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2.偽物以上本物未満
8.一緒の時を
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朝、おばあちゃんが言った。
「今日は雪が降るみたいだから温かくしていくのよ」
テレビの天気予報も雪マーク。
そっか。もうそんな季節なんだ。
私は部屋に置いたままになっていたコートを羽織って、玄関のドアをあける。
「わぁ……」
思わず声が漏れた。外は少し曇っていて、ちらちらと雪が舞っている。そういえば初雪か。
少し浮かれた気分のまま私は一歩、学校への道を歩き出した。
「雪が降るとテンションが上がるのって私だけかなぁ?」
生徒会室へと移動しながら、私は神戸くんに聞いた。
「そんなことは無いと思いますよ。……ほら、あれを見てください」
そう言って彼はある一点を指さす。そちらに視線をやると……。
「うぉぉぉぉ! 雪だ! 積もれぇぇぇぇぇ!!」
妙にテンションが高い男子生徒が居た。
「……って大隅くんじゃん」
「ああいうのが今日は他にもちらほらと」
神戸くんはすれ違いざま涼しい顔で、大隅くんを一発殴った。
「黙れ」
「何しやがる!!」
くってかかる大隅くんを神戸くんはスルー。
「行きましょう」
わぁ。ブラックモード降臨。ちょっと可哀そうだ……。
そう思いながら、神戸くんのあとを追った。
ちなみに神戸くんは寒いのが苦手らしい。だから不機嫌だったんだね……。
さて、生徒会室で私はいつものように生徒会長と向き合っていた。
「……今日は少し元気がいいな」
「は……? いきなり何を言い出すんですかね」
私の持ってきた書類に目を通しながら、突然吉野蒼司が言った。
「ああ、そうか。天気のせいか」
書類から顔を上げ、窓の方を見る。そして私の方に向き直り。
「犬……いや、それはともかく」
「誰が犬みたいですって?」
まったく誤魔化せてませんからね。
蒼司はひとつ咳払いをする。
「さて、要望書は読ませてもらった」
急に話が真面目な方に戻ってきて、私もあわてて背を正す。
「罰則の緩和……なぜ今、こんな話を持ち出す」
「自分の胸に手をあてて聴いてみたらいいんじゃないの?」
「……見回りを強化したせいか」
「分かってんじゃない。今時ケータイ持ち込み禁止なんて……たぶん全校生徒の8割が知らなかったわ、この校則」
生徒会はここ数日、急に校則違反の取り締まりを厳しくした。
生徒手帳にのっとった厳格な取り締まり。ケータイのように、今までは少し目を瞑ってもらってた違反も見逃してくれなくなってしまった。と、まあそこまではいい。
問題はその罰則。前は注意だけで済んでいたんだけど、急に反省文が課せられるようになった。
「学校として間違ったことはしていないだろう」
「じゃあ、この『タイツは40デニール以上』ってのも測るっていうの!? どうでもいいでしょ!」
「……そういった不必要な校則は次回の生徒総会で改正するつもりだ。今回の取り締まりはその準備にあたる」
「罰則は?」
「無論そのままだ」
……堂々巡りだ。
相変わらず頑固というか、融通が利かないというか。いつにもまして取り付く島もない。
「会長、そろそろ委員会の時間が……」
恐る恐る、といった様子で私達の間に一年生の子が入ってくる。怖がらせて申し訳ない。
「もうそんな時間か……すまないが大和さん、そういうことで」
蒼司は席を立つと、私に要望書をつきかえし生徒会室を出て行ってしまった。
「ってちょっと! まだ終わってないんだからね!!」
呼びとめても蒼司は振り返りもしない。
私はもう一度要望書を机の上に置き、生徒会室を後にした。
会議室に戻り、改めて生徒手帳を読んでみる。
「……なんで急に厳しくしたんだろう」
新学期でもないこの時期に急に取り締まりを厳しくするのは不自然だ。
それに、蒼司の言っていた「準備」というのは怪しい気がする。
「うー……」
時計を見ると、下校時刻を大幅に過ぎていた。要望書の件はもう一度生徒会室に行くことにして、今日は切り上げて帰ろう。そう思って席を立つ。
ピピピ。
「……蒼司?」
ケータイが着信を知らせる。蒼司からメッセージが届いていた。
『仕事は終わったか』
なんだ急に。
『終わったけど』
『君に用がある。下駄箱で待っていてくれ』
あれ?
