紫に抱かれたくて

むらさ樹

文字の大きさ
63 / 68

お金じゃ買えない ~ただ、紫に抱かれたくて①

しおりを挟む
「あ」

ちょうどその時。
来るとわかっていたけど、とうとう凛も“club-shion”にやって来た。

キョロキョロと店内を見渡し、紫苑の姿を見つけるとニパッと明るい笑みを見せる。
だけれども、すぐ側のあたしの姿も見つけると急に頬を膨らませてズカズカと寄ってきた。

…来たな?
そんな顔したって、紫苑は凛だけのものじゃないんだからね。

あたしはチラリと、店内にいるクロウを探した。
すると既に凛の姿を見つけたクロウは立ち上がり、早速凛のもとに駆けつけていた。

「凛ちゃん!
オレ待ってたんだぜ?」

「あんっ、クロ。
またね、アタシ紫苑に…」

「いいからいいから。
ほら、早くオレの所おいでったら。
今日はオレ、朝までたっぷり尽くしちゃうよ!」

「えっ、ちょっと…!」

無理やり連れて行かれるように、腰や腕を引かれて別のテーブルに着かされた凛。
…クロウには、あたしがしっかり前払いしといたもんね。たっぷり尽くされちゃって下さいよっと。
あたしはペロッと、小さく舌を出していた。




3周年を迎えた“club-shion”に、まだまだ何回もシャンパンコールは飛び交う。
例のタワーに至っては、床にジャバジャバこぼしちゃうくらいボトルを注いでのお祭り騒ぎ。


そしてあたしの座るソファに同席していた紫苑も、やがてすぐに指名を受けては席を立った。


「ごちそうさま。
まだゆっくりしてってね」

「ん…」

夜の9時を過ぎた頃には更にお客の入りも増え、ソファからあぶれたお客も立ちながらテーブルのものを摘み接待を受けている。


「紫苑!」

大きな石のついた指輪を見せつけるように手を振るお客が、お店に入ってきた。


その後も紫苑への指名やシャンパンコールによるパフォーマンスは続き、長い長い“club-shion”のお祭りは続いていった。



「ごめん。
ちょっとお手洗い行ってくるね」

ここに入って、何時間になったかな。
あたしは煌に断りを入れると、店内奥にあるトイレに入った。


店内だけじゃない、トイレにまでオシャレな造りが施されてる“club-shion”
天井の小さなシャンデリアや、鏡の横に飾ってあるお花だってキレイにしてある。


個室で用を足すと、あたしは鏡に映った自分を見ながら手を洗った。

店内のお祭り騒ぎは、トイレにまで大きく聞こえてくる。

きっと、閉店するまで続くんだろうな。



…そんな中。

「今日はおめでとう。
お祝いついでに、あたしたちの婚姻届持って来たわ」

どこかで誰かの声が聞こえてきた。

トイレから出てキョロキョロと見渡すと、細い通路の先に紫色の裾がチラリと見えた。


___あれは、きっと紫苑だ!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

処理中です...