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第二章 まさかの乙女ゲーム世界!

公爵令嬢とのお茶会 2

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「なんで?なにも悲しくなんてないよ、僕は幸福な人間だ」

 その何もかもを透きとおすような瞳で僕を見ないで欲しかった。やめてほしい。もうこれ以上…

「嘘なんてつかなくていいんだよ。悲しかったら悲しいって言えば良い。泣きたいんなら泣けば良い。きっと私たちは婚約する。王家が三属性持ちを手放すなんてあり得ない。『私は貴方が良い』私の前では泣いて良いんだよ」


 何かが壊れたような気がした。


「なんで?なんで誰も僕を見てくれないの?どうして僕はこんな思いをしなくちゃいけないの?愛されちゃいけないの?」


 それは僕から出た本音の言葉だった。


 気づけば涙が溢れていた。泣いたのはいつぶりだろうか、自分を求められたのはいつぶりだろうか、何かが壊れたような気がして気づけば彼女に話をしていた。

 
 自分が聖属性ということに気付き自分から人が離れていったこと。そんな自分から人の愛を奪っていった聖属性が大嫌いだということ。三属性…そのうちに聖属性も入っているなんていつ国がどうなるかわからないしその人の機嫌を損ねればどうなるかわからない。人は当然距離をおく、そして聖属性しか見ていない人が近寄ってくる。
 五歳の頃に戻りたいなんてできるはずもないのにそんなことを考えたりもした。
 あの愛し愛されていた頃が懐かしい。

「私には貴方の気持ちがわかる。けれどわからない部分がいくつかある」

 突然の言葉。びっくりして肩が震えた。彼女は僕に話す。

「愛されてはいけない人間なんているはずないよ」

 その言葉を聞いた途端に顔をあげる。びっくりした。驚愕した。
『愛されてはいけない人間なんているはずない』そんなことあるのかと。彼女が目を向けている方向にはたくさんの人がいた。

 仲が良かった、メイドや執事に父様と母様。なぜここにいるんだろう。なんで隠れているんだろう。なんで心配そうにこっちを見ているの?
 父様と母様は僕に話しかけてくる。

「すまん、お前とどう接して良いかわからなくなった。息子としてかあるいは聖属性持ちの一人としてか」

「ごめんなさい、アルベルト。貴方のことを何も考えてなかった。こんな母親でごめんね」

  そのあと、メイドや執事たちも謝罪を繰り返してきた。接しかたなんて前みたいでもいいのに。そんなこと考えなくても良かったのに。抱き締められて抱き締め返した。『幸せ』なんだ。


「ソフィア!ソフィアの言葉とっても嬉しかった!ありがとう!」


 彼女の方を見ると優しく微笑んで涙を流していた。


 ソフィア…
 ソフィア・スイート


 僕の世界を照らしてくれた。




 僕の太陽。



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