こういう呼び出しはたいてい「生徒会室に来い」が多いんだけど、今日は違うみたい。
私はとりあえず戸締りをし、会議室を出た。
雪は、積もるか積もらないか絶妙な量を保って降り続いている。気温もすっかり下がり、完全に冬の気候だ。
しまった。会議室に手袋、置いてきたかも。下駄箱まで来てから気がついた。
取りに戻ろうか、そう思って上履きにもう一度履き替えようとしたそのとき。
「待たせた」
蒼司がやってきた。
……まあいっか。一日くらい無くても大丈夫でしょ。
「で、用事って? 仕事?」
「帰るぞ」
「は?」
蒼司はさっさと靴を履き替え、外に出て行ってしまう。
「ちょっと!」
あわてて追いかけて、蒼司に声をかける。
「まずいんじゃないの!? 一緒にいるところ見られたら」
「こんなに遅くになったんだ、もう誰もいないだろう。雪も降っているし」
そういう問題?
「……君に渡したいものがあったんだ」
「渡したいもの? 何?」
「あとで渡す」
えー……気になる。
蒼司はアパートのほうではなく、私と同じ方向に歩いていく。今日は実家に戻るのだろうか。
しばらく他愛のない会話をしながら並んで歩く。
こうして蒼司と一緒に歩くのも慣れてきたかもしれない。一年前の自分が見たら驚くだろうなぁ。
そんなことを思って歩いていると、冷たい風が吹いた。……寒い。
やっぱり手袋取りに戻ればよかった。指の先が冷たい。思わず手をすり合わせる。
「……手袋は」
私の手を見て、蒼司が言った。
「学校においてきた」
「……」
呆れたような目を向けないで欲しい。自分でもやっちゃったなぁって思ってるんだから。
「寒いならこれを使え」
そう言って蒼司は自分のしていた手袋をはずし、私に差し出す。
なんだか優しいぞ……。一周回ってむしろ怖い。
「いい。大丈夫」
「とても大丈夫そうには見えないが」
「大丈夫」
手袋を押し返す。こいつに貸しを作ることは私の厄介なプライドが許さなかった。
蒼司はそれにイラっとしたのか、負けじとまた手袋を押し付けてくる。
「使え」
「いい」
「使え」
「いいってば!」
何度目かのやり取りのあと、蒼司はようやく手袋を自分の手にはめた。
私たちは何をやっているのだろうか……。ただ歩いていただけなのにどっと疲れた。
手袋をはめた蒼司はというと、自分の手をじっと見て、それから私の手をじっと見てつぶやいた。
「こうすればいい」
蒼司は私の手をつかむと、そのまま彼のコートのポケットに押し込んだ。
……は?
「な、なにしてるの!?」
「こうすれば君も多少温かい」
それはそうなんですけど!
