38 / 65
知らなかった……
しおりを挟む「あのね……もう私のことを貰ってくれる人が殿下しかいないんだって。だから婚約することにしたの」
ランチタイムにマデリーンに言った。
「あ、そうなんだ! おめでとう」
あっさりね!
「何よ! もっとないの?」
「リリーが素直に人の話を聞いていたら、選択肢があったんじゃない? 公子様みたいな素敵な人も近くに居たのによく言うわ! 殿下もイケメンだし優しいしリリーのことずっと好きなんだったんでしょ? 将来リリーが王妃様になるのは……勉強頑張ってね! 恋愛については凄く落第点だけど、リリーは真面目だし殿下がリリーの為に頑張るわよ」
「だって! じゃぁどうしてキリアン様は友達になろうって言ったのよぉ! 友達は友達でしょう? 知らなかったんだもの。マデリーンとは友達だし大好きだけど恋愛にならないでしょ!」
「……でも、理解したんでしょう」
「うっ……うん」
「もし公子様が友達じゃなくて、一子息として求婚されていたら、リリーはどうしてた?」
「……分かんない……でもそうだとしたら……う、嬉しかったかも」
顔が赤くなり恥ずかしそうに俯くリリアン
「そっかぁ……」
「もう、今更そんなこと聞いてどうするのよ……」
「そうねぇ……なんとなくよ。殿下と仲良くね」
「うん。なんとか頑張る」
「嫌いじゃ無いんでしょう?」
「うーーん。少し気持ち悪いわ。私の知らないところでずっとお父様と連絡を取っていて、婚約をするつもりとか言われても、意地悪で苦手だったのに好きとか言われてもピンとこないと言うか……結婚は家と家との事だけど、私も意固地にならずに殿下に向き合ってみるつもり」
「……気持ち悪いって。殿下にそれ言ったの?」
「……うん」
はぁ。っとため息を吐かれた。
「殿下も不器用なのね。リリーもこれからはちゃんと殿下に伝えなきゃ、貴方達は前に進めないわね……」
「うん、そうみたい」
「悪役令嬢は卒業ね」
マデリーンは、チラッとベンチの横の背丈くらいはあろう整えられている木の方を見て、リリアンと共に校舎に向かった。
******
「くそっ! 友達から始めたのが悪かったのか!」
マデリーンはキリアンがいる事を知ってリリアンの気持ちを聞いた。なんとなく人影を感じてよく見ると黒い髪が見えたのだった。先客がいたのね……
キリアンにはリリアンの事を諦めてもらわなくてはいけなかった。フレデリックに借りがあるし、親友には幸せになって欲しい。
すこしぽやっとしたところはあるけれど、勤勉で貴族の何たるかは幼少期から鍛えられている。
王宮で教育されて、将来は良き王妃になると心では思っている。リリアンが素直に教育を受ければ高位貴族の娘ゆえ、それらしくなるのは分かっている。
キリアンには悪いと思いながらリリアンの気持ちを聞かせた。
「はぁっ」
リリアンと会ったときに友達になろう。と言った自分を責めた。
良い顔しようとしたからなぁ……友達なんぞにならずにあのまま話をしてから侯爵家に正式な求婚を願っておけば良かった……
フレデリックは悪いやつでは無い。執務もまじめにするし、他国との関係も良好。お人好しすぎるのが玉に瑕だけど。
リリアンがここまで友達と言う関係に固執するとは……リリアンの性格を把握できていなかったのが敗因だ……策に敗れた。それなら、友達と言ったが君のことを好きになったと告白するべきだった……!
授業が終わり王宮へと行く。いずれ父の跡を継ぐ時のために学園の帰りは王宮へ行くことになった。今は父の手伝いと言う形になっている。
さっきの話を聞いて脱力感が半端ない……
「よぉ、キリアン! 今から叔父上の手伝いか?」
能天気な顔をしやがって! こっちは最悪な気分だ!
「まぁな!」
悪態をついた。フレデリックめ!
「え! 何? 私変なことを言った?」
「八つ当たりだよ! おまえの顔を見たら腹が立ってきた」
「よく分からんが、それは悪かったな」
ムカつく奴だ……
「婚約するんだって?」
「あっ! それか……なるほど。ようやくなんとか返事をもらえた」
「脅したのか?」
「失礼な……! 否定出来ない」
ガクッと肩を落とすフレデリック
「くそ、もう少しだったのに」
頭をぐしゃぐしゃとかきむしるキリアン
「あーー。リリは頑固なんだよ。これと決めたら話を聞かない時がある。自分の中でストップをかけるというか……昔からなんだけど、そこはよく無い所だ。教育係に話し上手なものがいてその辺は柔軟になってきた。上に立つものは色んな人の意見を聞く必要がある。そしてリリは素直だからおまえが友達と言った時点で友達止まりだったんだ」
「本当にムカつく野郎だな!」
「いやぁ……まさかおまえがリリに惚れるとは……流石に公爵家から正式に求婚されたら断れなかっただろう。もう少し私の帰りが遅かったらリリを奪われていただろうな。おまえは私なんかより令嬢に人気がある」
「おまえが国にいなかったからだろう。俺は忙しいんだ、そろそろ行くわ」
片手を上げて歩き出した。
「あぁ。呼び止めて悪かったな」
腹が立つけど臣下としたら、めでたい事なんだよなぁ……
「……フレデリック……少し……時間をくれ。まだ祝福する気持ちにはなれない」
「ん。おまえにも認められるように頑張るよ」
もっと言いたい事はあったはずなのに、結局はフレデリックの幸せを願う自分もいる。
歳も近く兄弟のように育ってきたから、言いたいことも言える。フレデリックは面倒見の良い兄のようなもの……幼い頃に女の子と遊んでいる所を偶々見たことがあった。
誰だろう? フレデリックに声を掛けたら、女の子を背中に隠した。
今更だけどその女の子はリリアンだったんだろう。独占欲の強いやつだ……
フレデリックは物に対して執着しないやつだ。でも気に入ったものはボロボロになっても使い続ける。リリアンに対する気持ちもそれだ。病気だな、あれは。
23
あなたにおすすめの小説
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?
鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。
楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。
皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!
ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。
聖女はあちらでしてよ!皆様!
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます
れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦))
*ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。
*他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる