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第四章 坂崎事件
23 告白
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「それは――仕返し」
直盛は重々しく告げた。
宗矩は瞑目した。
事前に立花宗茂から聞かされていたこと。
それが、これであった。
「そんなに」
宗矩の裃が震える。
「そんなに、仕返しがしたかったのか、いやさ」
宗矩は立ち上がって、直盛の肩をつかんだ。
「そんなにあの男が惜しかったのか、直盛」
「そうだ」
直盛は宗矩の手をつかみ、そっとどかした。
「わたしはかれのために、大坂城から千姫を連れ出した。顔にやけどを負った」
直盛はかれと同門であった。
共にキリシタンであるがゆえに、かつて存在した宇喜多家で助け合い、現に、おりんの兄を逃がすことに協力している。
その後、関ヶ原では敵味方に分かれ、牢人となったが、直盛はずっとかれのことを気にしていた。
そうこうするうちに、大坂の陣となった。
このいくさ、徳川に敵対した者たちは始末されるだろう。
かつての関ヶ原で、石田三成がその首討たれたように。
だから直盛は大坂城から千姫を連れ出した。顔にやけどを負った。
「明石……掃部のために」
振り絞るように出た直盛の声。
それは、掃部の末路を知っているからだと、宗矩は確信した。
「……いつ?」
宗矩は直盛に、掃部がどうなったかを知ったのは、いつだと聞いた。
「大坂の陣のあと、ほどなく、そういううわさが聞こえて来ました」
掃部は落城のあたりから行方不明になっていた。
そのため、討たれたといううわさと、落ちのびたという話が両方聞こえて来て、直盛は事の真相を確かめるために必死だった。
「何しろ、秀忠さまから直々に、掃部を津和野藩に迎えること、許しを得たのだから」
それが、直盛の求めた褒美だった。
千姫救出直後に秀忠に拝謁した直盛は、それを約束してもらった。
かつて、関ヶ原の戦いで敗北し、改易された小野寺義道を津和野藩に受け入れた直盛らしい、実に男気にあふれる、褒美だった。
だから、千姫救出の裏の、家康の思惑など、気にもとめなかった。
それよりはと掃部の捜索に力を入れた。
しかし。
「どうも、井伊直孝どのが討ったらしい」
彦根藩主・井伊直孝。
秀忠の信頼は絶大で、秀忠がその死に際して、大老に任じたほどである。
その直孝が、大坂の落ち武者狩りをしていた際に掃部を発見し、速やかにその首を討った、と。
それは直盛が秀忠からの褒美の許しを得た、あとのことだった。
「許せません」
直盛はもはや震えることなく、それを語った。
「掃部はわが友。それを、このような」
いくさの中で討たれるのはいい。それは武士として当然のことだ。
だが、直盛が迎え入れるという約束をしたあとに。
落ち武者狩りで。
「討つというのは、あまりといえばあまりではないですか」
一方で異国へ渡ったとか、土佐の村へ逃げたとか、みちのくに落ちのびたとの話だった。
直盛は全て確かめた。
そのすべてがどれも信憑性に乏しく、仕方なく将軍に問いただすことにした。
折りしも、家康についての悔やみを述べる機会があった。
そこで。
「井伊が討ったと。将軍はそう言われた。情けない。そう思った」
直盛はせめてやけどを負わなければ、大坂に残って、そういうことを防いだのにと思った。
けれども、やけどは千姫を救うために負ったもの。
それは、お門違いだ。
「……かくして将軍は、わたしにとって大切な、同門にして友を討った。助けると言い置いて、その実、討った。なら、それ贖わせねばなるまい」
背信、許すまじ。
直盛は今この瞬間、最も秀忠が大切にしている者を狙うことにした。
それが。
「千姫さま、か」
「ああ」
直盛はため息をついた。
