【完結】ツンな令嬢は婚約破棄され、幸せを掴む

さこの

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ラウルが迎えにやってきた!

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あの日からエクトルとお茶会をしたり、外にピクニックへも行った。
エクトルと過ごす日々はいつも笑ってばかりだった。
今は口約束のような婚約である為、エクトルが来月王都に行く際バシュレ伯爵邸に挨拶に行くと言う事だった。

今日は叔母のお気に入りのハーブ園の一角でお茶会をする。
エクトルがアイリーンに会いにくるたびに、セドリックは
「僕のおかげだな…」
と言ってくる。確かにセドリックが居なかったら出会っていなかっただろう…
「うん、お兄さまありがとう」
感謝を述べると満更ではない顔をするので嬉しくなる
「もし、このままね、エクトル様と婚約という事になったら…領地がお隣だから遊びに来ても良い?」
アイリーンが言う
「もちろん、僕も行くよ!これは嬉しい誤算だな…」
「うんっ」
はにかむアイリーンは可愛かった

「仲が良いんだな、本当の兄妹みたいだ」
エクトルがアイリーンを見る
「うん、昔からお兄さまは優しいし、かっこいいから大好きで…」
へへッと笑うアイリーン
「アイリーンの口からそんなことを聞くとはな…ツンツンしてきた頃が懐かしい」
「…言わないでっ」
顔を赤く染めるアイリーン

「何のこと?」
不思議そうな顔をするエクトル
「エクトルに出会う前のアイリーンはこんなに可愛い顔をメガネで隠しておさげをして、自分を落としていたんだよ、まぁそれもあって今があるわけだし災い転じて福と為すって言うやつだな」
うんうんと腕を組み頷きながら話すセドリック
「言わないでってば!もうお兄さま嫌いっ」
ふんっと顔を背ける
「な!可愛いだろ?」
にやにやするセドリック
「可愛いな…」
エクトルが同意するもすっと席を立つ
「どうした?アイリーン」
セドリックが声をかける

「もうヤダっ!恥ずかしくて穴に入りたい」
ふいっと背中を向けて小走りで走り出す
「あっ!逃げた」
セドリックが捕まえに行こうとすると邸に馬車が乗り入れたようだ

「ん?お客さんか?」
アイリーンの腕を捕まえこっそりと覗く二人

「「えっ?!」」

アイリーンとセドリックが驚きの声を上げる
「お兄さま…」
アイリーンの声に気がつき
「アイリーン、迎えに来たよ!」
和かな笑みを浮かべるラウルの姿が…
「……どうしてお兄さまが?」
驚いたままのアイリーン
「それは嫡男として、兄としてしなくてはならない事があるからだろ?」
アイリーンの頭を撫でるラウルに訳のわからぬ顔をするアイリーン

「僕に紹介したい人とかいないの?」
ぽっと顔を赤く染め恥ずかしいそうに
「……会ってくださるの?」
ラウルを見上げるアイリーン
「会わせてくれる?」

こくんと頷き
「まってて、先に伝えてくる…」
小走りでエクトルのいる庭に向かう

「…もしかして今いるのか?お相手の方は」
セドリックに聞くラウル
「正解!」
「着いて早々に会うのか…はぁ」


「エクトル様!大変なのっ、お兄さまがエクトル様にお会いしたいらしくて……」
はぁはぁと息を整えるアイリーン

「……セドリックが?」

ふるふると頭を振る
「私の実の兄なの、その…家族に会って下さいますか?」
おずおずとエクトルを見る

「喜んで!どちらにおられる?」
椅子から立ち上がるエクトル、するとセドリックと歩いてくる長身の男性の姿がある

「あっ、来ちゃった」

「エクトル、急だけどアイリーンの兄でバシュレ伯爵の嫡男ラウルだ、アイリーンの兄で僕の従兄弟、ラウルこちらがグリント侯爵のエクトルだよ。うちの領地の隣が侯爵の領地なんだ、留学に行ってて最近帰ってきて再会したんだよ」
セドリックが紹介をする

「グリント侯爵、初めましてアイリーンの兄でラウルと申します、よろしくお願い申し上げます」
頭を下げるラウル
「ラウル殿、こちらこそよろしくお願いします。私のことはエクトルと呼んでください」
和かな笑みを浮かべるエクトル

「えっとお茶を淹れ直しますね」
とぽとぽと急須からハーブティーを入れるアイリーン
みんなにお茶を出し、セドリックの隣に腰掛ける、どこに座るのが正解か分からない…

「急な手紙を出してすみませんでいた、妹さんに婚約の了承をいただけました。来月そちらにご挨拶に伺おうと思っていたんですが、ご足労いただいて申し訳ない」
エクトルがラウルに言う

「いいえ、こちちらこそ妹をよろしくお願いいたします。今回はエクトル殿に頼みがありこちらへ来ました」
申し訳なさそうな顔をするラウル

「なんでしょう?私にできることであればお力になりたい」
真面目な顔をし話を聞くエクトル
「本当に妹と婚約をするつもりであれば、婚約の証明書にサインをしてもらいたい」
頭を下げるラウル
「…そんな事ですか?サインしますよ、喜んで」
ほっとするラウル

「私の父が急に体を悪くして侯爵を継ぎました、アイリーンの事は話してありますし、喜んでくれましたが、私の婚約者として会って欲しくて来月以降になると思っていたので…こちらとしても願ったりです」
笑みを浮かべるエクトル

「すみません、急かすような真似を…」
「いえ、理由はどうあれ、これでアイリーンは私の婚約者だ」
アイリーンを見るエクトル
恥ずかしくて顔を両手で押さえるアイリーン

サラサラとサインをするエクトル、提出すると婚約が成立する事となる。
エクトルが従者に言って紙を一枚用意して貰い、婚約破棄やエクトルが浮気をしたら自身の全財産をアイリーンに渡すと一筆書かれていた。

「……本気だったんですか?」
驚くアイリーン
「そう言ったろ?それくらいじゃないと本気にして貰えない!」
にこりと笑いアイリーンを見つめる

「妹のことをよろしくお願いします」
改めて頭を下げる
「えぇ、お任せくださるのなら幸せにすると誓いましょう」

エクトルの気持ちが嬉しくて涙腺が崩壊するアイリーンにセドリックがハンカチを出して涙を拭う
「これからこの役をエクトルにやるよ、ハンカチを常備しとけよ」
笑うセドリックだった

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