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お届けします
しおりを挟む「あら、ウィルの忘れ物?」
執事がお城からの手紙を受け取り、準備をしていたようです
「はい、今から届けに参ります」
本日は、お義母様と縫い物をしていました。
時は経ち、ウィルベルト様は学園を主席で卒業して、王宮にお勤めされています。
第二王子殿下の秘書補佐をしているそうで、毎日忙しく過ごしています。
学生時代とは違い会う時間も減りましたが、こうやってオリバス家に通っているので、不安とか寂しいと言う気持ちは全くありません。
「珍しいのね、ウィルが忘れ物だなんて」
「急に必要になったとのことでした。資料はまとめてございましたので、お届けに行ってまいります」
封筒を抱える執事にお義母様は
「セイラさん行ってきてもらえる? お城に行くといってもウィルに届け物をするだけだもの。ほら、あのベアトリスのワンピースを着て行ったら良いわ」
まだ婚約期間なのですが、オリバス家に部屋を与えられています。
急なお客様が来られた時に着替えをしたり、疲れた時に休憩をする部屋です。
少しだけ私物も運んでもらっていますので、落ち着くお部屋です。
結婚後は夫婦の寝室に移るのだそうで、現在リフォーム中です……。
「お城に行くとなると緊張しますね」
伯爵家のメイドアリーと私の侍女のリサに着替えを手伝ってもらいました。
髪型を整えウィルベルト様からプレゼントされた髪飾りを付けます。
いつの間にか増えてきた髪飾りの中からリボンをモチーフにした宝石のついた可愛い髪飾りで、お気に入りの一つです。
「お化粧も軽く致しましょう」
お城にお届けに行くと言うだけなのに、支度が大変です。
ウィルベルト様が待っているので、お化粧は簡単にすませて、執事から書類を預かり、新作のクッキーを差し入れする為に包みました。
オリバス家の領地で作る塩を使ったソルトクッキーです。
ウィルベルト様、気に入ってくださると良いのですが。
「それでは行って参ります」
お義母様にご挨拶をしました。
「ウィルはセイラさんの顔を見ると喜ぶわよ。ベアトリスはお嫁に行っちゃったし、セイラさんがうちに来てくれると、わたくしも楽しいわ」
ベアトリス様は今年ご結婚をされました。伯爵家の嫡男の方です。
王都のお屋敷に住まれていますので、会おうと思えば会えるのですが、新婚さんなのでお邪魔になりますものね。
ガタゴトと馬車は王宮に向かいます。いつもこの道を通ってウィルベルト様が通っているのだと思うと、不思議な感覚でした。
最近までは同じ学園に通っていたのに。
王宮の門が見えてきました。侍従が要件を伝えると既に伝えてあったのか、すぐに門が開かれました。
馬車を降りると王宮のメイドが案内をしてくださりました。第二王子殿下の執務室です。メイドがノックをしてウィルベルト様をお呼びしました。
「セイラ!! どうした?」
サプライズ成功ですね!
「こちらをお届けに来ました」
ウィルベルト様はパタンと執務室の扉を閉めて廊下に出てきました。
「これのためにわざわざ届けに来てくれたのか?」
こんなに驚いたウィルベルト様を見たことがありませんでした
「はい。頼まれていた書類と、差し入れのクッキーです」
「ありがとう。嬉しいよ、休憩の時にいただく」
「はい。お仕事のお邪魔ですのでそろそろいきますね」
名残惜しいけれど、ここはウィルベルト様の職場ですから、用件を終えたら帰らなくてはいけませんね。
「悪い。セイラに会えて嬉しかったよ。送っていきたいんだけど、ごめん。どうしても抜けられなくて……」
「はい、分かっています。お仕事頑張ってくださいね」
ウィルベルト様と別れ、リサとアリーと歩き出しました。ウィルベルト様の仕事姿を少しでも見られて良かったです。
広い廊下を歩き出してすぐにバサバサッと言う、明らかに紙の束が落ちた音が聞こえました。
曲がり角を折れると、男の方が書類のようなものを落としたようで、慌てて拾っていました。すぐに駆け寄り一緒に拾うことにしました。
「すまないね!」
拾うのに必死で、こちらを見ることはありませんでした。風に吹かれて飛ばされては大変です。
「いいえ、当然です」
なるべく書類を見ないように近くの書類を拾いお渡ししました。
「これで以上か……助かったよ。申し訳ないがこの書類のことは他言無用で頼むよ」
「はい。目を通さないようにようにしておりましたが、お約束いたします」
見てはいませんが、初対面の相手を信用できはずがありませんよね。ですので笑顔でお答えしました
「礼がしたい、名前を教えていただけないだろうか?」
ようやく男の方と目が合いました……この方は、すぐさま立ち上がって挨拶をしました!
「第二王子殿下にご挨拶申し上げます」
この方はウィルベルト様がお仕えしている第二王子殿下であられました……
「殿下、ここにいらしたのですか! 書類なら私共にお任せいただければお持ちしましたのに、さぁお時間が迫って参りました、行きましょう」
二十代後半?と言った感じの男の方が、殿下を呼びに来ました。
「いや、ちょっと待って、」
「お嬢さん、失礼しますね」
呼びに来た男性によって第二王子殿下は連れて行かれました。
頭を下げて見送りました。
ほっと胸を撫で下ろしました。ウィルベルト様がお仕えする王子殿下に失礼があってはなりませんもの。
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