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子供の頃2
しおりを挟むあの日からアルベルと会うことがなかった。
アルベルと仲良くする事を兄も母もよく思っていない。
悲しい思いはしていないだろうか…
アルベルが登城していることは知っている。学園へは貴族が十三歳になると通うことになる。
アルベルも私もまだ十歳。その間は家庭教師が付いて自宅で学ぶことになるのだが、アルベルは公爵と共に登城している
剣術の授業が終わり中庭を通って近道をしようとしたら、アルベルが居た。後ろ姿でもピンクの髪の色は目立つ
声をかけようとしたら、もう一人の兄がアルベルと話をしていた
「良いんじゃない?まだ兄上は学園から帰ってきていない、お茶をしよう」
「ビクトル様、ごめんなさい…行かなきゃ」
「私はアルベルティーナの泣いている顔を見たくない、どうしていつも隠れて泣いている?」
「…わたくしが不出来だから、上手く出来ないから、教えてくださる教師の方に熱が入ってしまって」
「アルベルティーナは不出来なんかじゃないよ。十歳でこんなに出来る子はなかなか居ないし、つい期待してどんどん先に進めたがるんだよ」
頭を撫で、慰める兄の姿、それは私の役なのに
「でもアルベルティーナを泣かせるなんて許せないよ、兄上は知っているの?」
ピンクの髪の毛が左右に揺れる
「そうなの?辛いことがあったら私に言って、必ずアルベルティーナを助けてあげるからね」
アルベルはきょとんとした顔をしているが、次男であるビクトル兄もアルベルを気に入っている。公爵家という後ろ盾も大きいのだろうが気に食わない
兄がアルベルの手を取って歩きだしたら丁度ベルナルド兄が帰ってきた
「ビクトル、なぜアルベルティーナと一緒にいる?」
「そこでアルベルティーナと会ったからですよ、今からそちらに連れて行こうと思っていたところでした」
しれっと答えるビクトル兄
「ティーナ、おいで。なんで時間を守れないんだ?」
不穏な空気を出す二人の兄王子達に挟まれいる
「申し訳、ございません、っ」
あー…アルベルが泣いた
「私がアルベルティーナを呼び止めたからですよ、彼女は悪くないですよ」
「……言いすぎた、まだティーナは十歳だから分からないと思うけど、でももっと頑張ってほしい。ごめんな」
返事をしないアルベルは下を向いた。それでも兄はアルベルの手を引いた。
大きな瞳が涙で溢れている…それに気がついたようで、少し慌てていた
「…部屋で話をしよう」と言って自室へと連れて行った
ビクトル兄はくそっ!と言って地面を蹴飛ばしていた
ベルナルド兄とアルベルティーナはまだ婚約をしているわけではない。
アルベルと話がしたい、間に合ううちに
月に一度、年頃の令嬢を招いてのお茶会が開かれる、母の意向だ。
私もビクトル兄も呼ばれて珍しく三人の王子が揃ったから会場は令嬢達の熱気が凄かった…
アルベルの元へ行きたいのに中々チャンスがない、兄上達もアルベルの元へ行けないようだ。
アルベルは歳が近い令嬢達と同じテーブルを囲んでいて楽しそうに笑っていた
可愛い令嬢たちに囲まれるのは悪い気はしないけどアルベルが気になった。いっそのこと一緒に取り巻いてくれれば良いけど、まぁ、無理だろう…
ふとアルベルの居たテーブルを見るとそこには姿がなかった…手洗いにでも行ったのか?二十分が過ぎただろうか…まだ戻ってこない。心配になり探しに行くと、兄上達の婚約者候補と呼ばれる令嬢数人に、囲まれていた
「小さいくせにベルナルド殿下に気にかけて貰っているからといい気になって…」
「ビクトル殿下も公爵家の令嬢だから気にかけているのよ」
「調子にのっているではなくて?」
「自分のことをお姫様だと勘違いしているんじゃありません?ユリウス様やイザーク様が優しい事を良いことに!」
「何も言わないのは肯定しているからね、身分が高くて、少し可愛いからと言って男の方を侍らすのは最低な行為なのよ、覚えておきなさい!」
ムカついた…アルベルはそんなつもりは一切ない。私たちが勝手にアルベルと居るだけだ。そんな暴言を吐いてアルベルを傷つけるなんて!
「聞いていれば調子に乗っているのはそっちだろう!今の話を兄達や公爵家の人間が聞いたらどうなるか考えていないのか?」
「「「「…メイナード殿下…」」」」
サッと頭を下げて赦しをこう姿勢だが、許す気はない。
「顔を見たくない、去れ」
もうどこの家の令嬢か覚えた
「なんでこう、アルベルはいつも泣いてるんだろうね」
「泣いていません」
「もう我慢しなくていい、見ているだけで辛いよ」
「我慢、していません」
「じゃあ、このまま兄上と婚約して結婚していつかは王妃になるの?」
「………わかりません」
「覚悟がないんじゃ無理だよ」
「……だって」
「公爵にちゃんと思っている事を言わなきゃ…みんなアルベルの話を聞いてくれるだろう?」
政略結婚だと子供の意向は完全無視だろうが、公爵は無理矢理嫁がせることはしない。
婚約の話だってうちからの申し出だ
こくんと頷いたアルベル
「私はアルベルが好きだ。だから泣いている顔も悲しい顔も見たくない、笑っていてほしいと思う。アルベルが兄上と一緒にいて幸せそうに笑っているなら何も言うつもりはなかったんだ。でも辛い思いをしているじゃないか…さっきも令嬢に囲まれて…」
「わたくしが不出来だから…わたくしが完璧な令嬢だったらベルナルド様やビクトル様に迷惑をかけないのに。お兄様達にも…申し訳ないです」
「言い返せば良いだろ?アルベルは不出来なんかではない。完璧な人間なんて面白くない」
「なんて言うの?侍らすって何?いい言葉じゃないのは分かるけれど…」
「…みんなアルベルが可愛いから、自分たちに頼ってほしいと思っている…だからアルベルを甘やかすんだ。頑張れと応援しているふりをして、依存させている…それではアルベルのためにならない。ちゃんと断る勇気も必要だ」
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