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ジャド嬢は……?

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「お父様、先ほど家に戻って参りました。この度はご心配をおかけいたしましたことを心からのお詫び申し上げます」

 すっと頭を下げた。まずは先制して申し訳ないと言う事を全面的に伝えておこう! 心配をかけたのは事実ですから。



「やっと帰ってきたか。殿下にも困ったものだ……リリアン話をしよう」


 あ! 怒っていないわ。バカ娘と言って罵られる事を覚悟していたのに。

 それになんだかお疲れの様子だわ。素直に従わないとね!


「はい」


 返事をするとお父様の執務室へ呼ばれることかとおもいきや、サロンに家族で集まることになった。執事長と侍女長と私付きの侍女マリーの3人がサロン内に控えている。


「体の具合はどうだ?」

「もうすっかりと元気になりました。転がり落ちた時にぶつけた箇所が少し痛んだだけです」


 もう痣などはないし、ドレスが衝撃を抑えてくれたようだ。その代わりにドレスが重くて沈んだそうだ……


「それは良かった。リリアンは殿下の事が嫌いなのか?」

 殿下と聞くと顔を赤く染めてしまう。お母様の前だけでなくお父様にも人前で口付けをされた事を言われるの……公開エロスよ。
 お母様は何故かにやついているし、兄様は機嫌が悪そうだし……

「嫌いじゃないです。命の恩人です」

「そうだな。今こうして元気に家族の前にいるのはフレデリック殿下が真っ先に池に飛び込みお前を助けてくれたからからに違いない。私はとても感謝している」


 人前で口付けをされたのにですか……お父様はお母様と違ってそのことに触れてはこない。


「はい」


「殿下は昔からリリアンを好きで婚約の打診をいただいたんだが、陛下や王妃様が言うようにもっと世の中を見て国の為、殿下の為にも少し時間を置いた方が良いのではないかと思った。婚約をするにはまだまだ心が幼いと思っていたからだ。それで殿下は留学をすることになったが、リリアンのお披露目会までには帰ってくると言った。そこでリリアンに求婚すると言っていたんだ」


 謎は全て解けた! 殿下のせいだったのね!

「なのにお世話になっていた留学先の国の王女に気に入られてしまって、断るのに大変苦労をされたようだ。国と国との問題でもあるから納得させるまでに時間が要したようだ」


 王女の誘いを断った? やっぱりバカじゃないの!

「殿下はそれほどまでにリリーと婚約をしたかったんだ。留学先からも手紙を貰いリリアンの様子を訪ねてきていたし、リリアンと婚約をさせて欲しいと必ず書いてあったよ。リリアンに黙っていた事は悪いと思うが、親としてはこんなに娘の事を思ってくれる相手はいないと思う」


 ……って数年間会ってもないのに婚約の話が進んでいたとは! 結婚は家の問題とは言えなんだか面白くない!


「それで子息達に会わせないようにしていたんだが、モントール公爵家のキリアン殿と親しくなって、ヒヤヒヤした。殿下も殿下でお前に求婚すると思っていたらまず婚約者候補にするなんていいおったから、断ってやろうかとも思った」

 はぁっとため息と共に説明を始めた。




 殿下が帰国する事がわかり、お父様他皆が喜んでいた。殿下が私を望んでいることは一部の人は知っていた。


 殿下は国にいなかった間も他国で執務もこなし外交もこなしていたのだそう。
 それで貴族達からの信頼も厚くて色々と相談されることも有り、マデリーンのお父様であるカサール侯爵がマデリーンの話をした所、それなら……と一旦殿下の婚約者候補にしておいて名を上げよう? って。

 それで向こうの国のマデリーンの相手に口添えすると言ったんですって! 

 マデリーンの相手の国にも短期留学へ行っていて相手を知っていたらしいの!


 東のミロー伯爵もセリーヌ様を婚約者候補にあげてもらって、王都近くの家との縁談を纏めたのだそう。
 これでミロー伯爵家も今後さらに事業が上手くいくと良いわね! 相手の家の子息とも仲良くなったみたいだし、ウィンウィンと言う事らしいわ。


 子爵家のゲラン様のお相手は真面目そうな伯爵家の子息なんですって! 少し露出が多かったドレスも生地が増えて貞淑な淑女のドレスへと変わったようだ。
 相手の方が他の男にゲラン様の肌を見られたくないんですって! 良い人捕まえたわね。

 ゲラン様も子爵の言いなりで着ていたドレスだと言っていたから、ホッとしていると手紙に書いてあったもの。


 あ! そう言えば大事な事を聞かないと……


「教えてくだされば良かったのに……ここまでは分かりましたが、ジャド嬢はどうなったのですか? お会いすることは出来ますか?」


 私の問題は置いといて、マデリーン他3人が幸せになるのならそれで良いけれど問題はジャド嬢よ!


「その事なんだが……ジャド伯爵令嬢も婚約を結ぶことになったようだ。相手は子爵家の嫡男でしっかりした家だ」


 ジャド嬢も婚約が決まった。これにはホッとした。誤解があったとは言え殿下の婚約者候補同士の醜聞は避けたいだろうから。

 その表情を見て、今まで黙っていた兄様が


「うちとしてはジャド伯爵に抗議をした。するとすぐに田舎から出てきて慰謝料の支払いをすると言ってきた。金の問題ではないがあのケチ伯爵がわざわざ娘のために王都へ出てきたことに驚いた。殿下としてはジャド伯爵令嬢に問題はあるとしてもやはり醜聞は避けたいようで、不幸な事故によりリリーが足を滑らせたと言うことになったんだ!」


 兄様によると、箝口令が敷かれ足元が悪くて私が体制を崩して転んだことになっているそうで、殿下が池に飛び込み私を助け、人工呼吸という名の口付け……をした部分のみが拡散されたんですって。

「リリーのことを守ってやれなくて悪かった」

 兄様に頭を下げられるなんて! きっと私がいない間お父様も兄様も大変だったんだろう。兄様の顔疲れているし……

「兄様……ありがとうございます」



 それにより殿下の株は急上昇。キリアン様は負けた。と呟いた? そうで前回の噂である【殿下vsキリアン様】の戦いは殿下に軍配が上がり終了となった。


 軍配が……って本人不在じゃないのよ! それに負けたって何? キリアン様に失礼じゃないーー!


「バカみたいな顔をしているが、お前がいない間大変だったんだ。一気に老けた気がする。リリアンは殿下と結婚するか、二度と結婚できないかの二択だ。王家からも正式に婚約の打診が来たから、うちとしては殿下と婚約する事をすすめる。何か色々と誤解がありすれ違っているようだが、話せば分かる。そのことに関しては関与したくない……自分で考えろ。ちゃんと人の話に耳を傾けろ」



 怒るのを諦めたみたい……それはそれで寂しい気分にさせるわね。自分で考えろ。だなんて……結婚するか、二度と結婚できないかだなんて……あっ。泣けてきた


「ぐすん……」


 





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