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実家のリビングのテーブルには大きな封筒と、それに入っていただろうパンフレットが置いている。
表の写真を見ると、ドレスを着た女性やお料理やらお花やら並んだクロスのかかったテーブルなど、恐らく結婚式や披露宴関係の資料だ。
こんなパンフレットまでもう持ってるなんて…。
「高梨さんがね、費用の事なんて一切気にしないで優の好きなスタイルを選んだらいいって仰ってくれたのよ。
ほんと、頭が上がらないわぁ」
私が視線をパンフレットに向けたのを見たお母さんが察して言った。
相手がお金持ちだからって、何へこへこしてんのよ!
そんな事の為にお母さんは高梨さんとのお見合いをやたら推してたの?
「あのね、お母…」
「それと、これが結納金ですって。
何から何まで至れり尽くせりで、あんたは本当に幸せ者だよ。
あんな人に、絶対逆らっちゃ駄目だからね」
私の言葉を遮ったお母さんは、側のタンスから風呂敷に包まれた分厚い封筒を見せてくれた。
ま まさか…それが結納金…?
お母さんが取り出した分厚い封筒には、5~6cmくらいの厚さのお札がぎっしり詰まっていた。
多分、あれで最低500万くらいはあるかもしれない…。
「あのね、お母さん。
私、はっきり言うよ」
「なぁに?
いいわよ、あんたの好きなスタイルでいいって話なんだから」
まだそんな事言ってる…。
結納金のお札を大事そうに風呂敷に包み直すと、お母さんは私の考えなど全くわかってないように笑顔で訊いてきた。
「私、高梨さんとは結婚しないから」
「…………………」
「…………………っ」
私の言ってる意味がわからないんだと思う。
お母さんは私の顔を見つめたまま、しばらく固まっていた。
ユウさんとは上手くいってる、なんて言ったのは私だもの。
作り上げた誤解とは言え、お母さんもそんな事は夢にも思ってないもんね。
「ユウさんってのはね、高梨さんの悠さんじゃないの。
私の恋人の名前も勇さんって言ってね、私が上手くいってるのは恋人の勇さんの方で…」
「あんた!
まだそんな事言ってるの!!」
あれだけニコニコご機嫌だったお母さんが、一気に別人のように大声をあげた。
わかっていたとは言え、急な大声には私も一応ビクッとなる。
「高梨さんみたいな人がこんなにも良くしてくれているのに!
そんなつまらない男と一緒になって何の得になるってのよ!
あんたはどうして自分の幸せもわからないの!」
「自分の幸せなら自分が一番よくわかってるわ!
わかってないのはお母さんよ!
得とかそんな事で結婚なんかしないっ
私は…本当に好きで心に決めた人と結婚するんだから!!」
「優…っ!」
私はお母さんの持っている結納金の包まれた風呂敷を強引に奪い取った。
「ちょっ
何するの、優!!」
私は結納金をお母さんの手から取ると、立ち上がった。
私の話もちゃんと聞かないでこんなものを受け取るなんてっ
お母さんは、私をお金で売っただけじゃない!!
「これは、高梨さんに返してくる!」
「優!
あんた何血迷った事…」
「恋人の勇さんの事は、ちゃんと紹介したいから。
その時はまた連絡する」
私は玄関まで行くと、脱ぎ散らかした靴を揃えて履いた。
「優!
待ちなさい!」
私を追うようにお母さんも玄関に来たけど、私は振り返りもしないでドアを開けて出た。
すぐにケータイを取り出して、発信履歴から高梨さんのケータイ番号を呼び出し電話をかけた。
「…相川です。急にすみません。
駅まで迎えに来てもらっていいですか?」
はっきりキッパリと、高梨さんとは今日で終わりにするの。
流されちゃダメ!
私が毅然とした態度さえ取れば、高梨さんだってちゃんとわかってくれるわ…!
__夜も20時をまわった。
駅の前で待っていると、間もなく高梨さんの車が私の前で停まった。
…また見た事がない車だ。
お金持ちな事を武器にしたって、お母さんにはいいかもしれないけど私には通用しないんだから!
