淋しいあなたに〜1%の確率で出会った彼に愛されています〜

名木雪乃

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26 番外編① 夏の夜のふたり〜フワフワな癒し〜

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 葉摘とコウが付き合い始めて、少しした頃のお話。コウのマンションで過ごすことの多い二人。そこには白くて可愛らしいフワフワのペットがいて……。

ーーーーーーーー

「これ見て、葉摘さん! 【☆おばけ屋敷リニューアルオープン記念企画☆夏の夜の縁日スペシャル イン サニーランド~クイズに答えてお宝ゲット!】あの日のリベンジをしに行きましょう!!」
「え!?」

 えーっと、コウさん、あなた子どもですかっ!

 それは、金曜日の夜、コウさんのマンションのリビングルームで、夕食後くつろいでいる時のこと。

 大人のコウさんがウキウキした様子で眼鏡をクイッと直すと、楽しそうにノートパソコンの画面を見せてくるんですけど。マウスを操作する手の甲の上には、ペットのセキセイインコのチュウヤくんが乗っていて。そして次の瞬間、何を思ったかチュウヤくんはキーボードにガツッと爪の音をさせながら着地。カツカツ音をさせながらさらに歩き回る。

「あ!! おい! パワーキー押すな、チュウヤ~」

 画面が真っ暗になって慌てるコウさんに、まん丸のつぶらな瞳をキョトンとさせるチュウヤくん。

 ふふ。可愛らしい。

 ITインコ(笑)のチュウヤくんは、パソコンのマウスやキーボードがお気に入り。マウスをコツコツしたり、キーボードに飛び降りてキーを押したりの操作はおてのもの。たまにキーボードの隙間に爪を引っ掛けてジタバタするから、怪我しないか心配なんですけどね。

「もう、チュウヤは肩に乗ってて」

 コウさんが、チュウヤくんの足元に指を寄せると、インコの本能でチュウヤくんがトンと指に乗る。そして肩に移動させるとすんなり肩の上へ。大人しく肩にいるのは束の間。器用にコウさんの頭の上に乗ったかと思うと、眼鏡に乗り移る。チュウヤくんは、逆さになったまま、眼鏡のレンズ越しに、コウさんの顔を必死に覗き込んでいる。
 
『ピイ、ピイ!』
「なに? チュウヤ?」

 ふふ。このふたり、良いペア。

「チュウヤ、前が見えない」

 コウさんが、チュウヤくんを避けようとすると、『ビービー』と叫びながらバサバサと飛び上がり、今度は私の頭にチョンと乗ってきた。

「チュウヤ、葉摘さんにうんちするなよ~。これね……」

 パソコンの画面を復旧させたコウさんから見せられたイメージ画像から想像すると、確かに楽しそう!
 遊園地の中にお祭りみたいに露店が並んでいて、浴衣姿のカップルがたくさん写っている。背景にはカラフルなイルミネーションの綺麗な観覧車。

 頭の上にいたチュウヤくんが私の肩に降りて来た。フワフワの天然羽毛に癒されようと、横を向いてチュウヤくんに頬を寄せる。全体的に白くて、おなかのあたりだけラベンダー色のチュウヤくん。珍しい配色のイケメンさん。この独特の匂いもたまらなく好き。チュウヤくんは私にもすぐに馴れてくれて、怖がらずに触らせてくれる。

 そんなチュウヤくんが可愛いくて、ほわっとなる。
 私の右の頬には天然羽毛、左にはそれに張り合うように私の耳を食む温かな……唇!?

「コ、コウさんっ……!?」

 贅沢だけど、あまりの心地良さに身が持たない。

 コウさんは男性らしい包容力のある色気で私を翻弄するときもあれば、無邪気な子どものように私の母性本能? をくすぐってくるときもある。いろんな表情を見せてくれて、とてもドキドキさせられる私の年下の彼。

 奇跡的にこの恋と、コウさんとめぐり会って、お互い好きになって、お付き合いして、日々幸せをかみしめている。

 コウさんと最初のデート(当初はお悩み相談)で、この遊園地に行ったとき、お化け屋敷が休館で入れなかった。彼は、それがとても残念だったみたい。あの時は、怖がる私がコウさんの腕にギュっとしがみつくというシチュを期待したらしい。
 もう、何度もそれ以上の触れ合いはしているから、今さらそれ? とは思うんだけど。そうじゃないの?
 と、聞いてみたら、

「ソレとコレはちょっと違うんですよね。オレの夢っていうか、ダメですか?」
「ダメなんてこと全然ない。私も行ってみたいです、夜の遊園地!」
「やった。じゃあ7月30日の夜に行きましょう。忘れないでくださいね。絶対ね!」
 
 何度も念を押された?

 コウさんはチュウヤくんを私の肩から指に乗せて連れ去ると、

「やっぱりうんちしたな~コイツ。すみません、葉摘さん」と私の肩のほうに付着していた小さいその置き土産をティッシュで取ってくれた。

「いいえ、気にしてませんから」

 インコの糞は、無臭だ。早めに取り除けば染みにもならないので、その点では飼いやすいかも。

 コウさんは、チュウヤくんの頭や嘴の周りを撫で回し始める。最初はちょっと嫌そうにしていても、結局抗えずにされるがままになって、まぶたが半開きになったり閉じたり。
 とっても気持ち良さそう。

「チュウヤが羨ましい?」

 コウさんにニヤニヤされてしまった。

「っ!? そ、そうじゃなくて、チュウヤくんが可愛いいなあって」
「まあまあ。葉摘さんは、あとでね♡」
「……っ!」

 恥ずかしい。羨ましそうな顔に見えたの?

 慌ててパソコンの画面に目線を戻す。

 私たちは週末になると、たいがいはコウさんの部屋を訪れて、ふたりでのんびり料理を作ってゆっくり食事をしてくつろぐ。そして、話をしたりテレビやネットを観たり、お互い好きな本を読んだり、触れ合ったりしていた。
 コウさんの部屋に行くことが多いのは、チュウヤくんが寂しくないように。そうでなくても、昼間はひとりでお留守番が多い。本来鳥さんは早寝早起きだけど、チュウヤくんはコウさんが仕事から帰って来てから放鳥するから、完全に夜更かしインコになっている。できれば元気に長生きして欲しい。

 コウさんが開いてくれていた検索画面をスクロールする。
 夜の九時までオープンしているらしい。
 入口でクイズの書かれたカードを渡されて、答えが当たったら素敵なプレゼントが貰えるらしい。

 ちょっと気になるけど。そうだ、この遊園地のおばけ屋敷の建物は、そういえば石作りの古い洋館だった。珍しい洋風仕様でおしゃれ。それだけでも確かにちょっと興味が引かれる。

 ガタンと音がして、チュウヤくんは満足したらしく、自ら自分のテリトリーである籠の中に入ったようだ。カリカリと餌を啄む音も可愛い。

 チュウヤくんとの触れ合いタイムが終わると、今度は私たちの……夜が始まる
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