記憶を持ったままどこかの国の令嬢になった

さこの

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ここはマンガの世界

『君はないね。尻軽女にエルマンは似合わないよ』

『尻軽ですって!』
『尻軽だろう? 俺が声をかけるとすぐに付いてくるような女だ。エルマンの事だけを見てくれる女じゃないと俺は認めない」
「イケメンだからって調子に乗っているんじゃないでしょうね! エルマン様! この男は言葉巧みに私を連れ出したんですよ!』


 覚えていた内容を話した。
 エルマンはそれを見てもう良い、行くぞ。とフェルマンと帰ったことも。

「なぜエマ嬢がそのことを知っているのか聞いてもいいか?」

 ごくりと唾を飲み込む。こんなこと言っても信じられないと思うし。

「私は前世の記憶があって、この世界は私が読んでいたマンガの物語なんです。だから私エルマン様とフェルマン様の2人は最低・最悪な子息だと思っていました。お酒を飲んでそのまま寝落ちして、今の私が頭をぶつけて起きたら前世での記憶を思い出してしまったのです。だからエルマン様とは婚約できないのです」

 黙り込むエルマン。そうだよね、普通は“何言ってんだこいつ。気持ち悪い。この話は無かったこと!”  にってなるはず!

「記憶とはスゴイものなんだな。私やフェルマンの過去なども分かるのか?」

 過去? 何のことだろう。このマンガの内容をすべて知っているわけではない。あ、でも原作があった。原作はどうなってるんだろ?

「そこまでは……」
「そうか。話をさせてもらっても良いかな、少し長くなるけれど」
「……はい」

「まずデルクール侯爵家の話をする。うちの父は次男だ。本当は父の兄、私からしたら伯父が継ぐはずだったんだが、個人的に大きな借金を作り問題を起こし相手に恨まれ亡くなった。一言で言うと殺されたんだ。伯父には妻子がいて伯父が亡くならなければその子がデルクール侯爵家を継ぐ事になっただろう。祖父は妻子に罪はないと再婚を勧めデルクール侯爵家を支持している伯爵家を再婚先に勧めた。再婚先にも子がいたが女の子で伯爵家は伯父の子が継ぐことになった。伯父の子というのがフェルマンだ」

「え……、知りませんでした。お顔が似ているとは思っていました」

 そこまで近い間柄だったとは。

「本当はフェルマンがデルクール侯爵家の後継なんだよ。父は伯父の借金を返済しデルクール侯爵家の名誉を守って祖父は父を誇りに思っていると言っていたし私もそう思っている。父が侯爵であることに不満はない。でも私の代になった時フェルマンをはじめ親戚は納得するだろうか。と考えるようになってしまった。そろそろ相手を探さなくてはいけないとなった時、フェルマンよりも先に婚約をして良いのだろうか、私が選んだ相手を皆が祝福してくれるだろうか、考えれば考えるほどわからなくなってきた。フェルマンとは同じ歳で勉強も剣術も同等レベル、しかしフェルマンは華がある。親の勧めでどうしても断れない見合いがありフェルマンに相談したら同席してくれると言った。そして見極めてくれると言う。フェルマンが認めた相手なら皆も祝福してくれるではなかろうか。そう思うようになった。見合い相手にフェルマンが甘い言葉を囁くと相手は顔を染めフェルマンに魅せられていく。結局私を見てくれる令嬢なんていない。侯爵家嫡男という地位、顔、将来手にするであろう金が目当てなんだと思った。そして見合いが続くとどうでも良くなってきた。無言で食事をする時の令嬢達の不服そうな顔もフェルマンに当てられた顔も見ているだけで吐きそうになった。自分がどうしたいか分からなくなった。その時エマ嬢との見合いがあった。いつものように気乗りしないままレストランに行った。見合いなのにカジュアルすぎると怒って帰るかな。とも思っていたが、エマ嬢は他の令嬢達と違って着飾ることもなく甘い声を出すわけでもなく居心地がよかった。もっと一緒にいたいと思った」

「あ、あの、それはですね」
「うん、マンガの世界で私たちの事を知っていたからだろ? それでも良い。君は違った。さっぱりとしたも物言い、注意をしてくれた。初めはエマ嬢の目に惹かれた。深い部分まで見てくれそうな瞳だった。フェルマンがエマ嬢にちょっかいをかけたと聞いて腹がたった。フェルマンに対しては申し訳ないと思っていたから腹を立てるのは初めての感情だった。前世の記憶を持っているのなら謝罪する。2度とこのような不快な事はしない。フェルマンにも今まで思っていた事を話をしたら、あほか。と言われた。デルクール侯爵家を継ぐのは私が相応しいと言ってくれた。フェルマンに頼りすぎていた自分が情けない、令嬢達にもフェルマンにも迷惑をかけた。フェルマンがエマ嬢を気に入っているのも知っているが、私はエマ嬢に惹かれている。マンガが何かは知らないけれど、現在の私を知ってほしい。そしてエマ嬢の事も聞かせてほしい」

 それはマンガにない設定だった。ここで生きているエルマンの気持ちを聞けた。こんな告白をされて無視してはいられなかった。
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