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遠慮する必要なさそう
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「ユーゴ様、邪魔をするのでしたらそろそろお引き取りください。まもなくお客様がいらっしゃいます」
先生がぴしゃりと言う。けれど当の本人は出ていく気配もなく、売り場の片隅に居座ったままだ。正直に言うと邪魔なんですけど!
やがて会場に人の流れができ始め、常連らしき客が先生に声をかけた。
「やぁ、久しぶり。何か良いものない?」
「ええ、ありますよ。こちらは私の知り合いでして、良い品を持っているんです。ブランシュちゃんです」
紹介されたのは、王都でアンティークショップを営むという男性だった。平民だけど、後ろ盾に貴族がついているらしい。
「こんにちは。何をお探しですか?」
「見ない顔だね。何かおすすめはある?」
物腰の柔らかい人だ。それが第一印象。私は並べていた品の中からピンブローチを勧めた。
オニキスを使った落ち着いたデザイン。ガーネットで太陽を模したもの。このデザインは時代背景が良く出ている物だ。と、おばあさまも先生も言った。
「珍しいね。気に入った。これもいいね。二つで45万リーズでどう?」
──え? それは安い。オニキスの回りのダイヤが目に入らぬか! ガーネットの周りの銀細工だって細かくて職人技! 言われた金額で売ると赤字だ! 元手は……だけどね。
先生が横目でこちらを見ている。試されているのだとわかった。ふぅ。と、息を吐いて会話を続ける。
「ふふ、冗談がお上手ですね」
「僕は冗談は嫌いなんだけどな」
涼しい顔をして言うんだ!
「もし本気で45万リーズと仰るなら、こちらを偽物だと思っていらっしゃるのでは?」
負けずに、にこりと笑う。
「……60?」
お? 金額を上げてきた。
「私も冗談は嫌いですの。このガーネットのブローチはフランソア陛下の時代のものです。時代特有のダイヤのカット、銀細工の精緻さ。これを偽物とされるのであれば、あなた様にお売りすることはできません」
言い過ぎたかもしれない、と少しだけ不安になる。
しかし男性は吹き出した。
「ははっ、参ったな。試したんだよ。気を悪くしたのなら謝る。二つで75万リーズ。これならどう?」
最低ラインは超えている。私は少し間を置いてから頷いた。
「ありがとうございます。それではこちらを、お譲りいたします」
頭の中でコインの音が鳴った。
「本当は70万にしようと思ったんだけど、最初の客だろう? ご祝儀だ。これからは騙し合いなしでいこう」
差し出された手を握り返す。
「よろしくお願いします」
「ねぇ、もしかして、まだ隠してたりする?」
即答はせず、にこりと笑う。
「……あるんだね?」
「ブローチに興味はありますか?」
さらに三点お買い上げいただいた。
「負けたよ。良い目をしているし、とても勉強をしている。僕は王都で店をやっているマリオだ。王都に来た際は是非寄ってくれ」
名刺を受け取る。
「ありがとうございます。とてもいい経験をさせてもらい、勉強になりました」
満足感で胸がいっぱいになった頃、先生に昼食へ誘われた。なぜか、あの失礼な領主の子息もついてくる。
「初めてにしては見事だったよ。ただ、あのカメのブローチはもう少し高くても良かったんじゃないかな?」
カメのブローチはエメラルド、目の部分はサファイヤとかなりの宝石を使っている。
「実は、裏の作者名のところに傷がついていて削れているのです。作り手がわかればもっと値を上げられたと思います」
先生は納得したように頷いた。
「ところでユーゴ様は、いつまでいらっしゃるのですか?」
「……そうだな」
不機嫌そうな横顔に、私は小さくため息をついた。
この人と食事しても、ちっとも楽しくないし、美味しくない。休憩時間が終わり、私たちは売り場へ戻る。
自分の分の代金をきちんと払い、気合を入れ直した。
──よし、午後も、頑張ろう。
先生がぴしゃりと言う。けれど当の本人は出ていく気配もなく、売り場の片隅に居座ったままだ。正直に言うと邪魔なんですけど!
やがて会場に人の流れができ始め、常連らしき客が先生に声をかけた。
「やぁ、久しぶり。何か良いものない?」
「ええ、ありますよ。こちらは私の知り合いでして、良い品を持っているんです。ブランシュちゃんです」
紹介されたのは、王都でアンティークショップを営むという男性だった。平民だけど、後ろ盾に貴族がついているらしい。
「こんにちは。何をお探しですか?」
「見ない顔だね。何かおすすめはある?」
物腰の柔らかい人だ。それが第一印象。私は並べていた品の中からピンブローチを勧めた。
オニキスを使った落ち着いたデザイン。ガーネットで太陽を模したもの。このデザインは時代背景が良く出ている物だ。と、おばあさまも先生も言った。
「珍しいね。気に入った。これもいいね。二つで45万リーズでどう?」
──え? それは安い。オニキスの回りのダイヤが目に入らぬか! ガーネットの周りの銀細工だって細かくて職人技! 言われた金額で売ると赤字だ! 元手は……だけどね。
先生が横目でこちらを見ている。試されているのだとわかった。ふぅ。と、息を吐いて会話を続ける。
「ふふ、冗談がお上手ですね」
「僕は冗談は嫌いなんだけどな」
涼しい顔をして言うんだ!
「もし本気で45万リーズと仰るなら、こちらを偽物だと思っていらっしゃるのでは?」
負けずに、にこりと笑う。
「……60?」
お? 金額を上げてきた。
「私も冗談は嫌いですの。このガーネットのブローチはフランソア陛下の時代のものです。時代特有のダイヤのカット、銀細工の精緻さ。これを偽物とされるのであれば、あなた様にお売りすることはできません」
言い過ぎたかもしれない、と少しだけ不安になる。
しかし男性は吹き出した。
「ははっ、参ったな。試したんだよ。気を悪くしたのなら謝る。二つで75万リーズ。これならどう?」
最低ラインは超えている。私は少し間を置いてから頷いた。
「ありがとうございます。それではこちらを、お譲りいたします」
頭の中でコインの音が鳴った。
「本当は70万にしようと思ったんだけど、最初の客だろう? ご祝儀だ。これからは騙し合いなしでいこう」
差し出された手を握り返す。
「よろしくお願いします」
「ねぇ、もしかして、まだ隠してたりする?」
即答はせず、にこりと笑う。
「……あるんだね?」
「ブローチに興味はありますか?」
さらに三点お買い上げいただいた。
「負けたよ。良い目をしているし、とても勉強をしている。僕は王都で店をやっているマリオだ。王都に来た際は是非寄ってくれ」
名刺を受け取る。
「ありがとうございます。とてもいい経験をさせてもらい、勉強になりました」
満足感で胸がいっぱいになった頃、先生に昼食へ誘われた。なぜか、あの失礼な領主の子息もついてくる。
「初めてにしては見事だったよ。ただ、あのカメのブローチはもう少し高くても良かったんじゃないかな?」
カメのブローチはエメラルド、目の部分はサファイヤとかなりの宝石を使っている。
「実は、裏の作者名のところに傷がついていて削れているのです。作り手がわかればもっと値を上げられたと思います」
先生は納得したように頷いた。
「ところでユーゴ様は、いつまでいらっしゃるのですか?」
「……そうだな」
不機嫌そうな横顔に、私は小さくため息をついた。
この人と食事しても、ちっとも楽しくないし、美味しくない。休憩時間が終わり、私たちは売り場へ戻る。
自分の分の代金をきちんと払い、気合を入れ直した。
──よし、午後も、頑張ろう。
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