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第一章:リスタート

追いかけられる恐怖

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「あいつらが向こうを探している間に、ゆっくり移動しましょうです。大丈夫。あんなに大きな音を自分たちで立てていたら、私たちが移動する音になんて気づきませんでございますですよ」

 真っ白な顔色でアメリアとイザベラを抱えたまま、エミリーがふん、と鼻息を吐き出し胸を張る。イザベラの体に回している手は震えているのに、得意げなドヤ顔だ。

「エ、エミリーに言われなくても分かっているわよっ」
「それでこそ、お嬢様でございますです」

 素直に感謝を伝えられず、憎まれ口とふくれっ面でエミリーを押し返して、イザベラは腰を上げた。
 柄にもなく怖がったことが恥ずかしくて情けない。普段はドジばかりのエミリーに諭されてむずむずする。
 今は無理だけど、無事に帰ったらちゃんと、ありがとうと言おう。

「話はまとまりましたね。早く逃げましょう」

 既に準備万端でイザベラたちを待っていたアメリアに頷き、彼女に続く。

「あまり街道から離れないように行くわよ。遭難してはいけないし、セスが助けにくるなら街道からくるはずよ」

 エミリーのおかげで冷静な思考が戻ってきた。三人は見つからないように、中腰で茂みの間を進んだ。

「きゅうーう、じゅザザぅぅぅぅぅぅうザザうう!! おい、十数え終わったぞォッ……ザザザ……ッ!」
「出てこいィッ! ふざけるなよ、クソアマあぁあああザザザザザザッ」

 ついに数え終わった男たちの怒り狂う声に追い立てられ、イザベラたちの足が速まった。

「ひぇぇ、もう数え終わったでございますです」
「エミリーさん、落ち着いて、ゆっくり、急ぎましょう」
「矛盾してるけど、その通りだわ。アメリア」

 出来ることならなりふり構わず走りたい。けれどそれだと見つかってしまう。

「ザザッ……ざけんなよォ……金が手に入らザザ……じゃねぇかァッ、金、金、金、金金金金金ェッ!!金…………」
「クソ女ども……許さ……ザザ……ぇ……許さ、許、許、許許許許許…………」

 ただ怒鳴っていた男たちの声が、どんどん低く小さくなっていく。しかも壊れたおもちゃのように、同じ言葉を繰り返し始めた。

「な、なななな、なんか様子がおかしいでございますです、お嬢様」
「おかしいっていうか、ヤバそうです。早く、早く逃げないと」

 どうやらノイズが聞こえていなくとも、男たちの様子が異様だと感じたらしい。エミリーたちが顔を引きつらせた。
 さらに足を速めようとするが、腰をかがめているせいでつんのめるようになる。なりふり構っていられないと、つんのめった時は手も使った。
 ほとんど四つん這いの状態で男たちから少しでも距離を取ろうと走る。
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