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第一章:リスタート
荷馬車からの逃亡
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幌に囲まれた荷馬車の中でも、光の具合は分かるものだ。
暗い時にはぼんやりとしか見えていなかったエミリーとアメリアの顔も、随分とはっきり見えるようになった。
「夜が明けてきたわね」
カモフラージュのために結び直していた縄をもう一度解いたイザベラは、二人に声をかけながら外を確認しようと幌をめくった。
幌の外は薄明るく、生えている草や街道の石ころなども視認できるようになっている。これなら逃げやすいだろう。
「完全に朝になってしまう前に決行するわよ」
夜のうちに闇に紛れて逃げるか、明るくなって動きやすくなってから逃げるか。
迷ったが後者を取った。というよりも取らざるを得なかった。なにせイザベラたちが目を覚ましてから数刻も立たないうちに空が白み始めたのだ。
「動いている馬車から飛び降りなきゃいけないけど。止まって休憩中に逃亡よりも、逆に安全かもね」
犯人は二人しかいない。休憩のために止まればどちらかが眠るはず。
その間に逃げれば少しでもリスクが減るかと思ったのだが、追っ手を警戒してか、荷馬車は夜通し止まることがなかった。どうやら御者を交代しながら仮眠をとっているようだ。
「どうしてですか?」
首を傾げて聞いてくるアメリアに、イザベラは答えた。
「休憩していても片方は見張りをするでしょう? 馬車の動いていない静かな時に逃げる物音がしたら、見張りにすぐ気付かれてしまうもの」
ひょいと肩をすくめると、アメリアがうんうんと頷いた。
「なるほど。馬車が動いている間なら、少しくらい物音がしても分かりにくいかも」
「でしょう? それに縄で縛られている人間が、動いている馬車から飛び降りて逃げるとは考えにくいと思うの」
男たちが少し前にこちらの様子を確認した時、縛られたままの状態を見せている。次の確認までの間に逃げればバレにくい。
あくまでバレにくいだけで、実際はどうなるか分からないが、確率は少しでも上げておきたい。
「ということで、実行に移すわよ。最初はエミリーね」
「えっ、なんで私からでございますですか」
「走っている馬車から飛び降りるのよ。上手く降りられずに捻挫なり骨折なりしそう。エミリーだもの」
指名されて目を丸くするエミリーに、身も蓋もない事実を伝えた。
「ああ、それは……」
アメリアが言葉を濁してエミリーを横目で見ると。
「うぅ、それは否定出来ませんでございますですけども」
がっくりと肩を落としたエミリーが複雑そうに認めた。
暗い時にはぼんやりとしか見えていなかったエミリーとアメリアの顔も、随分とはっきり見えるようになった。
「夜が明けてきたわね」
カモフラージュのために結び直していた縄をもう一度解いたイザベラは、二人に声をかけながら外を確認しようと幌をめくった。
幌の外は薄明るく、生えている草や街道の石ころなども視認できるようになっている。これなら逃げやすいだろう。
「完全に朝になってしまう前に決行するわよ」
夜のうちに闇に紛れて逃げるか、明るくなって動きやすくなってから逃げるか。
迷ったが後者を取った。というよりも取らざるを得なかった。なにせイザベラたちが目を覚ましてから数刻も立たないうちに空が白み始めたのだ。
「動いている馬車から飛び降りなきゃいけないけど。止まって休憩中に逃亡よりも、逆に安全かもね」
犯人は二人しかいない。休憩のために止まればどちらかが眠るはず。
その間に逃げれば少しでもリスクが減るかと思ったのだが、追っ手を警戒してか、荷馬車は夜通し止まることがなかった。どうやら御者を交代しながら仮眠をとっているようだ。
「どうしてですか?」
首を傾げて聞いてくるアメリアに、イザベラは答えた。
「休憩していても片方は見張りをするでしょう? 馬車の動いていない静かな時に逃げる物音がしたら、見張りにすぐ気付かれてしまうもの」
ひょいと肩をすくめると、アメリアがうんうんと頷いた。
「なるほど。馬車が動いている間なら、少しくらい物音がしても分かりにくいかも」
「でしょう? それに縄で縛られている人間が、動いている馬車から飛び降りて逃げるとは考えにくいと思うの」
男たちが少し前にこちらの様子を確認した時、縛られたままの状態を見せている。次の確認までの間に逃げればバレにくい。
あくまでバレにくいだけで、実際はどうなるか分からないが、確率は少しでも上げておきたい。
「ということで、実行に移すわよ。最初はエミリーね」
「えっ、なんで私からでございますですか」
「走っている馬車から飛び降りるのよ。上手く降りられずに捻挫なり骨折なりしそう。エミリーだもの」
指名されて目を丸くするエミリーに、身も蓋もない事実を伝えた。
「ああ、それは……」
アメリアが言葉を濁してエミリーを横目で見ると。
「うぅ、それは否定出来ませんでございますですけども」
がっくりと肩を落としたエミリーが複雑そうに認めた。
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