絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子

さこの

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番外編

西の国(ウエスト)の王女とやら


 なんでこの私がこんな得体の知れない王女とダンスを踊らなきゃいかんのだ! 

 そもそも礼儀も知らないようなモノと関わりたくはない。ここが王宮で新年のパーティーだから王族の主催だから仕方なく相手をすることにする。

 父上も一曲だけ。と念押しをされた。心の中では不満でいっぱいだ!

 そもそもウエスト国から留学したい。と手紙をもらい、OKは出した。王女が国に入るのなら挨拶に来るのが当然。それなのに身分を隠してパーティーに出たいと我儘を言ったから渋々のんでやった!

 身を寄せている伯爵家は武力に優れてはいる。だが護衛は完全ではない! おまえ王女がこの国で何かあればこっちが悪くなるんだから、お忍びでもなんでもいるとわかっているから密かに護衛を付けているんだ!


 もちろん伯爵家もそれを知っていて、王女の我儘に付き合っているようで王宮に説明に来ていたそうだ。

 それなのになぜ、あの場で王女だと挨拶したのか! 挨拶をしてから“あっ!”などと思っても既に遅い!



 私はアイリス以外の女に触れたくない! ダンスなど面倒だ。しかし相手はウエスト国の王女ときた。大した国ではないが争い事は避けたい。なぜって? アイリスが心を痛めるからだ!


 ようやく苦痛なダンスも終わった。礼をして王族の席へ戻ろうとした。

殿わたくし近いうちに正式にご挨拶に伺いますわ。またその時にお話を聞かせてください」

 なんの? 話すことなんてない。

「……えぇ。お待ちしていますよ。それでは」


 いつのまにかレイが近くに寄ってきた。

「ちゃんとダンスしたんだな。珍しい」

 珍獣でも見るような顔で見るんじゃない!

「あんな所で王女だと紹介したのだから仕方があるまい。もう少しで挨拶も終わるだろ。終わり次第私は部屋に戻る」

「はいよ」

 誰も聞いちゃいないだろ。レイもその気で軽い口調だ。

 伯爵家・子爵家・男爵家の挨拶も終わった。ダンスをしていたからアイリスの家族と会えなかったではないか! 本当に碌でもない王女だな!



「はぁ。早く風呂に入って穢れを払いたい」

「穢れって……」

「レイ、この手袋捨てておいてくれ」

「王女の手を取ったことが本当に嫌なんだな」


 嫌なんてもんではない。苦痛だ!


  ******

 風呂に入り、穢れを洗い流した。部屋に入るとアイリスとリュカは既に眠っていた。

「アイリスの寝顔は可愛いな。子持ちとは思えない程あどけない寝顔だ。はぁ。癒される……」

 誰もエヴァンの話を聞く者もいない。単なる独り言だ。

 リュカを見ると肩が出ていたので布団を被せてやる。

「風邪をひくとアイリスが悲しむだろう。ちゃんと布団に入っておけ」


 子供を思う気持ちなのかアイリスを思う気持ちなのか未だによく分からない行動。アイリス以外には素直ではない。

 そしてアイリスを中心に川の字になって寝ることにした。



 ~翌朝~


「んっ。エヴァン様」

 アイリスを後ろから抱きしめる形で眠っていた。

「おはようアイリス。起こしちゃった?」

 アイリスの大きくなったらお腹をさする。

「ふふっ。もう起きなくてはいけませんね。リュカも起こさないと」

 アイリスの目の前ですーすー眠るリュカを見る。

「まだ寝かせておけばいい。こうやって朝からアイリスと過ごす時間は至福だ」


 この腹の子が産まれてきたらこうやって過ごすことも減るだろうな。子供は二人いれば皆は許してくれるだろうか? アイリスは世継ぎのプレッシャーから解き放たれるだろうか。

「ふふっ。そうですね。これからしばらくはそうはいかないと思いますもの」

 あぁ。アイリスの微笑みはなんとも形容し難い神々しさ。いつまでも可愛い。


 昨日の穢れから癒されるようだ。そしてアイリスを堪能するべくぎゅっと抱きしめた。あぁ。柔らかい。癒される。

「エヴァン様、どうかされたのですか? 昨日はお疲れでしたの?」

「うん。疲れた。朝食を取ったら父上に文句を言いに言ってくる」


「陛下もお疲れでしょうし、日を改められてはいかがですか?」


「……アイリスが、そう言うなら仕方がない」


 

 すぐに文句を言いに行くべきだった。と後悔してもしきれないとはこの時は思わなかった。






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