悔しいことに、冷えた指先はポケットと蒼司の熱で温まっていく。
まるでカップルみたいなことを……。いや、一応カップルなんだけど。
さっきまで寒かったのが嘘みたいに、体中が暑い。きっと恥ずかしさのせいだ。
「……ひとつ聞いてもいい?」
「なんだ」
思わず気になっていたことを口に出してしまう。
「これは計算? 天然?」
「何を言っているんだ君は」
……あー。これは天然だわ。
そうだ。吉野蒼司が計算なんてするはずなかった。って、結構こいつ、恐ろしい男なんじゃ……。今更そんなことに気がついた。
ろくな抵抗もできないまま(正確にはしないまま)、私は気がつけば家の前にいた。
蒼司の手が離れる。
「……そういえば、渡したいものってなんだったの?」
「ああ……忘れていた」
忘れてたのか。
蒼司は鞄の中から小さなリボンのかかった箱を取り出した。
「これを君に」
「……誕生日じゃないよ?」
「知っている。……そうではなくて、君にはもらってばかりだからお礼をしたくて」
「あけてもいい?」
蒼司がうなずいたので、箱を開けてみる。中にはシンプルなデザインの腕時計が入っていた。
「……こんな高そうなやつもらえない!」
「高価なものではないから安心しろ。昼食や誕生日のプレゼント……そのほか色々と含めた分だと思ってくれ」
そうは言っても、あまりにも釣り合っていないような。
「やっぱ返品……」
「返品は受け付けん。では」
ぐっ……先に言葉を封じられた。
蒼司はすでにいなくなっていた。……仕方が無い。もらえるならもらっておこう。
私はそう決めて、家の中に入った。
「そういえばどうして時計なんだろう?」
*
後日、吉野家。
「蒼司」
「おばさ……じゃなくて麻里さん。戻ってきたんですか?」
蒼司が実家の自室で課題をやっていると、麻里がやってきた。相変わらず使用人の格好をしている。
「あんた前に、朱莉ちゃんにプレゼントするって言ってたけど渡せたわけ?」
顔が完全に面白がっている。蒼司はため息をつきたくなる気持ちを抑えて、言った。
「その節はアドバイスありがとうございました。渡しましたよ」
「ちなみに何渡したの?」
「腕時計です。……あまり高価なものではないですが」
蒼司が答えると、麻里は一瞬驚いたような顔をした。
そしてまた、ニヤニヤと笑う。
「……そっかぁ。あんた、ホントに朱莉ちゃんにベタ惚れね!」
「は?」
この叔母は何を言い出すのだろうか。
蒼司が意味が分からん、と麻里を見ると、彼女はいたずらっぽく笑って教えた。
「腕時計は……『一緒の時を過ごしたい』。独占欲の表れよ」
「え……」
それだけ言って、麻里は片手を上げて去っていった。
「独占欲、か……」
残された蒼司は、物思いにふける。
*
「今日は雪が降るみたいだから温かくしていくのよ」
テレビの天気予報も雪マーク。
そっか。もうそんな季節なんだ。
私は部屋に置いたままになっていたコートを羽織って、玄関のドアをあける。
「わぁ……」
思わず声が漏れた。外は少し曇っていて、ちらちらと雪が舞っている。そういえば初雪か。
少し浮かれた気分のまま私は一歩、学校への道を歩き出した。
「雪が降るとテンションが上がるのって私だけかなぁ?」
生徒会室へと移動しながら、私は神戸くんに聞いた。
「そんなことは無いと思いますよ。……ほら、あれを見てください」
そう言って彼はある一点を指さす。そちらに視線をやると……。
「うぉぉぉぉ! 雪だ! 積もれぇぇぇぇぇ!!」
妙にテンションが高い男子生徒が居た。
「……って大隅くんじゃん」
「ああいうのが今日は他にもちらほらと」
神戸くんはすれ違いざま涼しい顔で、大隅くんを一発殴った。
「黙れ」
「何しやがる!!」
くってかかる大隅くんを神戸くんはスルー。
「行きましょう」
わぁ。ブラックモード降臨。ちょっと可哀そうだ……。
