侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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婚約かぁ……

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「リリアン、殿下に返事はしたのか?」

 いつもはお母様に言われるのに今日は珍しくお父様に聞かれた。そして今は晩餐中で、家族みんながいる。


「……まだです」


「返事をそんなに待たせるものではない。どうしても婚約をしたくないと言うのなら早く言ってくれ。そうでないと王命が下るしれん。殿下は必ずリリアンの事を大事にしてくださる。気持ちがついていかないのも分かるが、お前のようなとぼけた令嬢がいいと言ってくれるもの好きもいるんだ」


 なんか良いこと言った風だったけれど、最後の一言! 余計なお世話よ!


「リリーはなんだかんだと殿下と仲良くしているから、もう気持ちは決まっているんだろう? リリーの性格なら嫌なら嫌だと言うだろう……」


 ……兄様は婚約した方がいいのかな。その方が家のためにも役立つものね……


「リリーが目覚めるまで殿下はずっとリリーの側にいたのよ。執務もおありだったのにリリーの近くで書類を読んでいたくらいよ。優しい方なのよ」


 それは感謝しかない。命の恩人だし……最近ちょっと優しいし。


「もう少しだけ時間が欲しいの」


 3人とも頷いていた。



 その後兄様の部屋をノックした。

「どうしたんだい? こんな時間に珍しいね」

「お話を聞いて欲しくて」

「いいよ。おいで」

 メイドにお茶を頼んで兄様の部屋でお茶をする事にした。

「話ってなんだい? わざわざ私の部屋に来るんだから父上や母上に聞かれたくないんだろう?」

 さすが兄様! 驚いた顔をしていると兄様が言った。

「私はね、リリーの一番の理解者でいたいと思う」

「兄様!」

 嬉しくて兄様に抱きついた。すると兄様も背中をポンポンと優しくさすってくれた。抱きついたまま話を切り出した。

「実はね王宮に行った時にジャド嬢と会って来たの、」

「は? なんで? 危険じゃないか! フレデリック殿下が良いと言ったのか?」

 べりっと身体を離された。

「ううん。ダメって言われたけど、泣き落としで会わせてもらったの。殿下は私の泣き顔に弱いから、作戦だったんだけど、」

「フレデリック殿下は変態なのか? 泣き顔が好きだなんて! リリーは笑っていた方が良い。それにしてもどこでそんな作戦を?」

「ジャド嬢のことはマデリーンと婚約者のニコラ様に相談したの」

「なんで私に相談してこないの? 心外だね」

 悲しそうな顔をする兄様。私はブラコンだけど兄様もシスコンなのよ! 可愛い子には旅をさせろと言うでしょう?


「ジャド嬢への罰は今回のことを口外しないことと、大人しく子爵家へ嫁ぐことだけにしておいて下さいね」

「それは、そうしてほしいとリリーの希望だからそうするけど私は納得してないからね。次、何かあったら庇う事はしないから」


「はい。もう大丈夫ですよ。ジャド嬢にはガツンと言ってきたの」

「リリーも成長したんだねぇ。昔は泣きながら兄様兄様と頼ってくれたのに、デビューも果たした事だし立派な大人だねぇ」

 と言いながら頭を撫でるのはよして!


「殿下との事も前向きに考えるから、もうちょっと待ってね」

「家のこととかは考えなくて良い。王家に睨まれても問題ないよ」

「ありがとう、兄様! 大好き」




******



「難しいです……」


 お母様のお陰で小さい頃からマナーだけは厳しく躾けられていたおかげで、マナーの授業では怒られる事はない。

 しかも昔からうちの屋敷には他国からのお客さまを招く事も多かったから、言葉も理解できるし話することも出来てしまう……

 今思えば英才教育じゃない!


