49 / 56
番外編
西の国(ウエスト)の王女とやら
なんでこの私がこんな得体の知れない王女とダンスを踊らなきゃいかんのだ!
そもそも礼儀も知らないようなモノと関わりたくはない。ここが王宮で新年のパーティーだから王族の主催だから仕方なく相手をすることにする。
父上も一曲だけ。と念押しをされた。心の中では不満でいっぱいだ!
そもそもウエスト国から留学したい。と手紙をもらい、OKは出した。王女が国に入るのなら挨拶に来るのが当然。それなのに身分を隠してパーティーに出たいと我儘を言ったから渋々のんでやった!
身を寄せている伯爵家は武力に優れてはいる。だが護衛は完全ではない! おまえがこの国で何かあればこっちが悪くなるんだから、お忍びでもなんでもいるとわかっているから密かに護衛を付けているんだ!
もちろん伯爵家もそれを知っていて、王女の我儘に付き合っているようで王宮に説明に来ていたそうだ。
それなのになぜ、あの場で王女だと挨拶したのか! 挨拶をしてから“あっ!”などと思っても既に遅い!
私はアイリス以外の女に触れたくない! ダンスなど面倒だ。しかし相手はウエスト国の王女ときた。大した国ではないが争い事は避けたい。なぜって? アイリスが心を痛めるからだ!
ようやく苦痛なダンスも終わった。礼をして王族の席へ戻ろうとした。
「エヴァン殿下わたくし近いうちに正式にご挨拶に伺いますわ。またその時にお話を聞かせてください」
なんの? 話すことなんてない。
「……えぇ。お待ちしていますよ。それでは」
いつのまにかレイが近くに寄ってきた。
「ちゃんとダンスしたんだな。珍しい」
珍獣でも見るような顔で見るんじゃない!
「あんな所で王女だと紹介したのだから仕方があるまい。もう少しで挨拶も終わるだろ。終わり次第私は部屋に戻る」
「はいよ」
誰も聞いちゃいないだろ。レイもその気で軽い口調だ。
伯爵家・子爵家・男爵家の挨拶も終わった。ダンスをしていたからアイリスの家族と会えなかったではないか! 本当に碌でもない王女だな!
「はぁ。早く風呂に入って穢れを払いたい」
「穢れって……」
「レイ、この手袋捨てておいてくれ」
「王女の手を取ったことが本当に嫌なんだな」
嫌なんてもんではない。苦痛だ!
******
風呂に入り、穢れを洗い流した。部屋に入るとアイリスとリュカは既に眠っていた。
「アイリスの寝顔は可愛いな。子持ちとは思えない程あどけない寝顔だ。はぁ。癒される……」
誰もエヴァンの話を聞く者もいない。単なる独り言だ。
リュカを見ると肩が出ていたので布団を被せてやる。
「風邪をひくとアイリスが悲しむだろう。ちゃんと布団に入っておけ」
子供を思う気持ちなのかアイリスを思う気持ちなのか未だによく分からない行動。アイリス以外には素直ではない。
そしてアイリスを中心に川の字になって寝ることにした。
~翌朝~
「んっ。エヴァン様」
アイリスを後ろから抱きしめる形で眠っていた。
「おはようアイリス。起こしちゃった?」
アイリスの大きくなったらお腹をさする。
「ふふっ。もう起きなくてはいけませんね。リュカも起こさないと」
アイリスの目の前ですーすー眠るリュカを見る。
「まだ寝かせておけばいい。こうやって朝からアイリスと過ごす時間は至福だ」
この腹の子が産まれてきたらこうやって過ごすことも減るだろうな。子供は二人いれば皆は許してくれるだろうか? アイリスは世継ぎのプレッシャーから解き放たれるだろうか。
「ふふっ。そうですね。これからしばらくはそうはいかないと思いますもの」
あぁ。アイリスの微笑みはなんとも形容し難い神々しさ。いつまでも可愛い。
昨日の穢れから癒されるようだ。そしてアイリスを堪能するべくぎゅっと抱きしめた。あぁ。柔らかい。癒される。
「エヴァン様、どうかされたのですか? 昨日はお疲れでしたの?」
「うん。疲れた。朝食を取ったら父上に文句を言いに言ってくる」
「陛下もお疲れでしょうし、日を改められてはいかがですか?」
「……アイリスが、そう言うなら仕方がない」
すぐに文句を言いに行くべきだった。と後悔してもしきれないとはこの時は思わなかった。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~
岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。
「これからは自由に生きます」
そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、
「勝手にしろ」
と突き放した。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
あなたの隣に私は必要ですか?
らんか
恋愛
政略結婚にて、3年前より婚約し、学園卒業と共に嫁ぐ予定であったアリーシア。
しかし、諸事情により結婚式は延期され、次の結婚式の日取りさえなかなか決められない状況であった。
そんなアリーシアの婚約者ルートヴィッヒは、護衛対象である第三王女ミーアの傍を片時も離れようとしない。
月1回の婚約者同士のお茶会もすぐに切り上げてしまい、夜会へのエスコートすらしてもらった事がない。
そんな状況で、アリーシアは思う。
私はあなたの隣に必要でしょうか? あなたが求めているのは別の人ではないのでしょうかと。