婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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クルー男爵

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 レイラは男爵家の一員となるため努力をしていた。初めは我が家の一員としてではなく下働きとして雇うつもりだった。

 アリスフィアお嬢様の目に止まったから何らかの形で引き取れば、ブラック伯爵といい関係が続いていく。そう思った。


 学園に通わせて貴族として生活していく中で友人でもできれば今後の貴族社会でも役に立つだろう。と思い寮に入れるつもりだったところ、アリスフィアお嬢様のご好意で伯爵家に滞在が許された。

 申し訳ない気持ちではあったが、伯爵家と繋がりがあるほがレイラの学園生活がうまくいくとも思った。

 レイラは貴族になったとはいえ元孤児である事は事実だし、いじめの対象になり得る存在。アリスフィアお嬢様はおそらくそれも承知の上で伯爵家に誘ってくれたのだ。

 アリスフィアお嬢様の婚約者はこの国の王子。まさかレイラが目に留まるなど思いもしなかった。レイラは王子に嫁げるような身分ではないし、一般貴族のマナーしか学ばせていない。子爵家に嫁ぐために恥ずかしくないマナーや教育を受けさせるのが私の役目だと思った。

 やはり寮に入れるべきだったのだ。私の欲が招いた結果なのかもしれない。孤児を引き取りブラック伯爵家と更に縁を! などと思わなければ……


 クレマン子爵に多大なご迷惑を掛けてしまった。クレマン子爵もブラック伯爵家との縁を繋ぎたい家だった。アリスフィアお嬢様は王子の婚約者として立派に役目を果たし兄のクレイグ殿は王太子殿下の側近としての評価が高い。弟のジェレミー殿は天使のような容姿に優れた頭脳を持ち身体能力も評価が高くブラック伯爵は凄い。と思う。尊敬の言葉しか出てこない。

 社会活動もしっかりと行い伯爵家の子供達はそれを理解し伯爵家にレイラを滞在させる事にも友好的だった。

 レイラは伯爵家のゲストとして迎えられた。使用人も付けてくださり、その上アリスフィアお嬢様が面倒を見てくださっていた。お茶会などにも同行させ、貴族令嬢としての嗜みを教えてくださっていたようだ。

 高待遇で迎えてくれていたのに自分の立場を弁えずに、まさか恩人のアリスフィア様の婚約者を奪うなどあってはならない。第五王子も王族として、その事を全く分かっていなかったようでその評判は地に堕ちたも同然。

 大勢の生徒の前で婚約を破棄をし、王都から追放、伯爵家令嬢としての身分を剥奪。その時王子の手を取り隣でレイラが笑っていたと聞く。頭を鈍器で殴られるような衝撃的な出来事で立っているのがやっとだった。妻はその場で崩れ落ちた。

 息子達に上手く説明できるか自信がなかったが、なんとかレイラの悪行を説明した。


『王子と婚約なんてさせられない。すぐに戻ってくるように言いましょう』

 長男は言った。

『そうだな、レイラを施設に送ろう』

 レイラを連れに王都へ行くと戻らないと拒否された。ここで無理にでも連れて帰ることが出来れば良かったのだが……


『え? 帰りませんけど? だって私フランツの婚約者になったのよ。喜んでくれても良いのになぜ怒られなきゃいけないの?』

 私に対して敬語で話していたレイラは私を下に見るや否や横柄な態度に出た。


『伯爵家を出てきちゃったからお金が足りないの。可愛い娘が王宮で肩身の狭い思いをしなくてはいけないのよ? 可哀想だと思ったら毎月お金を送ってよ。

 と下卑た嗤いで私を見た。


『家族だと思い戻ってくるようにと言っている、それが聞けないのならレイラとの関係は無かったことにするまで。最後にもう一度言う。王子との婚約は許さない。男爵領に帰ってこい』

『お断りししまーす! たかが男爵じゃない? 伯爵家に滞在していた時よりも王宮の方がもっと凄いのよ? 誰が田舎の男爵領になんて戻りますか! 私は上に立つ人間なのよ。フランツが認めてくれたんだから、好きになさったら? ダンシャクー?』


 言っても無駄か。今の時点で帰ってくるならまだマシだったのかもしれない。

『そうか……それならばレイラはもう男爵家とは関係のないと言うことだな? クレマン子爵家には婚約を破棄されるだろうから私はその話し合いに行ってくる。今回の事で慰謝料が発生するし国中の悪意を背負うことになる。その事も分かった上で王子妃になりたいというのだな?』

『悪意だなんて大袈裟ねぇ。フランツが守ってくれるから問題ないわ。それと子爵家に嫁ぐなんて嫌よ! あそこは私がいた場所じゃない……孤児である事を嫌でも思い出させられるわ! あんなところに嫁がされるなんて嫌がらせよね!』


 嫌がらせ? クレマン子爵に申し訳が立たない。せっかくレイラを受け入れてくれると言うのに人の心がわからないのか! きっとレイラには何を言っても響かないんだな。

 ……レイラを領地で最後まで面倒を見る事で罪を一緒に償おうなどと思っていた自分がバカらしくなってきた。

『そうか。それならレイラとの縁はここまでだ。もう面倒を見られない』

『お金を送ってくれないのなら、男爵家に面倒を見られなくてもフランツがいるから大丈夫よ。サヨナラオトウサマ』



 下卑た嗤いだ。



 
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