13 / 74
やめた!
「お嬢、なんですぐ呼ばないんだ? 頬は腫れているし、口はキレて血が滲んでいるし、タイツが破れて血が出てスカートを汚して何があった?」
羅列されると暴力的だ。無言でいるとサムエルが怒った口調で言う。
「お嬢が口を閉ざしても、すぐに何があったか判明するからな。とにかく帰ろう」
「……お兄様は?」
「坊ちゃんには連絡しておいた。お嬢が通信機を使うなんてよっぽどのことだろうからな。坊ちゃんの事はいいからもっと自分を大事にしろ!」
エルマンから借りたハンカチをギュッと握りしめた。
「……怒っても仕方ないな。お嬢は悪くないんだろ」
サムエルが頭を撫でてくれると涙が溢れてきた。
「泣くな。と言いたいけれど思いっきり泣いてスッキリすればいい。お嬢頑張ったな……よしよし」
エルマンに借りたハンカチで涙を拭った。
「それにしても手をあげる令嬢ってどうなんだ? 罰が下るのも時間の問題だけど、お嬢は今後どうしたい?」
「どうせ友達もいないし、っく。何をしても文句を言われるんだからっ、1人でいる方がいい。でも……暴力は反対……痛いもん、だからあの令嬢達を見返す。勉強も負けない……」
「良いんじゃないか? 孤高の華とかあだ名をつけられたらかっこいいぞ」
サムエルは笑いながら言ったけど、絶対怒ってる。長年一緒にいるから分かる。
「俺はお嬢の“孤高の華”作戦には大賛成だな。綺麗な薔薇には棘があるもんだし魅力的だ。でもこれ以上危険な目には遭ってほしくない。だからすぐに俺を呼べ。どこにでもすぐ駆けつける。何のための連絡ツールなんだか……。これすっごい高いんだからな。使わないと勿体ないだろ?」
「うん。ありがとサムエル」
「お嬢と俺の仲だからな。もうすぐ兄貴も帰ってくる。お嬢のそんな姿見たら兄貴がキレるぞ?」
サムエルのお兄様はルシアンという。ルシアンは優しくてイタズラをしても笑って許してくれて、サムエルもルシアンも私は大好きで甘えられるお兄ちゃん的存在。
「ルシアンはいつ帰ってくるの?」
「いつ帰ってきてもおかしくないな。お嬢屋敷までは俺が抱きかかえていくから暴れるなよ」
「うん」
サムエルの首に腕を回した。お兄様が連絡をしていたみたいでお医者様が待ちかねていた。通信機ってスゴイ。
「頬が腫れていますね。冷やしておけば腫れは引くと思いますが口の中が切れていますので、熱いものや刺激のあるものは口にしない方がいいです。足と手は擦りむいた程度ですが、バイ菌が入ったら化膿するかもしれません。消毒をしますが染みますよ」
お医者様の言った通りすっごい染みる! 涙が出てきた。いったぁぁぁい。
「消毒は毎日するようにして下さい。痕が残らないよう傷口は清潔を保つように」
お医者様が帰っていった。明日は学園休もうかな。同情されても嫌だし。
「診察は終わったか? お嬢の好きなケーキを買ってきた」
サムエルが私を元気つけようとしてくれている。屋敷のみんなも心配しているようで口数が少ない。珍しい、それほど私の姿が衝撃的だったみたい。
「皆心配かけてごめん。学園に馴染めなくて友達ができないんだ。学園も楽しくないし変な噂とかたてられて、お兄様の足を引っ張っちゃって……学園で浮いてて、令嬢達に囲まれて……反論はしたんだけど、頬を打たれちゃって」
しんみりした空気なってしまった。こんな雰囲気にしたいわけじゃない。
「何が言いたいかって言うとね、私好かれようとするのやめる。お兄様も堂々としなさいって言ったもの。悪いことしてないのに悪者になってて、それなら悪いことして悪者になった方がよっぽど健全だよ。だからもうやめた! サムエル、ケーキちょうだい」
私の好きないちごケーキとナッツいっぱいタルトが用意されていた。ケーキを口に含むと血の味と混ざったけれど、甘くて美味しい。
「いっぱい泣いたから疲れちゃった。少し休もうかな」
「夕食の時間に迎えに行きます。ゆっくりお休み下さい」
エミリーまで深刻な顔をしていた。私が元気じゃないとみんなに迷惑かけるんだ。
******
~兄、キリアン視点~
サムエルから連絡が入った。エマを連れて先に帰る。まさか暴力を振るわれるとは思わなかった。エマが安全に学園生活を送るために、不安要素は消さなきゃならない。
「エルマン殿、どうだった?」
「目撃者を全て集めてきた」
「早かったですね。迷惑をかけます」
「いや。よく分からない理由でエマ嬢が傷つけられたのに何もしない理由がない。私のせいでもあるし申し訳ない」
エルマン殿はモテる。そのエルマン殿がエマにちょっかいをかけるとエマが虐められるという悪循環。エルマン殿は悪くないんだけれど、令嬢の嫉妬って怖いもんだ。
「エルマン殿は令嬢が苦手と聞いているのですがなぜエマを?」
「エマ嬢の……、目が」
「目ですか? 確かに大きくて宝石のように美しいですが、それだけで?」
「初めて私を見た時、何かを見通すような目をしてて普通の令嬢は私の中身ではなく顔や家柄、金……。気に入られようとある事ない事を話してきてそれが苦痛だった。でもエマ嬢は何も話さなくとも心地が良くてこのまま同じ空間にいたいと思った。そして愚かな私を叱ってくれた。フェルマンがエマ嬢に近付いても靡くどころか、逆にフェルマンが興味を持ってしまった。エマ嬢の瞳に私だけを映してほしいと考えるようになった。多分これがエマ嬢がいいという理由」
めんどくさっ。
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
レジーナブックス様から書籍が4月下旬に発売されます!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」