記憶を持ったままどこかの国の令嬢になった

さこの

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今度はなに?

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「お嬢様、お客様が来ていますがどうされますか?」

 翌日サムエルの家でサクラと遊んでいたら声をかけられた。

「エルマン様なら断って。なんだか怖いから」

 あれからすぐに大きな花束とお菓子が届いた。花束は部屋に飾るには大きすぎてエントランスに飾ってある。お菓子はボンボンだったからメイド達と食べた。素直に美味しかった。

「フェルマン・ベラール様が来ておりますが……。坊ちゃんが対応中です」

 お兄様が対応しているという事は行かなきゃダメなやつ。

「お嬢、行ってきたらどうだ?」
「……行かなきゃダメ?」

 サクラをぎゅっと抱きしめた。

「気になるだろ?」
「まぁ、ね」

 重い腰を上げて立ち上がった。今日も家着のワンピースだ。普通さ、急に来る? 手紙とか先ぶれとか出せないの? 礼儀がなってないのよね。ぶつぶつ言いながら応接室をノックした。

「失礼します」

 するとフェルマン、ソファから立ち上がり頭を下げた。なんだ、これは。デジャヴか? それとも口裏合わせて同じような対応をしているのか? と勘繰ってしまった。

「この前はすまなかった。決してもてあそんだわけではない」
 
 などと不穏なことを言うものだからお兄様が豹変した。お顔が怖い! さすがお父様血を引くわけだ。

「フェルマン殿、それはどういう事だい? うちの可愛いエマに何かしたのかい?」

 お兄様には説明したよね! フェルマンも言い方が悪い!

「私は何もされていません。されそうにはなったけれど、ムカっとして帰ってきたって説明しましたよね」
「されそうになったことが大問題なんだけど? エマはまだ16歳で冗談でも手を出そうとしてきた輩がいるってことだよな。そんなふしだらな真似をされたら怒っても良いし殴ってもいいんだ」

「暴力は反対ですよ、お兄様」
「エマの綺麗な手を汚すわけにはいかない。その時は僕がするから、」
「お兄様の手が汚れても嫌です!」

 お兄様の顔が怖いから手を握りしめた!

「エマは優しいね。僕の心配なんてしなくていいんだよ」

 私の手を優しく包むお兄様。いえ、心配させてください。私のせいでおかしくなっていくお兄様なんて見たくない!

「こんなに優しいエマ嬢に俺はなんてことをしたんだ……。いくらエルマンの相手を見つけるためだとしても。俺の美貌を前にしても変わらないその態度。むしろ俺を叱ってくれて……。こんな令嬢は初めてだ。エルマンの相手をとして全く問題ない」

 フェルマンもおかしなことを言ってきた。フェルマンは確かにイケメンだけど、前世の記憶もあるし色気はあるけど、好みじゃないのよね。色気を売りにしている男ってクズのイメージだしそんなのに騙されるほど若く? ないもの。現在のエマだけだったら逃げられなかったかもしれないけれど、過去の絵麻はマンガでの知識もあるから騙されないし、エルマンもフェルマンもクズだと思っている。女の子の気持ちをゲームのように扱うなんて最低の一言。マンガを見ていて思っていた。女の子達は何故フェルマンにホイホイとついていくのか? それはエルマンといても会話ができないからだよね? 会話のない食事会は地獄だった。いくら話し下手とはいえ少しは努力しろって。見合いの回数ばかり増やしていつか、成立するなんて思っていたのか。それにフェルマンが認めた女の子って、なにそれ? 

「エマは選ばれたいなんて思っていないぞ。一体何しに来たんだい?」

 それよ! 何しにうちに?

「先日の俺の態度についての謝罪を、」
「それについてはもう終わった話だ。すまないが用事がそれだけなら帰っていただけないかな。僕とエマはたまたま家にいただけで急に訪問されても困る」

「謝罪は受け入れます」

 受け入れたからおかえり願いたい。と意味も込めてにこりと笑った。

「君は優しいんだな、あんなことがあったのに。やはりエルマンの相手に相応しい」
「その件についてもお断りをするつもりですので、デルクール子息にお伝えください」

 この人が相応しくないといえばエルマンも引くでしょ。

「そうだ。謝罪を受け入れる代わりに、デルクール子息に私は相応しくない。と、言って下さい」
「エルマンを拒むのか?」
「はい、」
「それなら俺が君の相手に立候補してもいいだろうか!」

 は? エルマンとフェルマンいくら従兄弟だったとしても言動が突拍子もなくて恐ろしい。

「お断りします。デルクール子息にも急に訪問されても困ります。とお伝えください。ベラール子息、」
「フェルマンと」
「ベラール子息、私は軟派な男性は嫌いです。デルクール子息の相手を見極めるためとはいえ今まで何人もの令嬢に同じことをしてきたのでしょう? 何人もの令嬢を冷たくあしらったりなさったでしょう? 私もその1人にするおつもりだったのでしょう? 女性の気持ちを弄ぶような方は女性の敵です。これ以上迷いごとを言われるのなら警備を呼びますよ」

 うちに警備なんてそんな大それた人間はいないけれど……。

「これは本心で……君に惚れたんだ」

 惚れる要素どこにあった? 

「ベラール子息のおっしゃる意味、いえ本筋から外れてしまいましたね、」
「軟派な男ではないと必ず証明する。その時は真剣に考えてくれ」
「デルクール子息もベラール子息も私を困らせるのがお好きなようですね….」
「その間は俺たちのことを考えてくれるだろう?」

 ポジティブといえばポジティブ……はぁっ。

「ごめんなさい」

 頭を下げてお帰り願ったのだった。
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