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泥棒?
しおりを挟む「そろそろ行くか、風も冷たくなってきた」
「心地いいですけどね」
「バカは風邪を引かんだろうから心配はしてないが、暗くなる前に戻るぞ」
一言余計だ! 失礼な人とは話さなくてもいいんだよ! 無言でユーゴ様の後ろについて行く。すると美術館の出口に馬車が停まっていた。ユーゴ様の家の御者だ。
「ユーゴ様、私はここで」
「バカか? 送って行くに決まっているだろ。サーラまで歩かせるつもりか?」
馬車にはサーラさんが居た。今日から私の世話をしてくれる人だ。手を借りて馬車に乗り込む。
「夜は軽くでいいだろ? 昼にあれだけ食ったからな」
そんなにお腹は減っていない。でも食べないと夜に空腹になる。一人なら適当に済ませるけれど、サーラさんもいるから手を抜けない。
「夜店に行くか。簡単にすませよう」
夜店! 海鮮の串焼きやお肉を数本食べて夕飯は終了。昼のお店も夜店も、それぞれ良さがある。
ホテルの部屋までユーゴ様が送ってくれた。
「わざわざ部屋まで送ってくれなくてもサーラさんがいるのに」
「周りの目があるんだよ。そう思うなら早く部屋に入れ」
「……今日はありがとう。おやすみなさい」
「あぁ、また明日な」
ポン、と頭に手を置かれる。優しいのか変なのか、わからない。部屋に入るとサーラさんが私を止めた。
「ブランシュ様、入らないで! 今すぐに坊ちゃんの元に! 早くっ」
「え、何?」
「早く行って!」
サーラさんの気迫に負けて廊下を走り、ユーゴ様を呼び止める。
「ユーゴ様っ! ユーゴ様!」
「ん? どうした?」
「分かりません。サーラさんが部屋に入ってはダメだって。ユーゴ様のところに行けって……」
不安な気持ちで手を繋がれ、部屋に戻ると、荒らされた形跡があった。窓から侵入されたようだが、盗まれたものはない。5時間の間の出来事。犯行の跡が生々しい……都会の魔窟を思い知らされる。
「衣装は新たに購入させていただきます。お部屋もグレードを上げます」
2時間後、現場検証が済み支配人が頭を下げる。
「部屋の心配はいらない。やはりブランシュをホテルに宿泊させるわけにはいかない。私の邸においで」
二重人格の優しい方が現れたのか、人前だからか。
「ブランシュ様は大事な方です。一緒にいましょう、ねぇユーゴ様?」
「……そうだ。クリーニングが済んだら私の屋敷まで届けてもらえ」
肩を抱かれ無言で歩く。怖かったけど、馬車でもサーラさんが隣に座り手を握ってくれたから安心できた。
屋敷に到着し、執事長クラウスと初対面。
「サーラ、お部屋へ案内して差し上げて。お茶の準備もすぐにします。今日はお疲れでしょうからゆっくりお寛ぎくださいませ」
部屋でお茶を飲み湯浴みを手伝ってもらい、ふかふかのベッドに入ると、涙が溢れた。
「おばぁさま……お兄様……怖かったよぉ」
ぐすんぐすんと布団を被りながら泣く私を、誰も責めない。気が強い17歳の少女でも、こうして安心できる場所があるのだ。
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