ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!

むらさ樹

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玄関先で3人、それぞれがそれぞれの思いのまま立ち尽くしていた。


何を、どう話し始めたらいいんだろう。

1人ずつだったらまだ話しやすかったのに、2人一緒だなんて…



「大事な話があるんだろ?
何がどう大事なのか知らねぇけど、早く話せばいいんだろう!!」


しびれを切らした勇さんが半ば怒鳴り気味になって言った。


「君はお客に向かって立ち話をさせるつもりかい?」


「…んだとぉっ!?」



余裕を見せつけるようにそんな事を言う高梨さんに、勇さんが早速怒鳴りだした。


「ま、待って待って!
ごめんなさいっ
えっと、まずはお茶用意するから…っ」


「そんなもん必要ねぇ!!
さっさとこっちで話せばいいだろ!!」


すっかり腹を立ててしまった勇さんは先にリビングの方へと行ってしまった。

あああ…
神様、どうか穏便に済みますように…っ






そんなに大きくないうちのリビングダイニング。

そこに大の男が2人と小柄でも私が座れば、もう窮屈だった。


ううん、大きさだけじゃない。
多分この険悪な雰囲気が窮屈を余計に感じさせてるだけなんだ…。



「で?
話もいいけど、まずアンタは優の何なんだ?
いきなり人ん家に押し掛けてきて。
よっぽどの話なんだろうなぁ」


しばらくの沈黙の後、最初に口を割ったのはまたしても勇さんだった。

さっきと変わらず機嫌は良くない様子なんだけど。
だけど今の口振りからして、勇さんは私と高梨さんの関係を知らないみたいだった。


ここにいる間、勇さんと高梨さんは何も話してないのかなぁ。

だとしとら、私と高梨さんの関係を…どう説明すればいいの!?

それだと、私がウソをついてまでお見合いした事が勇さんにバレちゃうよぉ!



私が答えに詰まって口を閉ざしていると、なのに高梨さんは何のためらいもなく答えた。


「僕と優は親同士の紹介で知り合った仲だよ。
一緒に食事もしたし、うちにも遊びに来たよね」


うわうわうわ~~っ

お見合いって言葉は出なかったからまだ良かったけど、でも一緒に食事って言ったってお見合いが食事処だったってだけだし、高梨さんの家に行ったのも決して遊びに行ったわけじゃないよぉっ!


弁解しようにも、だからってどう言ったらいいのかもわかんないっ。


勇さん、お願いだから怒らないで…っ



「…優、今のは本当の話か?」


ギロと私を睨むようにして訊く勇さん。

怖くて言葉が出ず、私はコクンと一度だけ頷いた。



「漫画の幼なじみってわけじゃあるめぇし、そんな事で気安く優を呼び捨てにしてんのかよ…っ」


フンと鼻を鳴らした勇さんは視線を向けたまま、そう言った。

それに対して、高梨さんも負けてない。


「呼び捨てちゃってもいいと思うけど?
優だって僕を名前で呼んでくれてるし」


しれっとそんな事を言う高梨さんに、いちいちドキッとしてしまう。

「勇さん」を「悠さん」と言ったと思ってる事を言ってるんだ。



「だ…だからそれは高梨さんの事を呼んだんじゃなくって、恋人の…」

「それに、僕と優は結婚を考えているんだ。
名前で呼び合ってもおかしくないよね?」


「ちょ…っ!!!」


なんて事を言うのっ
私は高梨さんと結婚するなんて話、一切してないのに!!


だけどさすがにそれには、勇さんも顔色を変えた。



「お前…っ
何ふざけた事を言ってんだ!
自分が何言ってんのかわかってんのか!?」


ドンと拳でテーブルを叩く勇さんに、私はビクッとなった。


怖いっ
怖いよぉ!
早く、早くちゃんと言わなきゃ…っ


「高梨さんっ
何度も言ってますけど、私結婚は…っ」


このままじゃあ勇さんに誤解され兼ねない。

結婚は出来ないって言ってるのに、高梨さんがなかなか諦めてくれないんだもの。

だけど今勇さんが一緒なら、これで諦めてくれるかも…!



「わかってるよ、優。
だから優の彼氏に、優を諦めてもらうように交渉しようと思うんだ」


「何ィ!!」


「落ち着いて。みだりに怒鳴らないでくれるかな。別にタダで諦めてくれって言ってるわけじゃあない。
それでなくても、身重な優を貰おうってんだからね」

「高梨さんっ!!」


「身 重…?」


勇さんの表情が、一変した。
それに気付いた私も、ドキンとして息をのむ。


ずっと言えなくて黙っていた私の妊娠。


まさか、高梨さんの口から勇さんに伝わるなんて…!

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