やはり、不本意だったのだろう。
この事件は、直盛が千姫に横恋慕したためと言われているが、直盛は五十歳、千姫は十九歳だ。むしろ、直盛の息子、平四郎の方が十九歳であり、つり合いが合う。息子の嫁にと望んだ方が、自然だ。
「ただ、息子はこのことに関係がない。ゆえに、わたしがねらっている、ということにしました」
「ということにしました、か」
やはり、最初から強奪する気はなかった、ということか。
そもそも千姫自身、やけどを負ってまで救ってくれた直盛に対して、恩人として敬意を抱いている。
坂崎直盛はそういう娘を、強奪するような為人ではない。
「……どちらにしろ、もう済んだことです」
直盛は刀を置いた。脇差も置いた。
「さあ、討ちなさい。やろうとしただけで、それは罪。それが、叛乱というものでしょう」
徳川幕府はまだ始まったばかり。最大の叛乱勢力、豊臣家を滅ぼしたものの、まだまだ叛乱予備軍の大名はいる。伊達家しかり、島津家しかり、福島家しかり……。
であれば、ここで一罰百戒。
討ったところで誰も異を唱えぬ、とっくに滅亡した宇喜多家の係累の坂崎家など、格好の見せしめである。
「こうなることは覚悟していました。さあ宗矩……」
「覚悟?」
今度は宗矩が刀を置いた。脇差も。
宗矩は立花宗茂から、直盛が掃部の行方を追っていた、と聞いた。
宗茂はこの時、陸奥棚倉を領しており、そこを直盛の放った忍びが通り、忍びの探った伊達藩の反応から察した。
「そして、わしは御伽衆として秀忠さまに仕えておる」
秀忠は関ヶ原の醜態を気にしてか、大坂の陣におけるおのれの「活躍」を誇大に語る傾向があった(実際には、軍師である宗茂が指揮統率したおかげで、大過なく戦えたわけだが)。
その時の秀忠はしこたま飲んでおり、「予は大坂で敵将の掃部を討った」と口走った。
同じ場に居た井伊直孝の態度から、ほんとうは直孝の功だと知れた。
掃部の行方を追っていた直盛が、これを知ったらどうなるか。
大乱の因になる。
それを危惧していた宗茂をよそに、直盛は江戸に下向し、宗茂がつかまえるより早く宗矩に会い、そのまま秀忠への謁見に臨んでしまった……。
「つまり覚悟ではない。坂崎どの、いや、直盛……おぬしは望んでいるのだろう、死を」
千姫を強奪するという計画。
だが、それは計画倒れで、どこからかその情報が洩れ、こうして幕府は素早く対応することになった。
となると、それは洩れたのではない。
洩らしたのだ。
なぜ、洩らしたのか。
「それは……朋友であり同門である掃部を救えず、死なせてしまったことという罪。救えることになりながらも、それを果たせなかったことへの罰」
だから、死を望んだ。
千姫はそのためのお膳立てに過ぎない。
「千姫さまにおかれましては、ほんとうに申し訳ありません」
「ならばなぜ、ひとりで死ななかったのか」
この時代、武士は自裁という手段を持っていた。
何かの間違いを犯した時の、責任の取り方の作法として。
だが宗矩は、その作法に則って、ひとりで死ねと言っているわけではない。
確かめたかったのだ。
直盛は、自裁ができないといことを。
「……それはできません」
直盛の武骨な手が、懐中をまさぐる。
その中から出て来た手には、あるものがあった。
「この十字架に誓った、神への信仰がありますので」
鈍色に輝く十字架。
それはかつて、十兵衛の妻・おりんが兄の行方を追う際に入信した直盛にとって、これまでの心の支えだった。
そして。
「われらキリシタンは自裁はご法度。細川ガラシャしかり、小西行長しかり……」
細川ガラシャも、小西行長も、関ヶ原という出来事の中、死を余儀なくされた。
ただし、キリシタンという信仰があるため、他者に寄って殺されるという死を迎えていた。
「ならばわたしが死ぬには、誰かの手を借りねばならない。宗矩、おぬしは私が知る限り、最高の剣士だ」
