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04 キオッジャ
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キオッジャ戦争として知られるこの戦争であるが、これからのキオッジャをめぐる戦いは、特に「キオッジャの戦い」として知られる。
「元首閣下」
今、元首にして司令官、アンドレア・コンタリーニと、副司令官ヴェットール・ピサーニは、造船所で造船作業にいそんしでいた。
「何ですか、ピサーニ提督」
鉋を手に、額に汗して木材を削るアンドレアは、元首という肩書きがなくても、尊敬に値する職業人に見えた。
ヴェットールはアンドレアに手巾を差し出し、代わりにアンドレアから鉋を受け取る。
「今、ヴェネツィアはまさに累卵の危うきにあります」
「……で?」
アンドレアは手巾で汗を拭きつつ、目線でヴェットールにつづきを促す。
「ですが、ヴェネツィアにも有利な点が何点か」
「聞きましょう」
アンドレアが傾聴の姿勢を取る。
「まず、カルロ・ゼン提督」
「ええ」
カルロには、矢のように帰国の催促をしている。
しかし、それはジェノヴァも警戒しているにちがいない。
「この点については、ジェノヴァの耳目をこのヴェネツィアに釘付けにする必要が有ります」
「何か策が?」
「そのジェノヴァについてですが、はっきり言って、ピエトロ・ドーリアのあの艦隊がせいぜいでしょう。ヴェネツィアでいう、カルロの艦隊のような存在が無い」
ジェノヴァ本国の艦船をかき集めて作るにしても、相応の時間がかかるに相違無い。
「その点は、ヴェネツィアも変わりありません」
実は今、アンドレアとヴェットールが造船作業に従事しているのは、壊滅状態のヴェネツィア第一艦隊を復活させるためである。
「それとパドヴァとハンガリーですが、この両国は地上では確かに脅威。しかし、海上には手を出せません」
「包囲のみ、ということでしょうか」
「そう考えてよろしいかと。ですから、われわれの相手は、キオッジャのみ」
「結局、そうなりますね」
キオッジャに居座るジェノヴァのピエトロ・ドーリア、それに集約できる。
「そのため、こうして船を造っているわけですが」
アンドレアは、自分がお飾りの司令官であることを十二分に認識し、逆にお飾りであることを活かし、支援に務めた。造船作業に参加して、船大工を鼓舞することは無論のこと、自ら財産を提供し、さらに強制公債を発行して、戦費を賄った。
「しかし船は作れても、船員は市民から募集することになります」
ヴェネツィアの民である以上、船は乗れるだろう。だからといって、一人前の水兵になれるかというと別問題である。
「それは仕方ありません。それは、訓練を積むしか……」
実際、急造されたヴェネツィア艦隊は、市内の運河にて訓練を余儀なくされたという。
アンドレアは声を潜めた。
「単刀直入に言います。提督は何が言いたいんですか? もしや」
周りの船大工は仕事に熱中している。それでも聞かれる可能性を考えて、声を潜めた。
「キオッジャを何とかできるというのでしょうか、提督は」
「できます」
ヴェットールはアンドレアに耳打ちした。
アンドレアは目を見開き、こう言った。
「素晴らしい」、と。
「元首閣下」
今、元首にして司令官、アンドレア・コンタリーニと、副司令官ヴェットール・ピサーニは、造船所で造船作業にいそんしでいた。
「何ですか、ピサーニ提督」
鉋を手に、額に汗して木材を削るアンドレアは、元首という肩書きがなくても、尊敬に値する職業人に見えた。
ヴェットールはアンドレアに手巾を差し出し、代わりにアンドレアから鉋を受け取る。
「今、ヴェネツィアはまさに累卵の危うきにあります」
「……で?」
アンドレアは手巾で汗を拭きつつ、目線でヴェットールにつづきを促す。
「ですが、ヴェネツィアにも有利な点が何点か」
「聞きましょう」
アンドレアが傾聴の姿勢を取る。
「まず、カルロ・ゼン提督」
「ええ」
カルロには、矢のように帰国の催促をしている。
しかし、それはジェノヴァも警戒しているにちがいない。
「この点については、ジェノヴァの耳目をこのヴェネツィアに釘付けにする必要が有ります」
「何か策が?」
「そのジェノヴァについてですが、はっきり言って、ピエトロ・ドーリアのあの艦隊がせいぜいでしょう。ヴェネツィアでいう、カルロの艦隊のような存在が無い」
ジェノヴァ本国の艦船をかき集めて作るにしても、相応の時間がかかるに相違無い。
「その点は、ヴェネツィアも変わりありません」
実は今、アンドレアとヴェットールが造船作業に従事しているのは、壊滅状態のヴェネツィア第一艦隊を復活させるためである。
「それとパドヴァとハンガリーですが、この両国は地上では確かに脅威。しかし、海上には手を出せません」
「包囲のみ、ということでしょうか」
「そう考えてよろしいかと。ですから、われわれの相手は、キオッジャのみ」
「結局、そうなりますね」
キオッジャに居座るジェノヴァのピエトロ・ドーリア、それに集約できる。
「そのため、こうして船を造っているわけですが」
アンドレアは、自分がお飾りの司令官であることを十二分に認識し、逆にお飾りであることを活かし、支援に務めた。造船作業に参加して、船大工を鼓舞することは無論のこと、自ら財産を提供し、さらに強制公債を発行して、戦費を賄った。
「しかし船は作れても、船員は市民から募集することになります」
ヴェネツィアの民である以上、船は乗れるだろう。だからといって、一人前の水兵になれるかというと別問題である。
「それは仕方ありません。それは、訓練を積むしか……」
実際、急造されたヴェネツィア艦隊は、市内の運河にて訓練を余儀なくされたという。
アンドレアは声を潜めた。
「単刀直入に言います。提督は何が言いたいんですか? もしや」
周りの船大工は仕事に熱中している。それでも聞かれる可能性を考えて、声を潜めた。
「キオッジャを何とかできるというのでしょうか、提督は」
「できます」
ヴェットールはアンドレアに耳打ちした。
アンドレアは目を見開き、こう言った。
「素晴らしい」、と。
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