54 / 93
クルー男爵
レイラは男爵家の一員となるため努力をしていた。初めは我が家の一員としてではなく下働きとして雇うつもりだった。
アリスフィアお嬢様の目に止まったから何らかの形で引き取れば、ブラック伯爵といい関係が続いていく。そう思った。
学園に通わせて貴族として生活していく中で友人でもできれば今後の貴族社会でも役に立つだろう。と思い寮に入れるつもりだったところ、アリスフィアお嬢様のご好意で伯爵家に滞在が許された。
申し訳ない気持ちではあったが、伯爵家と繋がりがあるほがレイラの学園生活がうまくいくとも思った。
レイラは貴族になったとはいえ元孤児である事は事実だし、いじめの対象になり得る存在。アリスフィアお嬢様はおそらくそれも承知の上で伯爵家に誘ってくれたのだ。
アリスフィアお嬢様の婚約者はこの国の王子。まさかレイラが目に留まるなど思いもしなかった。レイラは王子に嫁げるような身分ではないし、一般貴族のマナーしか学ばせていない。子爵家に嫁ぐために恥ずかしくないマナーや教育を受けさせるのが私の役目だと思った。
やはり寮に入れるべきだったのだ。私の欲が招いた結果なのかもしれない。孤児を引き取りブラック伯爵家と更に縁を! などと思わなければ……
クレマン子爵に多大なご迷惑を掛けてしまった。クレマン子爵もブラック伯爵家との縁を繋ぎたい家だった。アリスフィアお嬢様は王子の婚約者として立派に役目を果たし兄のクレイグ殿は王太子殿下の側近としての評価が高い。弟のジェレミー殿は天使のような容姿に優れた頭脳を持ち身体能力も評価が高くブラック伯爵は凄い。と思う。尊敬の言葉しか出てこない。
社会活動もしっかりと行い伯爵家の子供達はそれを理解し伯爵家にレイラを滞在させる事にも友好的だった。
レイラは伯爵家のゲストとして迎えられた。使用人も付けてくださり、その上アリスフィアお嬢様が面倒を見てくださっていた。お茶会などにも同行させ、貴族令嬢としての嗜みを教えてくださっていたようだ。
高待遇で迎えてくれていたのに自分の立場を弁えずに、まさか恩人のアリスフィア様の婚約者を奪うなどあってはならない。第五王子も王族として、その事を全く分かっていなかったようでその評判は地に堕ちたも同然。
大勢の生徒の前で婚約を破棄をし、王都から追放、伯爵家令嬢としての身分を剥奪。その時王子の手を取り隣でレイラが笑っていたと聞く。頭を鈍器で殴られるような衝撃的な出来事で立っているのがやっとだった。妻はその場で崩れ落ちた。
息子達に上手く説明できるか自信がなかったが、なんとかレイラの悪行を説明した。
『王子と婚約なんてさせられない。すぐに戻ってくるように言いましょう』
長男は言った。
『そうだな、レイラを施設に送ろう』
レイラを連れに王都へ行くと戻らないと拒否された。ここで無理にでも連れて帰ることが出来れば良かったのだが……
『え? 帰りませんけど? だって私フランツの婚約者になったのよ。喜んでくれても良いのになぜ怒られなきゃいけないの?』
私に対して敬語で話していたレイラは私を下に見るや否や横柄な態度に出た。
『伯爵家を出てきちゃったからお金が足りないの。可愛い娘が王宮で肩身の狭い思いをしなくてはいけないのよ? 可哀想だと思ったら毎月お金を送ってよ。オトウサマ』
と下卑た嗤いで私を見た。
『家族だと思い戻ってくるようにと言っている、それが聞けないのならレイラとの関係は無かったことにするまで。最後にもう一度言う。王子との婚約は許さない。男爵領に帰ってこい』
『お断りししまーす! たかが男爵じゃない? 伯爵家に滞在していた時よりも王宮の方がもっと凄いのよ? 誰が田舎の男爵領になんて戻りますか! 私は上に立つ人間なのよ。フランツが認めてくれたんだから、好きになさったら? ダンシャクー?』
言っても無駄か。今の時点で帰ってくるならまだマシだったのかもしれない。
『そうか……それならばレイラはもう男爵家とは関係のないと言うことだな? クレマン子爵家には婚約を破棄されるだろうから私はその話し合いに行ってくる。今回の事で慰謝料が発生するし国中の悪意を背負うことになる。その事も分かった上で王子妃になりたいというのだな?』
『悪意だなんて大袈裟ねぇ。フランツが守ってくれるから問題ないわ。それと子爵家に嫁ぐなんて嫌よ! あそこは私がいた場所じゃない……孤児である事を嫌でも思い出させられるわ! あんなところに嫁がされるなんて嫌がらせよね!』
嫌がらせ? クレマン子爵に申し訳が立たない。せっかくレイラを受け入れてくれると言うのに人の心がわからないのか! きっとレイラには何を言っても響かないんだな。
……レイラを領地で最後まで面倒を見る事で罪を一緒に償おうなどと思っていた自分がバカらしくなってきた。
『そうか。それならレイラとの縁はここまでだ。もう面倒を見られない』
『お金を送ってくれないのなら、男爵家に面倒を見られなくてもフランツがいるから大丈夫よ。サヨナラオトウサマ』
下卑た嗤いだ。
あなたにおすすめの小説
兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
殿下、その婚約破棄の宣言が、すべての崩壊の始まりだと気付いていますか?
水上
恋愛
※断罪シーンは4話からです。
「……位置よし。座標、誤差修正なし」
私はホールのちょうど中央、床のモザイク模様が星の形を描いている一点に立ち、革靴のつま先をコンコンと鳴らしました。
「今日、この場に貴様を呼んだのは他でもない。貴様の、シルヴィアに対する陰湿な嫌がらせ……、そして、未来の国母としてあるまじき『可愛げのなさ』を断罪するためだ!」
会場がざわめきます。
「嫌がらせ?」
「あの公爵令嬢が?」
殿下は勢いづいて言葉を続けました。
しかし、この断罪劇は、誰も予想しなかった方向へと転がり始めたのです。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw
さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」
ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。
「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」
いえ! 慕っていません!
このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。
どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。
しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……
*設定は緩いです
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
「僕より強い奴は気に入らない」と殿下に言われて力を抑えていたら婚約破棄されました。そろそろ本気出してもよろしいですよね?
今川幸乃
恋愛
ライツ王国の聖女イレーネは「もっといい聖女を見つけた」と言われ、王太子のボルグに聖女を解任されて婚約も破棄されてしまう。
しかしイレーネの力が弱かったのは依然王子が「僕より強い奴は気に入らない」と言ったせいで力を抑えていたせいであった。
その後賊に襲われたイレーネは辺境伯の嫡子オーウェンに助けられ、辺境伯の館に迎えられて伯爵一族並みの厚遇を受ける。
一方ボルグは当初は新しく迎えた聖女レイシャとしばらくは楽しく過ごすが、イレーネの加護を失った王国には綻びが出始め、隣国オーランド帝国の影が忍び寄るのであった。
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。