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「あ、あの…煌…?」
「愛さんが店に来てくれるのは、全部紫苑さんに会いたい為ってのは知ってる。
おれは、紫苑さんを指名出来ない代わりに指名してもらっただけの存在って事もわかってる」
全てが紫苑の二の次。
煌はそれをわかっててあたしに良くしてくれてた事に、ズキンと胸が痛んだ。
最初は、あたしはお客なんだから悪い事してる気分なんてなかったんだけど。
でもずっと煌と付き合ってきて、そうじゃなくなってきている事は気付いてた。
「愛さんの視線が紫苑さんにしか向けられてないのはわかってる。
それでも、愛さんの為に協力しようと思った。
ツラかったけど、それで愛さんが喜んでくれるならって…」
“ツラかったけど”
やっぱりいくら新人でも、自分を二の次にしか思われてないなんてツラいわよね。
今本人の口からハッキリそう言われて…やっとあたしの胸は、ズキンと強く痛んだ。
「でも…あの日の夜に紫苑さんに言われて、ハッとしたんだ。
相手の気を自分の力で、自分に向けたいって思わないのか?って…」
聞いた事がある言葉だ。
あの日の夜…それは、煌があたしに紫苑との時間を与えられるように、デタラメなウソを言ってくれた時だ。
「おれみたいな奴に愛さんは構ってくれて、本当に嬉しかった。
なのにおれを紫苑と呼んだ時は…スゴく、ツラかったんだ。
おれなんて、全部紫苑さんの身代わりでしかないって痛感させられたから…」
「…………………っ」
いくらそれがホストのお仕事とは言え、あたしが煌にしてる事は煌を傷付けてるだけだった。
何でも聞いてくれるのを良い事に、煌を利用しちゃって…。
「本当は紫苑さんへの想いを応援する事が、おれの気持ちだったけど。
でももう、やめたよ。
おれはおれの力で、愛さんの気持ちを向けさせる__…」
そう言った煌の唇が、いつの間にかフワリとあたしの唇を覆っていた。
「んっ……ふ…」
肩を抱かれ、覆われた唇から舌が侵入してきた。
最初の頃はキスの仕方もロクに知らないで、あたしが教えてあげたのだ。
だけど煌との時間を何度も過ごすうち、煌もだんだんとオトナのキスを学んでいった。
「ん…っ、んっ
…き らぁ」
煌はあたしに、これまでの経験で学んだ熱く激しいキスをした。
初めの頃とは違う、思考までとろけさせるような、そんなオトナのキスを。
「…ぁ はぁ… はぁ…」
たくさんの情熱的なキスに、あたしと煌は呼吸が乱れた。
唇を離し、肩を抱かれたまま頬だけ寄せて息を整える。
「…どう だった?」
あたしの耳元で、煌が囁く。
「ん…、スゴい上手になったじゃない?」
「よかった…」
今のキスで、煌の気持ちは痛い程わかった。
本当に心のこもったキスは、確かに気持ちいい。
だけどね…
呼吸が落ち着いた頃、煌はあたしを胸に抱き寄せて言った。
「…抱いていい?」
「………………っ」
今煌が言ったのは、出張ホストとしての言葉じゃない。
想いを寄せたひとりの男としての言葉だろう。
だから…あたしはそれに応えられないのだ。
…だけど。
「…お代、戴いちゃったもんね。
いいわよ」
あたしはさっき煌に握らされた5万円を、わざと見せながら言った。
そうする事で、遠まわしに煌を否定している事が伝わると思ったから。
…そう。
お金をもらったら、これはお仕事。
自分の気持ちは押し殺して、相手の為だけに奉仕するの。
「ありがとう…」
煌はそんなあたしの思いが通じたのかどうかわからないが、そう言ってあたしの首筋に唇を這わせ始めた。
…もう、煌を出張に呼ぶのはこれで終わりにしよう。
これ以上は煌を苦しめるだけだものね。
今まで、ありがとうね。
