期間限定の関係のはずでは?〜傷心旅行に来たら美形店長に溺愛されてます〜

水無月瑠璃

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5話

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「…差し出がましいようですが、逆ナンは危ないですよ。もし声をかけた相手が碌でも無い奴だと大変なことになりますし…」

彼は懇切丁寧に逆ナンの危険性を説いてくる。その懸念は最もだ。もし成功したとして、その相手が良からぬことを企んでいたら…例えば財布から金を抜き取られる、写真を撮られてそれをネタに脅されるといった犯罪被害に遭う可能性もある。勿論まともな男に当たる確率の方が高いが、それでも忠告してくれる花村には葉月が騙されそうな女に見えてるのかもしれない。あるいは男漁りをしている節操のない女だと呆れているか。花村に誤解されてしまうのは嫌だったし、こういう話は赤の他人の方が話しやすいということがある。この旅行が終わったら花村と会うことはもうない。それならばドン引きされるであろう身の上話をしても良いかもしれない、と酒も相まって口が軽くなった。

「本気で逆ナンしたかったわけではないです、ただ真面目な自分の殻を破って…元彼を見返したいっていう下らない動機ですよ」

元彼、という単語に花村の形の良い眉がピク、と揺れたが何も言ってこない。このまま話を続けて良いのだと葉月は都合良く解釈した。

「私彼氏がいたんです。幼馴染で高校からずっと付き合っていて、このまま結婚までいくのかなって漠然と考えてたんですけど…この前突然別れてくれって言われたんです。浮気相手に子供が出来たからって」

衝撃の内容に花村が絶句している。涼やかな瞳に仄かに嫌悪の感情が宿っているように見えるのは、気のせいだろうか。

「これが同じ会社の人とかだったなら、最低だし最悪だしふざけんなって感じですけど、まだ、まだ良かったんです…でも浮気相手、私の友達なんです。しかも1番の。私友達に彼氏寝取られちゃったんですよ」

あはは、と葉月は無理やり笑った。こうでもしないとあの時の悔しさと惨めさと怒りが蘇って仕方なくなるからだ。一方の花村は険しい表情になっていた。

彼女とは高校からの友人で元彼とも葉月経由で仲良くなった。元彼と葉月が付き合ってからは彼女も恋人が出来たことがあったが、誰とも長続きしなかった。高校、大学、社会人になってから数年の貴重な時間を捧げた彼氏と社会人になってからも1番付き合いのある友人に揃って裏切られているとは、夢にも思わなかったが。因みに彼女が祖母お手製のキーホルダーを「見栄えが悪い」と言った友人である。当時は彼女の言うことも一理ある、と受け入れていたが彼女からされた仕打ちを思うと、悪意を持ってした可能性が出てきた。

「私、2人がそんなことになってるなんて全く気づかなくて。2年も同時進行だったんです、馬鹿ですよね」

「馬鹿ではありませんよ、あなたは」

ずっと聞き役に徹していた花村が口を開く。

「世の中には、平気で人を欺ける人がいます。元彼と友人がそのタイプだったんでしょう。元彼はその友人に対して気持ちがあったなら、まずあなたに筋を通すべきだったし、友人もあなたに気持ちを打ち明けるなりするべきだった。なのに彼らはあなたを裏切り欺く選択をした。バレなければ問題ないと高を括っていたんでしょうね、お知り合いを悪く言いたくはないですが馬鹿で愚かなのは彼らの方ですよ」

冷ややかな声で吐き捨てた花村は迫力があり、自分に怒りが向けられたわけではないのに身体が強張った。

(結構辛辣なんだ)

オブラートに包むこともせず、元彼達を評する花村の反応は意外だった。彼らを馬鹿と揶揄すると共に葉月を擁護する発言をしている。彼は葉月の立場に立ってくれるらしい。

「寧ろ、結婚する前に元彼と友人の本性が分かって良かったのでは?結婚後に同じ問題を起こされる方が、もっと面倒なことになっていたと思いますし」

「…確かに」

彼らが何を考えていたか、知りたくもないが葉月と結婚後も関係を継続するつもりだった可能性はある。友人が自分の夫と関係を持ち続け、やがて妊娠してしまう…想像しただけでとんでもない修羅場になり、背筋が冷たくなった。そうなった場合葉月へ向けられる周囲の関心と憐憫は今の比ではない。人の不幸は蜜の味、と言わんばかりに悲惨な目に遭った葉月は面白おかしく揶揄されるのだろう。そんな未来絶対にごめんである。

「それに浮気する奴は、絶対またやります。元彼、その友人と結婚してもいずれ女性問題を起こすんじゃないですか?」

ふっ、と花村が嘲笑した。そして表情を取り繕い、うっすらと安心させるような笑顔を浮かべる。

「不良債権を友人に押し付けてやった、縁が切れて良かったと考えた方が精神的に楽ですよ」

プッ、と花村の言い草に思わず噴き出してしまった。

「不良債権、確かにその通りですね。それにしても店長さん辛辣なんですね」

「俺、嫌いなんですよね。浮気するような倫理観の無い奴。何考えてるのか理解出来ないし、したくもない」

花村は真面目で、潔癖なのかもしれない。不貞行為を唾棄しているようなので過去に被害にあったのか?と穿った見方をしてしまうが、そこまで踏み込むことは出来ない。ふふ、と曖昧に笑う。

「私も元々嫌いでしたけど、大っ嫌いになりました…この旅行、元彼と来る予定だったんですよ。当然奴が来るのは不可能なのでキャンセルしようかと思ったんですけど…元彼達から結構お金をもらったので思い切ってホテルの部屋のグレード上げてパーっと使ってやろうと思って」

「お金…」
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