侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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知らなかった……

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「あのね……もう私のことを貰ってくれる人が殿下しかいないんだって。だから婚約することにしたの」

 ランチタイムにマデリーンに言った。


「あ、そうなんだ! おめでとう」


 あっさりね!


「何よ! もっとないの?」


「リリーが素直に人の話を聞いていたら、選択肢があったんじゃない? 公子様みたいな素敵な人も近くに居たのによく言うわ! 殿下もイケメンだし優しいしリリーのことずっと好きなんだったんでしょ? 将来リリーが王妃様になるのは……勉強頑張ってね! 恋愛については凄く落第点だけど、リリーは真面目だし殿下がリリーの為に頑張るわよ」


「だって! じゃぁどうしてキリアン様は友達になろうって言ったのよぉ! 友達は友達でしょう? 知らなかったんだもの。マデリーンとは友達だし大好きだけど恋愛にならないでしょ!」


「……でも、理解したんでしょう」


「うっ……うん」


「もし公子様が友達じゃなくて、一子息として求婚されていたら、リリーはどうしてた?」


「……分かんない……でもそうだとしたら……う、嬉しかったかも」


 顔が赤くなり恥ずかしそうに俯くリリアン


「そっかぁ……」


「もう、今更そんなこと聞いてどうするのよ……」


「そうねぇ……なんとなくよ。殿下と仲良くね」


「うん。なんとか頑張る」


「嫌いじゃ無いんでしょう?」


「うーーん。少し気持ち悪いわ。私の知らないところでずっとお父様と連絡を取っていて、婚約をするつもりとか言われても、意地悪で苦手だったのに好きとか言われてもピンとこないと言うか……結婚は家と家との事だけど、私も意固地にならずに殿下に向き合ってみるつもり」


「……気持ち悪いって。殿下にそれ言ったの?」


「……うん」

 はぁ。っとため息を吐かれた。


「殿下も不器用なのね。リリーもこれからはちゃんと殿下に伝えなきゃ、貴方達は前に進めないわね……」


「うん、そうみたい」



「悪役令嬢は卒業ね」



 マデリーンは、チラッとベンチの横の背丈くらいはあろう整えられている木の方を見て、リリアンと共に校舎に向かった。


******


「くそっ! 友達から始めたのが悪かったのか!」

 マデリーンはキリアンがいる事を知ってリリアンの気持ちを聞いた。なんとなく人影を感じてよく見ると黒い髪が見えたのだった。先客がいたのね……


 キリアンにはリリアンの事を諦めてもらわなくてはいけなかった。フレデリックに借りがあるし、親友には幸せになって欲しい。
 すこしぽやっとしたところはあるけれど、勤勉で貴族の何たるかは幼少期から鍛えられている。

 王宮で教育されて、将来は良き王妃になると心では思っている。リリアンが素直に教育を受ければ高位貴族の娘ゆえ、それらしくなるのは分かっている。

 キリアンには悪いと思いながらリリアンの気持ちを聞かせた。



「はぁっ」




 リリアンと会ったときに友達になろう。と言った自分を責めた。

 良い顔しようとしたからなぁ……友達なんぞにならずにあのまま話をしてから侯爵家に正式な求婚を願っておけば良かった……

 フレデリックは悪いやつでは無い。執務もまじめにするし、他国との関係も良好。お人好しすぎるのが玉に瑕だけど。



 リリアンがここまで友達と言う関係に固執するとは……リリアンの性格を把握できていなかったのが敗因だ……策に敗れた。それなら、友達と言ったが君のことを好きになったと告白するべきだった……!



 授業が終わり王宮へと行く。いずれ父の跡を継ぐ時のために学園の帰りは王宮へ行くことになった。今は父の手伝いと言う形になっている。

 さっきの話を聞いて脱力感が半端ない……




「よぉ、キリアン! 今から叔父上の手伝いか?」

 能天気な顔をしやがって! こっちは最悪な気分だ!


「まぁな!」

 悪態をついた。フレデリックめ!


「え! 何? 私変なことを言った?」


「八つ当たりだよ! おまえの顔を見たら腹が立ってきた」


「よく分からんが、それは悪かったな」

 ムカつく奴だ……


「婚約するんだって?」


「あっ! それか……なるほど。ようやくなんとか返事をもらえた」


「脅したのか?」


「失礼な……! 否定出来ない」


 ガクッと肩を落とすフレデリック


「くそ、もう少しだったのに」


 頭をぐしゃぐしゃとかきむしるキリアン


「あーー。リリは頑固なんだよ。これと決めたら話を聞かない時がある。自分の中でストップをかけるというか……昔からなんだけど、そこはよく無い所だ。教育係に話し上手なものがいてその辺は柔軟になってきた。上に立つものは色んな人の意見を聞く必要がある。そしてリリは素直だからおまえが友達と言った時点で友達止まりだったんだ」


「本当にムカつく野郎だな!」


「いやぁ……まさかおまえがリリに惚れるとは……流石に公爵家から正式に求婚されたら断れなかっただろう。もう少し私の帰りが遅かったらリリを奪われていただろうな。おまえは私なんかより令嬢に人気がある」


「おまえが国にいなかったからだろう。俺は忙しいんだ、そろそろ行くわ」


 片手を上げて歩き出した。


「あぁ。呼び止めて悪かったな」


 腹が立つけど臣下としたら、めでたい事なんだよなぁ……


「……フレデリック……少し……時間をくれ。まだ祝福する気持ちにはなれない」


「ん。おまえにも認められるように頑張るよ」


 もっと言いたい事はあったはずなのに、結局はフレデリックの幸せを願う自分もいる。

 歳も近く兄弟のように育ってきたから、言いたいことも言える。フレデリックは面倒見の良い兄のようなもの……幼い頃に女の子と遊んでいる所を偶々見たことがあった。


 誰だろう? フレデリックに声を掛けたら、女の子を背中に隠した。

 今更だけどその女の子はリリアンだったんだろう。独占欲の強いやつだ……


 フレデリックは物に対して執着しないやつだ。でも気に入ったものはボロボロになっても使い続ける。リリアンに対する気持ちもそれだ。病気だな、あれは。


 








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