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後日談…②
しおりを挟むガチガチに緊張したまま公爵邸に伺うヴィオラだったが、公爵夫妻もアルフレッドの兄も好意的だったのでとてもホッとする。どうやら前もってプロポーズに成功したらヴィオラを連れてくると伝えていたらしい。連れてくることを望んでいたのだ。だから突然の訪問にも関わらず歓迎ムードなのか、とヴィオラは納得する。
「失敗したら慰めてやろうと思ってたのになー」とアルフレッドの肩に腕を回す男性…9歳上の彼の兄を不機嫌そうな顔で思い切り押しのけて「うるせぇよ」と悪態を付いていた。見た感じ兄弟仲は悪くなさそうである。アルフレッドより背が高く垂れ目な男性で兄弟だけあって似ている。
(アルもいずれこんな風になるのかな…)
と不躾にアルフレッド兄に視線を向けていると、そんなヴィオラに気づいたアルフレッドがムッとした表情で近づいて来てヴィオラの前に立つ。これにより兄の姿が見えなくなってしまった。
「おい、いくら何でも嫉妬深過ぎだろ。度が過ぎると嫌われるぞ」
呆れたような兄の忠告にアルフレッドはこう宣った。
「大丈夫、ヴィオラは俺のこと大好きだからこれくらいじゃ嫌いにならない」
アルフレッドの背に隠されたヴィオラは彼の突然の暴露に思わずドン、と背中を叩いてしまった。彼の家族がいる場でこんなことを言うなんて信じられない。
「きゅ、急に何言ってるんですか!時と場所を考えて…」
「2人きりなら良いのか?」
「そういう問題ではっ…」
「それに本当のこと言って何が悪いんだ」
「だから!」
と痴話喧嘩を始めた2人。兄はヴィオラに(こんな弟ですまん)と同情混じりの視線を向け、公爵夫妻は2人に微笑ましいものを見る目を向けていたのだった。
落ち着きを取り戻したヴィオラは大広間に案内されて、色々と説明をされた。
アルフレッドはどんな縁談も受け入れず、公爵夫妻達は頭を悩ませていたらしい。無理強いするのも良くないかと、好きにさせていたら卒業を控えたある日好きな女性がいる、婚約したいと聞かされて目が飛び出るほど驚いたそうだ。
ヴィオラの身辺調査をし、伯爵家にも本人にも悪い噂がなくしかも学年主席の才女。あまりパーティー等には参加していないが、次男の妻は社交の機会は少ないため特に問題視されず。あっさり承諾されたのだった。
何よりアルフレッドが望んだ女性を逃すわけにはいかない、と全力で外堀を埋めるのに協力しようとしたが「余計なことはするな、ヴィオラ自身に決めてもらう」と凄まれたらしい。
ヴィオラの意思を尊重していたのは両親とアルフレッドだけで、公爵夫妻達はそうではなかったようだ。アルフレッドではなく、公爵夫妻自ら打診していればクライン伯爵家は考える余地すら無かった。ヴィオラはそれでも構わなかったが、アルフレッドが大層気にしただろうからこれで良かったのだ。
その後挨拶もそこそこに客間に案内され、メイドに湯浴みを手伝ってもらい繊細なレースが施されたネグリジェに着替える。生地が薄くて心許なく、自分だけなら兎も角アルフレッドに見られることを想像すると少し恥ずかしい。
寝るのも勿体無いと書斎から持ってきてもらった本を読んでいるとドアがノックされ、アルフレッドが顔を出した。そう言えばもっと話したいからヴィオラを誘ったと言っていたことを思い出した。ヴィオラはアルフレッドを部屋に招き入れる。
アルフレッドも湯浴みをした後なので夜着を身に纏い、赤い髪は少し濡れていた。初めて見る湯上がりの彼の姿にヴィオラの胸は高鳴る。
端的に言えば、格好良すぎる。ただでさえ凛々しい顔立ちが平素の10倍増しで輝いて見えた。
頭一つ分大きいアルフレッドに見下ろされている状態だが、特に何もしてないのに色気がダダ漏れていた。どうにも彼の顔を直視することが出来ず、思わず顔を背けてしまう。すると頭上から彼の拗ねた声が降ってくる。
「何でそっちを向く?何処か変なところあったか?」
「そ、そんなのありません…っ」
変どころか格好良すぎて困っているのだが、言う勇気はない。
「じゃあ何でこっちを見ないんだ?…さっきはずっと見てくれていただろ」
案に図書室でのことを仄めかされ、ヴィオラの体温は一気に上がる。徐にアルフレッドがヴィオラの右耳に触れてピクリと肩が震えた。
「耳、赤くなってる…もしかして思い出したのか?」
揶揄うような口ぶりにヴィオラはパクパクと口を開閉させて、狼狽えることしか出来ない。その反応が肯定と同義だとアルフレッドにはすぐ伝わる。
顔を真っ赤にしてプルプル震え出したヴィオラにアルフレッドは揶揄いすぎたか、とまだ乾いていないヴィオラの髪を指で梳きながら謝った。
「悪い悪い、ちょっとやり過ぎた。機嫌直せよ」
「…怒っているわけでは…」
「なら、顔見せて欲しいな」
「…」
急に柔らかい口調になり、ヴィオラはたじろぐ。やがて右頬に刺さるアルフレッドの視線に耐え切れず、おずおずと顔を上げた。アルフレッドの琥珀の瞳を見つめると、熱に浮かされたようなヴィオラの顔が映っている。2人の視線が重なり、そこにしっとりとした甘さが交わりつつあった。
「…侍女長が張り切って用意してたやつだけど、その夜着すげぇ似合ってる、可愛い」
流れるように額に唇が落ちてくる。もうこれ以上赤くならないんじゃないか、というくらいヴィオラは真っ赤になっていた。
「可愛いんだけど、目のやり場に困るな」
そう言いながらもアルフレッドは恥ずかしがる素振りを見せず、胸元に視線を落としている。このネグリジェは胸元が大きく開いているので、ヴィオラが着ると谷間がよく見えてしまう。指摘されたヴィオラは手で胸元を隠そうとするも、先手を打たれて両手を掴まれた。ヴィオラが痛くない程度の力だが、振り解けない。
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