私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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心を掴んだマリアベル

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「このお花は見た事がないわ」

 マリアベルが国へ帰る時に大公家から二人のメイドが派遣されることになる。その二人のメイドと庭の散策途中、庭の一角にある温室へお邪魔した。

「この花はイチゴですよ」

「え! イチゴのお花なの。とても可愛らしいお花が咲くのね」

「お嬢様はイチゴがお好きですか?」

 メイド二人は数日間ですっかりマリアベルの事が好きになっていた。明るく優しく屋敷の使用人に話しかけ礼を言う。見るもの全てが楽しいようだった。

「えぇ。瑞々しくて甘くて、時には酸っぱいものもあって驚く事もあるわね」

 大公家の敷地内は広さを利用して、皆の目を癒す花だけではなく野菜や果樹園まである。

「こちらのイチゴは品種改造をして糖度が高いイチゴでそのまま召し上がっても美味しいのが自慢ですのよ。そうだわ。このイチゴで作ったジャムがありますので、よろしかったら是非お召し上がりくださいませ」
 
 メイドの言葉に甘えさせてもらう事にした。お茶の時間に用意してくれるそうだ。

「お嬢様の好きな花はなんですか?」

「わたくしは、スズランが好きなの。昔リアン様と一緒に見たスズラン畑がとても美しくて圧倒されて大好きになって、とてもいい思い出なのよ」

 胸元にリアンさんからプレゼントされたスズランのネックレス。

「まぁ。どうりで、ねぇ」

 メイドたちは顔を見合わせて微笑みあっている。

 大公家のメイド達は皆身元がしっかりしていて、行儀見習いのために働いていたり、貴族の出の人が多い。大公閣下や夫人、リアン周辺の世話をする人は特に厳しい礼儀を求められるのだそうだ。

 もしあの時に引き取られていたら、身分も分からなかった私はどんな扱いだったのだろうか? とふと思った。夫人は養女とまで言ってくださったけれど、ここで働く人たちはよく思わなかったかもしれないわね。


「お嬢様がお輿入れされる日が待ち遠しいですわ」

 微笑み合う笑顔だけどその奥には何か含まれている? 気のせい?

 
 はぁ。さすが王族の屋敷だ。いつまで経っても庭を見回ることができない! 果樹園もあると言うことで行きたいのだがもう足が疲れた。また次回と言う事にして、お茶を飲む事にした。



 一人で飲むのも味気ないのでメイド達と一緒にお茶を楽しむ。この国の流行などとても詳しく、聞いているだけでも楽しかった。
 さすが歳が近いだけある。リアンさんは五日間休みをとったと言ったが、急な対応を求められることもあって、午前中は王宮に行く事になりお昼に帰ってくると言う日が二日ほどある。
 それが今日で、パパもママも兄さまも仕事で出かけていた。せっかく隣国に来たのだからと仕事関係の方に会いに行った。私はリアンさんの帰りを待つ事にした。


 お茶をしていたらリアンさんが思ったよりも早く帰って来て、一緒にお茶を楽しんだ。メイド達に流行のものを教えてもらった話をしていて、友達にお土産に買って帰りたいと言う話をした。


「買いに行かせるか、それとも買いに行くか?」

 そんな二択を選んでいいのなら、もちろん

「自分で行きたい!」と答えた。


「そう言うと思ったよ。でも疲れてお茶をしていると言っていたよな。無理することはない。明日にするか?」


「街歩き用の靴に変えれば大丈夫だよ。せっかく教えてもらったんだし、明日予定が入っていけなくなっちゃたら嫌だから……ダメ?」

 お願いと言う意味を込めて胸の前で手を組合わせた。

「マリアがいいと言うのならいいが、何か不調を感じたらすぐに言えよ」

 そしてメイド達案内の元、街へ買い物に行く事になった。


 さすが首都の街だけあって賑わっている。貴族街にあるそのお店は若い令嬢達が楽しそうに買い物をしていた。


「俺は場違いだな……外で待っているからゆっくり買い物をするといい」

 メイドと私の侍女とで店内に入る。可愛い櫛があったので、櫛とヘアーオイルを買った。アミーとジュリーは双子だが好みが違うのでそれぞれに似合いそうなものを選んで会計へ持って行くと、お店の人が箱に入れリボンをかけて可愛くしてくれた。


「良いお店を紹介してくれてありがとう! 友人は絶対に喜んでくれるわ」


 この国の特産のお花をベースに作られたヘアオイルは我が国にはない物だった。

 代金を支払おうとしたら、大公家のメイドがささっと支払ってしまう。

「フロリアン様からのご指示です」

 などと言われれば断れない。後でお礼を言っておこう。


「リアン様お待たせしました」


お店の前で腕を組んで待っている姿を見て嬉しくなる。これは確実にデートだね!

 
「次はどこに行く?」

 有名なスイーツショップがあるようでそちらに足を伸ばした。ここではママや自分のためにお菓子を選んだ。ママの好きなオレンジのお菓子も豊富だった。残念ながら日持ちはしないようだ。


 そのあとは噴水広場近くにあるカフェで皆で一休み。


 リアンさんとずっと腕を組んで歩いていても嫌がられることはなく幸せだった。だって婚約者だもん。予定でも仮でもないんだよ!
 堂々と甘えられるなんて……ずっと顔はニヤけたまま。

******


 そして楽しい日々はあっけなく過ぎ、とうとう帰国する日になってしまった。せっかく淑女の仮面をつけていたのに寂しくなって、お別れの日に使用人達の前で泣いちゃった。感情を表に出しちゃいけないのにね。


「すぐに会えるから泣くなよ」


 リアンさんが帰り際に私の頬にキスしてくれた。パパの笑顔は怖いけど楽しかった分、悲しかったんだよ。

 大公家のメイドが二人と先生二人を連れての帰国となった。

 
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