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クララ
しおりを挟むなにこれ! なにこれ!
なにこれ! こんなのが食事? ゲ○の間違いじゃないの? 味もしないし全然足りない!
この前まで出ていた食事と全然違うじゃない!! 侯爵家のコックの作る贅沢な食事を食べさせなさいよっ!
肉よ! 魚よ! 焼きたてのパン!!
あのメイドも出て行ったし、扉の外には見張りもいるしこんなの、監禁じゃないのよぉ!!
おやつも寝酒も没収されるし、ドレスも着心地の良い夜着もない!
使用人の時のお仕着せと、持ってきた簡素なワンピース、たったそれだけしかない。今着ているのは飾りけのない前びらきの病人着。
私はゲストなのにっ! この家の当主となるジェラールの幼馴染なのに!
あの医者が来てから一日経った。あの医者ヤブなんじゃないの! でも病気じゃないと知られたらまた使用人に逆戻り……。
ジェラールの婚約者アナベル様の嫌がらせに決まっているわ!
ノックの音がしてジェラールが扉を開けた。今朝から機嫌がすこぶる悪いジェラールは一言も喋らない。なんなのよ!
「検温の時間です」
看護師二人が部屋に入ってきた。
「熱はないわ。それより外に出たいんだけど」
たった一日この部屋で監禁されただけだけど暇で仕方がない。ジェラールは機嫌が悪いしその空気が伝わってくる。
娯楽がないのよね。難しい本くらい……ジェラールはそんな本を読んでいて楽しいの?
「ベッドで横になり大人しくなさってください。先生の見立てでは特に異常は見られませんのに、体の至る所が調子が悪いなんて……。先生がクララさんの体の不調を必ず解明すると言っておりました。いまクララさんに出来ることは、一刻も早く身体を治すことですわ。さぁベッドへ」
横になるようにと促されベッドへ連れて行かれた。
「……そんなぁ、私は大丈夫よ。外に出て美味しい空気を吸って、美味しいものを食べて、綺麗なドレスを着ると不思議と気分も良くなるのよ」
人間は美味しいものを食べて身体を維持するんだもの。ドレスは……まぁおまけね。
「俺は外に出てもいいだろう! なんで一緒にいなくては行けないんだ! 執務に差し支えるぞ!」
とうとうジェラールが口を出した。
「先生が仰るには、やはり身の回りのことは身近な方がする方が患者にとって良いとのことです」
「部屋から出さない理由は!」
「原因が分からない以上、ゆっくり休んでいただくのが良いと。お屋敷は広いですから歩いて回られるとお身体に負担がかかると言う判断でございます」
「食事の質が落ちた理由は? ここはゲストルームだぞ!」
「こちらの病人食は栄養価がとても高いんですのよ? 手も掛かっておりますし……」
看護師が言った。栄養価があってもあれじゃ、健康体なら足りない筈。文句しか出ないわよね。
「む、私は健康体だ……食事の変更を要求する。でないと私の実家に報告をすると伝えてくれ」
「私どもは看護師です。それは屋敷の方に仰ってくださいませ」
た、確かに。そうね。
検温や様子を見てから看護師が出て行き、代わりに執事長がやってきたの。
「クララさん調子はどうですか?」
使用人の時とは違い優しい口調で話かける執事長。
「はい、まだ良くないです……」
お腹も減ったし、退屈だし調子が良くなるわけがない。
自由がない。立派なお部屋に居るのに……何もないなんて!
「ジェラール様は如何ですか?」
「如何とはなんだ! 俺は関係ないのに閉じ込められているんだぞ! せめて俺は出せ。あとは使用人を寄越せ! 俺が連れてきた侍従がいただろ?」
「あぁ。彼はですね。クレマン侯爵家で働きたいと言い、伯爵家を離職しまして今はクレマン侯爵家の侍従見習いをしております」
「…………はぁ? なぜそうなった! 俺は聞いてない」
「伯爵様が了承されましたので、書類上も既に侯爵家所属となっていますよ」
「他にも使用人がいただろ?」
「皆さん伯爵家を離職しクレマン侯爵家所属となりました。皆さんが望んだ事でございます」
「ちっ。あいつらは忠誠心というものがないのか!」
え! ここに一緒に来た皆んなが辞めたの? いつよ! 知らない。知らない。
「まぁ、良い。身の回りの準備をする者を誰でもいいから寄越してくれ」
「それはクララさんがいますでしょう、お互い面倒を見ればよろしいかと」
「いいからここから出せ。俺がいないとアナベルが困るだろう?」
「お嬢様ですか? はて? 困りますかね……」
「……どう言う意味だ!」
「仕事をしないジェラール様の分も頑張っておられます。寧ろ……邪魔がいなくてはかどっているご様子です」
「な! 邪魔だと?」
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