素直じゃなくてもいいですか?

宮部ネコ

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第17話

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 そういえば、もう先輩とキスしてたんだっけ? ただ、たまってたのかと思ったから、ちゃんと考えてなかった。俺を好きだと思ってしたの? え? マジで?
 その時のことを思い出して、顔がほてったり、悪寒がしたりしてたら、先輩に言われた。
「何? 時間差?」
「先輩が変なこと言うから」
「瞬太は無防備過ぎるんだよ。もっと気を付けろよ」
 そんなつもりはないのだけど、前に襲われそうになったことを思い出し、慌てて頭から追い払った。
「ちょっと早いけど、夕飯の店行く? 酒飲めないんだっけ?」
「飲めます。少しは」
「ビール嫌いなのに?」
「他のもの飲むからいいんです」
「ははは。俺はビール飲もう」
 先輩が何飲もうと勝手だけど、当てつけじゃないよね?
「あの、でも、さっきホットケーキ食べたから全然お腹空いてない」
「そういえばそうだったな」
 先輩はまたどうしようと悩み出したので俺は言った。
「いいです。先輩の家でも」
「人の忠告無視して」
「気を付けるので」
「は?」
「ちゃんと警戒して行くし」
「お前な」
 それに、本当は嫌じゃなかった。田所さんの時は吐きそうなほど嫌だったのに。原田先輩のこと好きなわけじゃないけど、でも。

「先輩ひとり暮らしなんですか?」
「いや」
 え? 何だ。家族いるのか。警戒して損したと思った。
「親父がいるけど、帰ってこないこともしょっちゅう。出張とか、女の家行ったりとか」
 うわっ。やばいこと聞いちゃった。
「お母さんは?」
「離婚したから親父だけ」
「そうなんですね」
 うちは両親そろってるから、よくわからない。
「まあ今日は確実に帰ってこないけど」
 先輩はニヤニヤとした顔で言う。
「別にいいです。自分の身は自分で守れますから」
 先輩はあっそと呆れた顔をした。
「じゃあ、宅飲みにする?」
「え?」
「スーパーとかで寿司買って」
「別に寿司にこだわらなくても何でもいいですよ」
「そう?」
 なんとなくそういう雰囲気になって、一緒に原田先輩の家に向かった。

 東上線はあまり使ったことない。西武池袋線と平行して走ってるから、使い道がないのだ。
 先輩の家は各駅しか止まらない駅のようで、途中の駅で通過待ちがあった。といっても、池袋から8駅だからだいぶ近いけど。
 うちは練馬区のぎりぎり端で、ほとんど西東京市だから、先輩の家より電車に乗ってる時間が長い。

 駅前のスーパーで買い出しをした。
 俺は缶チューハイ、先輩はビール。それに少し飲めると言ったらワインも買っていた。お金は例によって出させてくれなかったけど。
 まあ先輩みたいにアルバイトしてるわけじゃないし、親からの小遣いだけだけど。

 先輩の家は男の二人暮らしにしてはきれいだった。先輩は結構きれい好きのようだ。俺はあまり掃除は得意じゃないけど、汚くしてると姉貴に勝手に片付けられちゃうから、仕方なくなんとかしている。
 棚の中はごちゃごちゃだったりするけど。

 ちゃぶ台がある部屋に通され、そこに買ってきた食料を置いた。
「自炊とかするんですか?」
「たまにな」
 お父さんは家事はしてくれるけど、料理はしない人らしく、代わりに先輩がやってたとか。最近はあまり家に寄りつかないから自分のために作るくらいらしい。

 最初はお腹空いてなかったから、酒と簡単なつまみだけ食べていたら、いい感じに酒が回ってきた。
「瞬太、良かったら、酔った勢いで名前で呼んでよ」
 とか先輩が無茶なことを言い出した。
「呼びません」
「相変わらずの塩対応だな」
「それでもいいって言ったのは先輩でしょ」
「そういう意味じゃないと思うけどな。ま、いいけど」
 そもそも瞬太って呼ぶのも許可した覚えないのに。別に嫌ではないけど、なんとなく。なんとなくなんだろう。

 そんなこと考えてたら、俺のスマホの着信音が鳴って、驚いた。
「やば、姉貴だ」
 そういえば夕飯食べるって連絡してなかった。
「ちょっと、すみません」
 と言って廊下に向かおうとしたら、先輩が口を挟んできた。
「俺のうちいるとか言うなよ」
「え? はあ」
 言ったらまずいのかな?

 姉貴に夕飯食べるなら連絡してって言ってるでしょと怒られた。どこにいるかまでは聞かれなかったけど。
 サークルの打ち上げとか適当に言っておいた。
「原田君はいるの?」
 って聞かれてドキッとしたけど。まあ、一応と言って切った。
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