最高の勇を誇る者に、討たれるというのは、武士として最高の栄誉だった。
直盛は重々しく告げた。
宗矩は瞑目した。
事前に立花宗茂から聞かされていたこと。
それが、これであった。
「そんなに」
宗矩の裃が震える。
「そんなに、仕返しがしたかったのか、いやさ」
宗矩は立ち上がって、直盛の肩をつかんだ。
「そんなにあの男が惜しかったのか、直盛」
「そうだ」
直盛は宗矩の手をつかみ、そっとどかした。
「わたしはかれのために、大坂城から千姫を連れ出した。顔にやけどを負った」
直盛はかれと同門であった。
共にキリシタンであるがゆえに、かつて存在した宇喜多家で助け合い、現に、おりんの兄を逃がすことに協力している。
その後、関ヶ原では敵味方に分かれ、牢人となったが、直盛はずっとかれのことを気にしていた。
そうこうするうちに、大坂の陣となった。
このいくさ、徳川に敵対した者たちは始末されるだろう。
かつての関ヶ原で、石田三成がその首討たれたように。
だから直盛は大坂城から千姫を連れ出した。顔にやけどを負った。
「明石……掃部のために」
振り絞るように出た直盛の声。
それは、掃部の末路を知っているからだと、宗矩は確信した。
「……いつ?」
宗矩は直盛に、掃部がどうなったかを知ったのは、いつだと聞いた。
「大坂の陣のあと、ほどなく、そういううわさが聞こえて来ました」
掃部は落城のあたりから行方不明になっていた。
そのため、討たれたといううわさと、落ちのびたという話が両方聞こえて来て、直盛は事の真相を確かめるために必死だった。
「何しろ、秀忠さまから直々に、掃部を津和野藩に迎えること、許しを得たのだから」
それが、直盛の求めた褒美だった。
千姫救出直後に秀忠に拝謁した直盛は、それを約束してもらった。
かつて、関ヶ原の戦いで敗北し、改易された小野寺義道を津和野藩に受け入れた直盛らしい、実に男気にあふれる、褒美だった。
だから、千姫救出の裏の、家康の思惑など、気にもとめなかった。
それよりはと掃部の捜索に力を入れた。
しかし。
「どうも、井伊直孝どのが討ったらしい」
彦根藩主・井伊直孝。
秀忠の信頼は絶大で、秀忠がその死に際して、大老に任じたほどである。
その直孝が、大坂の落ち武者狩りをしていた際に掃部を発見し、速やかにその首を討った、と。
それは直盛が秀忠からの褒美の許しを得た、あとのことだった。
「許せません」
直盛はもはや震えることなく、それを語った。
「掃部はわが友。それを、このような」
いくさの中で討たれるのはいい。それは武士として当然のことだ。
だが、直盛が迎え入れるという約束をしたあとに。
落ち武者狩りで。
「討つというのは、あまりといえばあまりではないですか」
一方で異国へ渡ったとか、土佐の村へ逃げたとか、みちのくに落ちのびたとの話だった。
直盛は全て確かめた。
そのすべてがどれも信憑性に乏しく、仕方なく将軍に問いただすことにした。
折りしも、家康についての悔やみを述べる機会があった。
そこで。
「井伊が討ったと。将軍はそう言われた。情けない。そう思った」
直盛はせめてやけどを負わなければ、大坂に残って、そういうことを防いだのにと思った。
けれども、やけどは千姫を救うために負ったもの。
それは、お門違いだ。
「……かくして将軍は、わたしにとって大切な、同門にして友を討った。助けると言い置いて、その実、討った。なら、それ贖わせねばなるまい」
背信、許すまじ。
直盛は今この瞬間、最も秀忠が大切にしている者を狙うことにした。
それが。
「千姫さま、か」
「ああ」
直盛はため息をついた。
やはり、不本意だったのだろう。
この事件は、直盛が千姫に横恋慕したためと言われているが、直盛は五十歳、千姫は十九歳だ。むしろ、直盛の息子、平四郎の方が十九歳であり、つり合いが合う。息子の嫁にと望んだ方が、自然だ。
