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寒い中でバスを待ちたくない
しおりを挟む厚着をしていると言ってもバスを降りると体感気温が下がり、肌寒さを感じてしまう。
銭湯のぽかぽか感はすでに感じられない。 銭湯の温もりとバスの暖房が恋しくなりながら行きつけの書店、【岳人書店】
自動ドアが開いて一歩足を踏み入れると書店の真ん中に大きなグランドピアノが一台。
出入口のすぐ脇、カウンターテーブルのレジでお金を数えている白髪の店員と若いアルバイトの店員が何かの作業をしている中、取り寄せてもらったスコアブックを二冊受けとる。
肩掛けカバンに紙袋に包まれたスコアブックをしまうと白髪の店員に一言、「ピアノお借りします」 と一言断りをいれると「楓が喜ぶからお願いします」
とニッコリと微笑む。
そう、昔はこの書店の隣には店長の奥様が開いていたピアノ教室があった。
詳細は省くけど想像の通り。奥様が亡くなり、それを期に書店を改装。
大きなグランドピアノはそのまま店内へと運ばれピアノの心得がある人の手によりいつも誰かに演奏がされている。
特にあたしは、このピアノ教室で凄く頑張っていたということもあり、その実力を知る店長が是非にとあたしに頼んできて以来、ここにくるたびにピアノを演奏させてもらっているのだ。
帰りのバスまでの時間がかなりあるので、その間の時間潰し。
否、時間潰しといったら水野先生に申し訳ない。
本気を出してしまうと閉店を過ぎても演奏してしまうので、全力にならない程度に……。
こんな寒い中外で次のバスを待つよりも、暖の効いたここでそのまま楓先生に捧げるレクイエムをひとつ。
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