「リリアン様。そんなことじゃ王太子妃として殿下をお支えできませんぞ!」


 歴史の勉強……大体の王国史は頭に入っているけれど……教科書と中身が異なる。


 覚えるだけなら、多分出来るだろう。でも理解に苦しむの。




 教科書は表向き。ここで学ぶものが事実なのね……3代前の陛下は、隣国と数十年揉めていたのに和平を結んでちょくちょく起きていた隣国との争いをストップさせた英雄のように未だ語り継がれている。


 ……現実はその類まれなる美貌に隣国の王女が惚れちゃって、一緒になれないのなら死ぬ! と、王女が自殺未遂をしてしまい、こちらに嫁ぐ代わりにそれならと和平を結んだんだとか……

 王女様は隣国の国民に人気があり、国王夫妻も溺愛していて、折れたのだそう……


 美形詐欺じゃない! しかも側室も含めて8人もの女性に囲まれて生活していたとか! 色情……


 中には執務ほったらかしで、公務も全て王妃様に丸投げしていた王様もいたんだとか! その時の王妃様が超優秀で、優秀すぎるが故にその他貴族も王妃様を頼りにしすぎたのだそう。

 その時王様は、自分好みに離宮を立てて趣味三昧の生活をしていたと書かれている。



 現在の陛下は王妃様だけで側室も妾もいないんだけど、これは表向き……じゃないよね? 執務もご自身でされているのよね?


 王室の闇を見た気がした……


「つ、疲れた……」

 ここは限られた物しか入ることのできない王室の図書館の一部。【王国史】の分厚い本を丸暗記している途中だった。

「知らないことってたくさんあるのね……」


「勉強中?」

「あ……殿下。ご機嫌よう」

「疲れた顔をしているね、どうしたんだい?」


 言っていいのかな。不敬罪にならないかな。

「…………」


 うーん。うーーん。眉を顰めて考える


「なに? 百面相でもしているの?」


「うーーーーん」

「深刻な問題?」

「……理想と現実が、その……」


 【本当にあった王国史】に目をやる


「あぁ、なるほど……私が思うにだけどね……その時その時の時代があって、その時代を過ごしている時はそれが普通? だったし、当たり前と言うか……それが正しかったんだと思う」


 チラッと開いたページを見て、殿下は

「3代前の陛下の時代は不治の病が流行っていて、生まれたばかりの子は生き残れなかったんだ……王女と側室が産んだ子供は15人と聞いているが、成人したのは5人だったと聞いている。側室の方もその後何人も亡くなった。その後は特効薬が出来て前陛下、私の祖父なんだけど、祖母との子は父や叔父、叔母など4人は元気に育って、側室などはいないし、父上も母上だけで側室も妾もいないよ! 母上って見た目は穏やかそうに見えてとても嫉妬深いから浮気なんてしたら即離婚と言うだろうから父上に女性の影はない。父上も母上だけを愛している」


「そう言う理由があったんですね」

 側室ばかりでハーレム状態だなんて辛いだけだもの。女の戦いって……むりむり!


「教育係も意地が悪いな……まずよくないところを見せてから説明しようとしているんだ。私の時と同じやり方だ。昔リリに求婚しようとした時に、私にも先祖と同じ血が通っているから浮気癖でもあって側室を何人も娶って、将来はリリを不幸せにするのではないだろうかと、悩んだ時期があったんだ。
 それで社会勉強のために他国へ留学に行った。でも私の心にはリリだけだったんだ。私が他所に女性を作ることはないと誓う。心配なら書面にして、この【本当にあった王国史】に付け足しておこう! 何かあっても後継は弟たちに頑張って貰えばなんとかなる!」


 時代背景と言われればその時代、その時代がある……今は今の時代に適したやり方があるもの。


「殿下には弟殿下がおられるのでしたね。わたくしお会いしたことがありませんでしたわね」

 実際には見たことはあるけれど、お話はしたことが無い。

「そうだね。私が帰ってくるまではリリに会わせないように言っておいたから会ったことなくて当然だよ。でも紹介しないとおかしいよね……リリ今日はもう終わりだよね?」


 パタンと【本当にあった王国史】を閉じた


「えぇ。急ぎではありません」

 今は復習中だから焦ることはない。


「一緒に行って欲しいところがあるんだけど良い?」

 行って欲しいところ? どこだろう。

「うん」

 気になるから頷いた。


「私の弟を紹介するよ。名前くらいは知っているよね?」


「モーリス殿下とジェローム殿下ですわね」


 モーリス殿下は確か……14歳でジェローム殿下は10歳だったわね。







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