煌…。
「愛さんが店に来てくれるのは、全部紫苑さんに会いたい為ってのは知ってる。
おれは、紫苑さんを指名出来ない代わりに指名してもらっただけの存在って事もわかってる」
全てが紫苑の二の次。
煌はそれをわかっててあたしに良くしてくれてた事に、ズキンと胸が痛んだ。
最初は、あたしはお客なんだから悪い事してる気分なんてなかったんだけど。
でもずっと煌と付き合ってきて、そうじゃなくなってきている事は気付いてた。
「愛さんの視線が紫苑さんにしか向けられてないのはわかってる。
それでも、愛さんの為に協力しようと思った。
ツラかったけど、それで愛さんが喜んでくれるならって…」
“ツラかったけど”
やっぱりいくら新人でも、自分を二の次にしか思われてないなんてツラいわよね。
今本人の口からハッキリそう言われて…やっとあたしの胸は、ズキンと強く痛んだ。
「でも…あの日の夜に紫苑さんに言われて、ハッとしたんだ。
相手の気を自分の力で、自分に向けたいって思わないのか?って…」
聞いた事がある言葉だ。
あの日の夜…それは、煌があたしに紫苑との時間を与えられるように、デタラメなウソを言ってくれた時だ。
「おれみたいな奴に愛さんは構ってくれて、本当に嬉しかった。
なのにおれを紫苑と呼んだ時は…スゴく、ツラかったんだ。
おれなんて、全部紫苑さんの身代わりでしかないって痛感させられたから…」
「…………………っ」
いくらそれがホストのお仕事とは言え、あたしが煌にしてる事は煌を傷付けてるだけだった。
何でも聞いてくれるのを良い事に、煌を利用しちゃって…。
「本当は紫苑さんへの想いを応援する事が、おれの気持ちだったけど。
でももう、やめたよ。
おれはおれの力で、愛さんの気持ちを向けさせる__…」
そう言った煌の唇が、いつの間にかフワリとあたしの唇を覆っていた。
「んっ……ふ…」
肩を抱かれ、覆われた唇から舌が侵入してきた。
最初の頃はキスの仕方もロクに知らないで、あたしが教えてあげたのだ。
だけど煌との時間を何度も過ごすうち、煌もだんだんとオトナのキスを学んでいった。
「ん…っ、んっ
…き らぁ」
煌はあたしに、これまでの経験で学んだ熱く激しいキスをした。
初めの頃とは違う、思考までとろけさせるような、そんなオトナのキスを。
「…ぁ はぁ… はぁ…」
たくさんの情熱的なキスに、あたしと煌は呼吸が乱れた。
唇を離し、肩を抱かれたまま頬だけ寄せて息を整える。
「…どう だった?」
あたしの耳元で、煌が囁く。
「ん…、スゴい上手になったじゃない?」
「よかった…」
今のキスで、煌の気持ちは痛い程わかった。
本当に心のこもったキスは、確かに気持ちいい。
だけどね…
呼吸が落ち着いた頃、煌はあたしを胸に抱き寄せて言った。
「…抱いていい?」
「………………っ」
今煌が言ったのは、出張ホストとしての言葉じゃない。
想いを寄せたひとりの男としての言葉だろう。
だから…あたしはそれに応えられないのだ。
…だけど。
「…お代、戴いちゃったもんね。
いいわよ」
あたしはさっき煌に握らされた5万円を、わざと見せながら言った。
そうする事で、遠まわしに煌を否定している事が伝わると思ったから。
…そう。
お金をもらったら、これはお仕事。
自分の気持ちは押し殺して、相手の為だけに奉仕するの。
「ありがとう…」
煌はそんなあたしの思いが通じたのかどうかわからないが、そう言ってあたしの首筋に唇を這わせ始めた。
…もう、煌を出張に呼ぶのはこれで終わりにしよう。
これ以上は煌を苦しめるだけだものね。
今まで、ありがとうね。
煌…。
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