ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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「ちょっと、待っててもらってもいいですか?」



私はまわりに他のお客さんがいない事を確認するとレジから離れ、業務用冷蔵庫の方へ駆けった。


それからレジ袋に入れて置いておいた例のリンゴサラダを取り出すと、またすぐに彼の待つレジの方へと戻った。



「どーしたの?」



そんな慌てる事は何もないんだけど、つい気持ちが高ぶったのか若干息を乱しながらリンゴサラダを差し出した。



「これ…デザートにはならないと思うんだけど、このサラダにリンゴを入れてみたものなのっ」


「リンゴ?」



勝手にお客さんにそんな事をしちゃ、怒られるかな。


このリンゴの甘さがサラダと合うから、私は好きなんだけど。

やっぱり美味しいって思われるものは作りたいし提供したい。


ましてや「欲しい」なんて言われると、尚更それに応えたいから…!




「良かったら、試作品なんだけど…」


「んじゃあ、それも買うよ。
いくら?」



え…!

買ってくれるの!?



「あのっ、サラダにリンゴとか入ってて大丈夫ですか?
やっぱりリンゴはリンゴだけで食べたいとか…」


「いや?
美味そうじゃん、リンゴサラダなんて」


「う 美味いですともーっ!
ええ、美味しいですよ!
何たって、この私のお墨付きですからねっ
…なんて…」



つい嬉しくて、早口でまくし立ててしまった。

私は子どもかぁぁ!!



や、でもだって!久保店長に却下を食らったリンゴサラダが、美味そうって言ってもらえたんだもん!!

ヤッタ!って気分になるよねっ



「あははっ、お前ちょー面白れぇ」


「は…」



ケラケラ笑い出した彼に、今更だが何だかちょっぴり恥ずかしくなった。


まさか面白いなんて言われるとは思わなかったからなぁ…。




「ね、名前何てーの?
教えてよ」


「え?
妹尾…ですけど」



一応スタッフは皆、防水エプロンの上方にネームプレートを付けている。

だからわざわざ訊かなくてもわかるだろうにと思ったんだけど…



「そうじゃなくて、下の名前。
せのお、何てーの?」


「ひな子…です」


促されるまま、私は正直に答えた。



そう、私はいつまでもオトナになりきれないヒナっ子ですよーだ。




「ひなこって言うんだ!
へえぇ~?背もちんまいし、ホント名前とピッタリじゃんよ」


「………………」



そらきた!


そういう意味では、私は自分の名前も気に入っていない。

名前の如く、どうせ私は永年ヒナなんだからっ





「…あ………ごめん。怒った?
ウソだよ、ウソ」


「…いえ、本当の事ですから」



今更マジメな顔して謝ったって、遅いわよ。

て言うかむしろ、やっぱりね と、ため息が出そうになる。


いいの いいの。
これが現実なんだから!



「違うって!名前の通り、かわいいって意味で言ったの。ね?」


「は…っ!?//」


「うん、かわいいかわいいっ!
いいと思うよ、ひなこって」


「………………っ//」



よくおばちゃんとか、そういう系の人にかわいいなんて言われた事はあるけどさ。

でもまさか年下の男の子に言われるなんて思わなかったから、どう反応していいかわからない。



「テレないテレない」


「てっ、照れてません!//」



だけど逆に言えば、何だか騙してるような気もしてくるから、ちょっぴり複雑。



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