ったんだけどさ。
この先、もし榊がここに来れなくなるんだったら…」

ドキッとした。
来れなくなるんだったら、わたしたちの関係もこれで終わりにしようって事?

そりゃそうよね。
そうするしかないんだもん。

だったら、こんな想い口にしなきゃ良かった…!

「待って!桐生君。…ごめん、わかってるから。
でも、今は聞きたくないの。
さ、帰ろ」

どうせそうなる運命なら、せめてまだ副会長でいる今のうちに浸っていたい。…彼氏彼女の関係でいる事を。






ふたり一緒に生徒会室を出てカギを閉めた。

「わたし、先生に副会長辞めさせてもらうように言ってくるから。
先に行って」

「あぁ。
オレ荷物持って昇降口で待ってるよ」

「え、でも…」

男子と女子が一緒に帰るとか、うちの学校じゃあ…

「同じ通学路だろ。
た ま た ま 一緒になってるだけ、だから」

「……あはっ、たまたまね。
わかった、偶然一緒って事ね」

手を振ると、わたしは職員室へ。
桐生君は教室に荷物を取りに階段を下りた。




生徒会室から廊下をまっすぐ行くと、左手側に職員室がある。
放課後からだいぶ時間も経って、廊下には生徒は誰もいない。

わたしは職員室のドアの前まで行くと、ソワソワする胸を押さえ自身を落ち着けようとした。
深呼吸1つして、ドアに手をかける。

先生に言えば、副会長も今日でおしまいに…


「…副会長」

誰もいないと思っていた廊下で、誰かがわたしを呼んだ。
わたしはドアにかけた手を離し、声がした方へと振り向いた。
そこには…

「更科…先輩…?」

一旦メンバー全員で生徒会室に集まった後、他の2人と一緒に下校したものだと思っていた更科がまだ学校に残っていたみたいだ。しかも、何だか気味の悪い笑みを浮かべてわたしを見ている。

「…まさか相手が生徒会長だったとはねぇ」

全身にゾクゾクっと悪寒が走った。

まさか
まさか…!

「あの、…なんの話…?」

「とぼけたって無駄だよ。
ドア越しにみんな聞いてたからね」

「………………っ」

「生徒会長と副会長が生徒会室で仲良くイチャッてたなんてバレたら…どうなるんだろうね?」


とうとう誰にも知られていないと思っていたわたしと桐生君の関係が…よりによって更科に知られてしまったんだ…!
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