旅は道連れ、世は情け?と言われて訳あり伯爵家の子息のパートナーになりました

さこの

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三年経った

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お兄様が十六歳になり、成人を迎えた。私は十三歳になり、学校へ通っている。

 お兄様は、あのとき葬儀に来てくれた商人の娘──シャーリーさんと結婚するという。
 平民になってしまうけれど、お兄様が望んだことに反対はしない。

 だってシャーリーさんは、とても可愛くて楽しい人で、なによりお兄様のことが大好きで。……本当に、お似合いなのだ。

 子爵家といっても、今の我が家は名前だけ。領地もなく、もともと文官の家系。今は出仕もしていないから、細々と生活している。

「子爵を返還すればいいんじゃないの?」

 そうおばあさまに聞いたことがあるけれど、返還すると色々と都合が悪いらしい。そうなると、いずれ私が継ぐことになるのだけど……税金が……などと、十三歳なりに真剣に悩んでいた。

「ブランシュが学生の間は結婚しないよ。一緒に住めるのもあと数年だけどね」

 お兄様はそう言って笑った。

「結婚しても様子は見に来るし、おばあさまのことも心配だから。シャーリーは一緒に住んでもいいって言ってくれてるんだけど、おばあさまが反対してさ」

 それはおばあさまの優しさだった。新婚夫婦の家に遠慮しているのだ。

 おばあさまはシャーリーさんのことも、その父親のことも信頼している。

 そしてお兄様は今も、お父様とお母様が騙された件や賊のことを調べ続けている。私には詳しく教えてくれないけれど、お兄様なりに戦っているのだと思う。

 最近、我が家である発見があった。

 私は“お嬢様”と呼ばれながらも普通の学校に通い、礼儀作法はおばあさまとメイド長から、貴族の関係性などは執事長から教わっている。

 使用人は少ないから、掃除や庭仕事も手伝う。そんな生活が、私はわりと気に入っていた。

 ある日、お茶を運んでいると段差に躓き、盛大にお茶をこぼしてしまった。

「きゃあ、大変! 雑巾、雑巾!」

「ブランシュは相変わらずそそっかしいね」

 おばあさまも慣れたものだ。そもそもお嬢様はお茶を運ばないのだろうけれど、人手が足りないのだから仕方ない。

 床を拭いていると、ふと違和感に気づいた。

「あれ? ここ、なにかある」

 床板の継ぎ目に、不自然な隙間がある。尖ったものでこじ開けると、パキッと乾いた音がした。

「ブランシュ! 壊したらどうするんだい」

 おばあさまが止めたけれど、なぜか私は手を止められなかった。

 そして現れたのは、小さな空間。

「な、なにこれ……」

 中には、古びた宝飾品がぎっしり詰まっていた。

 机の上に並べてみると、明らかにただの装身具ではない。

「このデザイン……かなり昔のものもあるね」

 指輪を一つ手に取って磨いてみる。

「……これ、本物だよね」

 おばあさまに渡すと、じっと目を細めた。

「彫金にエメラルド……間違いなく高価な品だね。前の持ち主か、そのさらに前か。すごいコレクションだ」

「これって、返さなくていいの?」

「家ごと買っているんだ。うちのものだよ」

 おばあさまは笑った。

「屋敷の造りが気に入って買ったと聞いていたけど……まさかこんなお宝付きとはね。あの人も知らなかったのかねえ」

 本当に仲が良かったおじいさまのことを、おばあさまは楽しそうに話す。

「あっちの世界で会ったら土産話ができるね」

「やだよ! おばあさまもいなくなるなんて!」

 思わず抱きつくと、おばあさまは私の背をぽんぽん叩いた。

「まだ死なないよ。やることがあるからね。ブランシュを立派に嫁に出すまでは死にきれない。この宝飾はありがたく使わせてもらおう」

 その夜、お兄様が帰ってきてから執事とメイド長を交えて会議になった。

「ブランシュ、すごいな!」

「偶然だよ! お茶こぼしたから見つかったんだもん。もう怒らないでね?」

「それとこれとは話が別だ」

 お兄様はきっぱり言った。

 宝飾品は磨いて価値を調べることになった。ただし極秘で。外へ持ち出せば盗まれるかもしれないし、騙される可能性もある。

 そして──三年が過ぎた。
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