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「じゃあおれは、ビールかな」
「へ?」
これまでの煌なら、ドンペリのタワーとか冗談言ってたのに。
あまりにも普通すぎて、ちょっと拍子抜けしてしまったぐらいだった。
「…そんなんでいいの?」
「え、ダメだったかなぁ」
「ダメじゃないけど…どうせなら高いお酒がいいんじゃないかなって…」
「まぁ売り上げは上がるよね。
でもおれ、愛さんとは飲みたいもので飲んだ方が楽しいから」
楽しい…かぁ。
今まで見てきたクロウとかだと、高いお酒は自分の位置を確立する為のものって感じだった。
ホストたちからすれば、もちろん自分の売り上げになるんだから嬉しいだろうし、注文するお客からすれば、そんなホストたちが喜ぶ事に楽しさを感じる。
それが、ホストクラブの楽しみ方だとあたしは思っている。
でも煌は、何だか違った。
「せっかく来てくれたんだもんね。
おれ、愛さんには楽しんで帰ってもらいたいからさ。
一緒に、楽しんで飲もう?」
…煌はあたしの為に、こんなにも一生懸命だ。
仕事熱心なのは感心だけど、あたしはその言葉だけで十分嬉しいよ。
「うん。
じゃあ、いつも通りビールにしちゃおっか!」
「じゃあガッツリ飲むから、タワーで!」
「え~?
泡だらけで大変な事になっちゃうよっ」
あたしたちは顔を合わると、フッと吹いた。
煌といると、やっぱり楽しいかも!
イケメンホストにチヤホヤされる飲み方もホストクラブの楽しい所かもしれないけど、あたしは煌と冗談を言いながら飲むビールの方が楽しいや。
紫苑はいないけど、煌ならその寂しさを紛らすに打ってつけかもしれないな。
テーブルに注文したビールが届くと、早速ジョッキを持って乾杯した。
「2人の楽しい一時に」
「うん、乾杯!」
カチンとジョッキを合わせると、あたしと煌はグイグイっとビールを喉に通した。
「……ぷはぁ!
やっぱビールは喉ごしだな」
「そうそう、特に最初の一杯は美味しいのよね」
「あれ?
愛さんとだったら、何杯でも美味いんだけどな」
「はいはい、上手い事言っちゃって。
でも、いいわよ?今日は煌をベロベロにするくらい飲ませちゃうから」
「そりゃ楽しみだ!」
ビール程度じゃあ、売り上げの貢献にはスズメの涙だろうけどね。
でも、煌が笑ってくれるならそれでいいかなって。
「……」
…紫苑とホテルに向かったあの日から、煌はまた紫苑に怒られちゃったりしたのかな。
あの時の煌の顔、何だかツラそうだった…。
思い出してほしくないから言わなかったけど、でもちゃんと穴埋めはするからね。
ありがと。
感謝してるわよ、煌。
__そうして煌と話しながら飲んでいると、いつの間にか閉店30分前のラストオーダーとなった。
「わ。
もうこんな時間かぁ」
ベロベロに酔わせるなんて言いながら、結局話に夢中になってる方が多かったので時間は長く居たんだけど、飲んだビールの量はそれほど大した事はなかった。
「さぁって、そろそろ帰らないと。
スゴい楽しかったわ。
また来るわね、煌」
ソファに沈めていた腰を浮かしながら、あたしは会計しようとバッグから財布を探した。
すると煌は、そんなあたしの腕を掴んで財布に伸ばした手を止めてきた。
「…よかったら、この後も延長しない?」
延長。
それってつまりここを出て、引き続き出張して一緒に過ごさないかって事だ。
「へ?」
これまでの煌なら、ドンペリのタワーとか冗談言ってたのに。
あまりにも普通すぎて、ちょっと拍子抜けしてしまったぐらいだった。
「…そんなんでいいの?」
「え、ダメだったかなぁ」
「ダメじゃないけど…どうせなら高いお酒がいいんじゃないかなって…」
「まぁ売り上げは上がるよね。
でもおれ、愛さんとは飲みたいもので飲んだ方が楽しいから」
楽しい…かぁ。
今まで見てきたクロウとかだと、高いお酒は自分の位置を確立する為のものって感じだった。
ホストたちからすれば、もちろん自分の売り上げになるんだから嬉しいだろうし、注文するお客からすれば、そんなホストたちが喜ぶ事に楽しさを感じる。
それが、ホストクラブの楽しみ方だとあたしは思っている。
でも煌は、何だか違った。
「せっかく来てくれたんだもんね。
おれ、愛さんには楽しんで帰ってもらいたいからさ。
一緒に、楽しんで飲もう?」
…煌はあたしの為に、こんなにも一生懸命だ。
仕事熱心なのは感心だけど、あたしはその言葉だけで十分嬉しいよ。
「うん。
じゃあ、いつも通りビールにしちゃおっか!」
「じゃあガッツリ飲むから、タワーで!」
「え~?
泡だらけで大変な事になっちゃうよっ」
あたしたちは顔を合わると、フッと吹いた。
煌といると、やっぱり楽しいかも!
イケメンホストにチヤホヤされる飲み方もホストクラブの楽しい所かもしれないけど、あたしは煌と冗談を言いながら飲むビールの方が楽しいや。
紫苑はいないけど、煌ならその寂しさを紛らすに打ってつけかもしれないな。
テーブルに注文したビールが届くと、早速ジョッキを持って乾杯した。
「2人の楽しい一時に」
「うん、乾杯!」
カチンとジョッキを合わせると、あたしと煌はグイグイっとビールを喉に通した。
「……ぷはぁ!
やっぱビールは喉ごしだな」
「そうそう、特に最初の一杯は美味しいのよね」
「あれ?
愛さんとだったら、何杯でも美味いんだけどな」
「はいはい、上手い事言っちゃって。
でも、いいわよ?今日は煌をベロベロにするくらい飲ませちゃうから」
「そりゃ楽しみだ!」
ビール程度じゃあ、売り上げの貢献にはスズメの涙だろうけどね。
でも、煌が笑ってくれるならそれでいいかなって。
「……」
…紫苑とホテルに向かったあの日から、煌はまた紫苑に怒られちゃったりしたのかな。
あの時の煌の顔、何だかツラそうだった…。
思い出してほしくないから言わなかったけど、でもちゃんと穴埋めはするからね。
ありがと。
感謝してるわよ、煌。
__そうして煌と話しながら飲んでいると、いつの間にか閉店30分前のラストオーダーとなった。
「わ。
もうこんな時間かぁ」
ベロベロに酔わせるなんて言いながら、結局話に夢中になってる方が多かったので時間は長く居たんだけど、飲んだビールの量はそれほど大した事はなかった。
「さぁって、そろそろ帰らないと。
スゴい楽しかったわ。
また来るわね、煌」
ソファに沈めていた腰を浮かしながら、あたしは会計しようとバッグから財布を探した。
すると煌は、そんなあたしの腕を掴んで財布に伸ばした手を止めてきた。
「…よかったら、この後も延長しない?」
延長。
それってつまりここを出て、引き続き出張して一緒に過ごさないかって事だ。
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