そう思いながら、神戸くんのあとを追った。
ちなみに神戸くんは寒いのが苦手らしい。だから不機嫌だったんだね……。
さて、生徒会室で私はいつものように生徒会長と向き合っていた。
「……今日は少し元気がいいな」
「は……? いきなり何を言い出すんですかね」
私の持ってきた書類に目を通しながら、突然吉野蒼司が言った。
「ああ、そうか。天気のせいか」
書類から顔を上げ、窓の方を見る。そして私の方に向き直り。
「犬……いや、それはともかく」
「誰が犬みたいですって?」
まったく誤魔化せてませんからね。
蒼司はひとつ咳払いをする。
「さて、要望書は読ませてもらった」
急に話が真面目な方に戻ってきて、私もあわてて背を正す。
「罰則の緩和……なぜ今、こんな話を持ち出す」
「自分の胸に手をあてて聴いてみたらいいんじゃないの?」
「……見回りを強化したせいか」
「分かってんじゃない。今時ケータイ持ち込み禁止なんて……たぶん全校生徒の8割が知らなかったわ、この校則」
生徒会はここ数日、急に校則違反の取り締まりを厳しくした。
生徒手帳にのっとった厳格な取り締まり。ケータイのように、今までは少し目を瞑ってもらってた違反も見逃してくれなくなってしまった。と、まあそこまではいい。
問題はその罰則。前は注意だけで済んでいたんだけど、急に反省文が課せられるようになった。
「学校として間違ったことはしていないだろう」
「じゃあ、この『タイツは40デニール以上』ってのも測るっていうの!? どうでもいいでしょ!」
「……そういった不必要な校則は次回の生徒総会で改正するつもりだ。今回の取り締まりはその準備にあたる」
「罰則は?」
「無論そのままだ」
……堂々巡りだ。
相変わらず頑固というか、融通が利かないというか。いつにもまして取り付く島もない。
「会長、そろそろ委員会の時間が……」
恐る恐る、といった様子で私達の間に一年生の子が入ってくる。怖がらせて申し訳ない。
「もうそんな時間か……すまないが大和さん、そういうことで」
蒼司は席を立つと、私に要望書をつきかえし生徒会室を出て行ってしまった。
「ってちょっと! まだ終わってないんだからね!!」
呼びとめても蒼司は振り返りもしない。
私はもう一度要望書を机の上に置き、生徒会室を後にした。
会議室に戻り、改めて生徒手帳を読んでみる。
「……なんで急に厳しくしたんだろう」
新学期でもないこの時期に急に取り締まりを厳しくするのは不自然だ。
それに、蒼司の言っていた「準備」というのは怪しい気がする。
「うー……」
時計を見ると、下校時刻を大幅に過ぎていた。要望書の件はもう一度生徒会室に行くことにして、今日は切り上げて帰ろう。そう思って席を立つ。
ピピピ。
「……蒼司?」
ケータイが着信を知らせる。蒼司からメッセージが届いていた。
『仕事は終わったか』
なんだ急に。
『終わったけど』
『君に用がある。下駄箱で待っていてくれ』
あれ?
こういう呼び出しはたいてい「生徒会室に来い」が多いんだけど、今日は違うみたい。
私はとりあえず戸締りをし、会議室を出た。
雪は、積もるか積もらないか絶妙な量を保って降り続いている。気温もすっかり下がり、完全に冬の気候だ。
しまった。会議室に手袋、置いてきたかも。下駄箱まで来てから気がついた。
取りに戻ろうか、そう思って上履きにもう一度履き替えようとしたそのとき。
「待たせた」
蒼司がやってきた。
……まあいっか。一日くらい無くても大丈夫でしょ。
「で、用事って? 仕事?」
「帰るぞ」
「は?」
蒼司はさっさと靴を履き替え、外に出て行ってしまう。
「ちょっと!」
あわてて追いかけて、蒼司に声をかける。
「まずいんじゃないの!? 一緒にいるところ見られたら」
「こんなに遅くになったんだ、もう誰もいないだろう。雪も降っているし」
そういう問題?