「お待たせ、優」
「…無理言ってすみません。
大事な話があったので」
「優のお願いなら何でも聞くよ。
さあ乗って」
高梨さんの開けてくれたドアから助手席に乗ると、車は発進した。
表の写真を見ると、ドレスを着た女性やお料理やらお花やら並んだクロスのかかったテーブルなど、恐らく結婚式や披露宴関係の資料だ。
こんなパンフレットまでもう持ってるなんて…。
「高梨さんがね、費用の事なんて一切気にしないで優の好きなスタイルを選んだらいいって仰ってくれたのよ。
ほんと、頭が上がらないわぁ」
私が視線をパンフレットに向けたのを見たお母さんが察して言った。
相手がお金持ちだからって、何へこへこしてんのよ!
そんな事の為にお母さんは高梨さんとのお見合いをやたら推してたの?
「あのね、お母…」
「それと、これが結納金ですって。
何から何まで至れり尽くせりで、あんたは本当に幸せ者だよ。
あんな人に、絶対逆らっちゃ駄目だからね」
私の言葉を遮ったお母さんは、側のタンスから風呂敷に包まれた分厚い封筒を見せてくれた。
ま まさか…それが結納金…?
お母さんが取り出した分厚い封筒には、5~6cmくらいの厚さのお札がぎっしり詰まっていた。
多分、あれで最低500万くらいはあるかもしれない…。
「あのね、お母さん。
私、はっきり言うよ」
「なぁに?
いいわよ、あんたの好きなスタイルでいいって話なんだから」
まだそんな事言ってる…。
結納金のお札を大事そうに風呂敷に包み直すと、お母さんは私の考えなど全くわかってないように笑顔で訊いてきた。
「私、高梨さんとは結婚しないから」
「…………………」
「…………………っ」
私の言ってる意味がわからないんだと思う。
お母さんは私の顔を見つめたまま、しばらく固まっていた。
ユウさんとは上手くいってる、なんて言ったのは私だもの。
作り上げた誤解とは言え、お母さんもそんな事は夢にも思ってないもんね。
「ユウさんってのはね、高梨さんの悠さんじゃないの。
私の恋人の名前も勇さんって言ってね、私が上手くいってるのは恋人の勇さんの方で…」
「あんた!
まだそんな事言ってるの!!」
あれだけニコニコご機嫌だったお母さんが、一気に別人のように大声をあげた。
わかっていたとは言え、急な大声には私も一応ビクッとなる。
「高梨さんみたいな人がこんなにも良くしてくれているのに!
そんなつまらない男と一緒になって何の得になるってのよ!
あんたはどうして自分の幸せもわからないの!」
「自分の幸せなら自分が一番よくわかってるわ!
わかってないのはお母さんよ!
得とかそんな事で結婚なんかしないっ
私は…本当に好きで心に決めた人と結婚するんだから!!」
「優…っ!」
私はお母さんの持っている結納金の包まれた風呂敷を強引に奪い取った。
「ちょっ
何するの、優!!」
私は結納金をお母さんの手から取ると、立ち上がった。
私の話もちゃんと聞かないでこんなものを受け取るなんてっ
お母さんは、私をお金で売っただけじゃない!!
「これは、高梨さんに返してくる!」
「優!
あんた何血迷った事…」
「恋人の勇さんの事は、ちゃんと紹介したいから。
その時はまた連絡する」
私は玄関まで行くと、脱ぎ散らかした靴を揃えて履いた。
「優!
待ちなさい!」
私を追うようにお母さんも玄関に来たけど、私は振り返りもしないでドアを開けて出た。
すぐにケータイを取り出して、発信履歴から高梨さんのケータイ番号を呼び出し電話をかけた。
「…相川です。急にすみません。
駅まで迎えに来てもらっていいですか?」
はっきりキッパリと、高梨さんとは今日で終わりにするの。
流されちゃダメ!
私が毅然とした態度さえ取れば、高梨さんだってちゃんとわかってくれるわ…!
__夜も20時をまわった。
駅の前で待っていると、間もなく高梨さんの車が私の前で停まった。
…また見た事がない車だ。
お金持ちな事を武器にしたって、お母さんにはいいかもしれないけど私には通用しないんだから!
「お待たせ、優」
「…無理言ってすみません。
大事な話があったので」
「優のお願いなら何でも聞くよ。
さあ乗って」
高梨さんの開けてくれたドアから助手席に乗ると、車は発進した。
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