「ただ、息子はこのことに関係がない。ゆえに、わたしがねらっている、ということにしました」
「ということにしました、か」
やはり、最初から強奪する気はなかった、ということか。
そもそも千姫自身、やけどを負ってまで救ってくれた直盛に対して、恩人として敬意を抱いている。
坂崎直盛はそういう娘を、強奪するような為人ではない。
「……どちらにしろ、もう済んだことです」
直盛は刀を置いた。脇差も置いた。
「さあ、討ちなさい。やろうとしただけで、それは罪。それが、叛乱というものでしょう」
徳川幕府はまだ始まったばかり。最大の叛乱勢力、豊臣家を滅ぼしたものの、まだまだ叛乱予備軍の大名はいる。伊達家しかり、島津家しかり、福島家しかり……。
であれば、ここで一罰百戒。
討ったところで誰も異を唱えぬ、とっくに滅亡した宇喜多家の係累の坂崎家など、格好の見せしめである。
「こうなることは覚悟していました。さあ宗矩……」
「覚悟?」
今度は宗矩が刀を置いた。脇差も。
宗矩は立花宗茂から、直盛が掃部の行方を追っていた、と聞いた。
宗茂はこの時、陸奥棚倉を領しており、そこを直盛の放った忍びが通り、忍びの探った伊達藩の反応から察した。
「そして、わしは御伽衆として秀忠さまに仕えておる」
秀忠は関ヶ原の醜態を気にしてか、大坂の陣におけるおのれの「活躍」を誇大に語る傾向があった(実際には、軍師である宗茂が指揮統率したおかげで、大過なく戦えたわけだが)。
その時の秀忠はしこたま飲んでおり、「予は大坂で敵将の掃部を討った」と口走った。
同じ場に居た井伊直孝の態度から、ほんとうは直孝の功だと知れた。
掃部の行方を追っていた直盛が、これを知ったらどうなるか。
大乱の因になる。
それを危惧していた宗茂をよそに、直盛は江戸に下向し、宗茂がつかまえるより早く宗矩に会い、そのまま秀忠への謁見に臨んでしまった……。
「つまり覚悟ではない。坂崎どの、いや、直盛……おぬしは望んでいるのだろう、死を」
千姫を強奪するという計画。
だが、それは計画倒れで、どこからかその情報が洩れ、こうして幕府は素早く対応することになった。
となると、それは洩れたのではない。
洩らしたのだ。
なぜ、洩らしたのか。
「それは……朋友であり同門である掃部を救えず、死なせてしまったことという罪。救えることになりながらも、それを果たせなかったことへの罰」
だから、死を望んだ。
千姫はそのためのお膳立てに過ぎない。
「千姫さまにおかれましては、ほんとうに申し訳ありません」
「ならばなぜ、ひとりで死ななかったのか」
この時代、武士は自裁という手段を持っていた。
何かの間違いを犯した時の、責任の取り方の作法として。
だが宗矩は、その作法に則って、ひとりで死ねと言っているわけではない。
確かめたかったのだ。
直盛は、自裁ができないといことを。
「……それはできません」
直盛の武骨な手が、懐中をまさぐる。
その中から出て来た手には、あるものがあった。
「この十字架に誓った、神への信仰がありますので」
鈍色に輝く十字架。
それはかつて、十兵衛の妻・おりんが兄の行方を追う際に入信した直盛にとって、これまでの心の支えだった。
そして。
「われらキリシタンは自裁はご法度。細川ガラシャしかり、小西行長しかり……」
細川ガラシャも、小西行長も、関ヶ原という出来事の中、死を余儀なくされた。
ただし、キリシタンという信仰があるため、他者に寄って殺されるという死を迎えていた。
「ならばわたしが死ぬには、誰かの手を借りねばならない。宗矩、おぬしは私が知る限り、最高の剣士だ」
最高の勇を誇る者に、討たれるというのは、武士として最高の栄誉だった。
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