「……君に渡したいものがあったんだ」
「渡したいもの? 何?」
「あとで渡す」
えー……気になる。
蒼司はアパートのほうではなく、私と同じ方向に歩いていく。今日は実家に戻るのだろうか。
しばらく他愛のない会話をしながら並んで歩く。
こうして蒼司と一緒に歩くのも慣れてきたかもしれない。一年前の自分が見たら驚くだろうなぁ。
そんなことを思って歩いていると、冷たい風が吹いた。……寒い。
やっぱり手袋取りに戻ればよかった。指の先が冷たい。思わず手をすり合わせる。
「……手袋は」
私の手を見て、蒼司が言った。
「学校においてきた」
「……」
呆れたような目を向けないで欲しい。自分でもやっちゃったなぁって思ってるんだから。
「寒いならこれを使え」
そう言って蒼司は自分のしていた手袋をはずし、私に差し出す。
なんだか優しいぞ……。一周回ってむしろ怖い。
「いい。大丈夫」
「とても大丈夫そうには見えないが」
「大丈夫」
手袋を押し返す。こいつに貸しを作ることは私の厄介なプライドが許さなかった。
蒼司はそれにイラっとしたのか、負けじとまた手袋を押し付けてくる。
「使え」
「いい」
「使え」
「いいってば!」
何度目かのやり取りのあと、蒼司はようやく手袋を自分の手にはめた。
私たちは何をやっているのだろうか……。ただ歩いていただけなのにどっと疲れた。
手袋をはめた蒼司はというと、自分の手をじっと見て、それから私の手をじっと見てつぶやいた。
「こうすればいい」
蒼司は私の手をつかむと、そのまま彼のコートのポケットに押し込んだ。
……は?
「な、なにしてるの!?」
「こうすれば君も多少温かい」
それはそうなんですけど!
悔しいことに、冷えた指先はポケットと蒼司の熱で温まっていく。
まるでカップルみたいなことを……。いや、一応カップルなんだけど。
さっきまで寒かったのが嘘みたいに、体中が暑い。きっと恥ずかしさのせいだ。
「……ひとつ聞いてもいい?」
「なんだ」
思わず気になっていたことを口に出してしまう。
「これは計算? 天然?」
「何を言っているんだ君は」
……あー。これは天然だわ。
そうだ。吉野蒼司が計算なんてするはずなかった。って、結構こいつ、恐ろしい男なんじゃ……。今更そんなことに気がついた。
ろくな抵抗もできないまま(正確にはしないまま)、私は気がつけば家の前にいた。
蒼司の手が離れる。
「……そういえば、渡したいものってなんだったの?」
「ああ……忘れていた」
忘れてたのか。
蒼司は鞄の中から小さなリボンのかかった箱を取り出した。
「これを君に」
「……誕生日じゃないよ?」
「知っている。……そうではなくて、君にはもらってばかりだからお礼をしたくて」
「あけてもいい?」
蒼司がうなずいたので、箱を開けてみる。中にはシンプルなデザインの腕時計が入っていた。
「……こんな高そうなやつもらえない!」
「高価なものではないから安心しろ。昼食や誕生日のプレゼント……そのほか色々と含めた分だと思ってくれ」
そうは言っても、あまりにも釣り合っていないような。
「やっぱ返品……」
「返品は受け付けん。では」
ぐっ……先に言葉を封じられた。
蒼司はすでにいなくなっていた。……仕方が無い。もらえるならもらっておこう。
私はそう決めて、家の中に入った。
「そういえばどうして時計なんだろう?」
*
後日、吉野家。
「蒼司」
「おばさ……じゃなくて麻里さん。戻ってきたんですか?」
蒼司が実家の自室で課題をやっていると、麻里がやってきた。相変わらず使用人の格好をしている。
「あんた前に、朱莉ちゃんにプレゼントするって言ってたけど渡せたわけ?」
顔が完全に面白がっている。蒼司はため息をつきたくなる気持ちを抑えて、言った。
「その節はアドバイスありがとうございました。渡しましたよ」
「ちなみに何渡したの?」
「腕時計です。……あまり高価なものではないですが」
蒼司が答えると、麻里は一瞬驚いたような顔をした。
そしてまた、ニヤニヤと笑う。
「……そっかぁ。あんた、ホントに朱莉ちゃんにベタ惚れね!」
「は?」
この叔母は何を言い出すのだろうか。
蒼司が意味が分からん、と麻里を見ると、彼女はいたずらっぽく笑って教えた。
「腕時計は……『一緒の時を過ごしたい』。独占欲の表れよ」
「え……」
それだけ言って、麻里は片手を上げて去っていった。
「独占欲、か……」
残された蒼司は、物思いにふける。
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