真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの

文字の大きさ
1 / 22

喜んでお受けいたします

しおりを挟む
「真の愛とは何かわかるか?」
「存じあげませんわね…」
「やっと見つけたんだ、真実の愛を」
「それはっ! おめでとうございます」
「……もしかして喜んでくれるのか?」
「えぇ、もちろんでございます殿下」
「私が君と婚約破棄したいと言ってもか?」
「えぇ……」
「心苦しいよ……君とは長い間一緒に過ごしてきたから……」
「いいえ、いいえ! お気になさらずに」
「……まさか、応援してくれるとでも言うのか?」
「はいっ! 勿論です」
「すまない、私は真実の愛を見つけてしまったんだ……」
「えぇ、えぇ、存じておりますわ」
「知っているのか?」
「子爵令嬢の事でございましょう?」
「………あぁ」
「婚約は破棄と言う事でよろしいのでしょう?」
「その予定ではあるが……」
「書類を準備いたしましょう!」
「……いや、待て、少し考えることに……」
「何を仰るのです! 真実の愛を前にしてはわたくしの存在がお邪魔でございましょう?」
「……いや……そんなことは、」
「殿下、おめでとうございます。真実の愛をみつけられるなんて、さすが殿下でございます! 尊敬致します」

「……そうなの、か?」
「えぇ! 中々見つかるものではございません!真実の愛ですわよ? ロマンスですわね」
「まぁそうだな……」
「ではこちらにサインを」

「いつの間に書類を用意したんだ……?」
「殿下、お先に失礼致しますわね、先にわたくしからサインを…」
サラサラ……とペンを走らせる

「はい! どうぞ」
「……いや、少し考え、」
「何を仰るのです! 真実の愛ですわよ!」
「いや、しかし……」
「はい、どうぞ」
「……しかし、だな」
「どうかされました?」


「婚約、破棄しなきゃダメか?」
「はいっ! 勿論です」
「気のせいかな……喜んで見えるのは……」
「……いえ、早くサインを書いて貰い、この場から立ち去り悲しみにくれようと思っております」
「ここにサインをすると君との関係は終わってしまうのだぞ?」
「えぇ、仕方がございません、真実の愛にわたくしは敵いませんもの……」

「……君と長い年月を過ごす上で見過ごした愛と言うものがあるのかも知れないと思い始めてきたよ」
「……そんな……それは子爵令嬢に悪うございます。真実の愛を引き裂くなんてわたくしには出来ません!」

「君のことを嫌いになったわけではないんだ」
「わたくしには勿体ないお言葉でございます」
「一度じっくり考えることに、」
「はい、ペンを握って、握り方はこうですよ?」

優しくペンを握らせる


「君の手はまるで白魚のように美しいな」
「まぁ、ありがとう存じます、ここにお名前を書いてくださいませ」
「君は文字も美しいのだな……」
「まぁ! ありがとう存じます。フルネームでお書きくださいませ」
「私は何をさせられようとしているのだ?」
「お名前を書くだけですわよ?」
「なんのために?」
「……真実の愛のためですわよ? どうされましたの? 殿下?」
「いや、そもそも、だな、」

「はい、お名前をサロモン・ド・アルベール、スペルわかりますか? S・a・l・o・m・o・n」
「いや、それは分かるが……」
「どうされました? ペンが進んでおられません!」
「なぜだ?」
「もう? なんです! 良い加減にしないとわたくし怒りますわよ?」

「こっちのセリフだっ!!」
「……よくわかりませんわね」
「なぜ、君はそんなに急かす?」
「真実の愛ですわよ?」
「それはもういいっ!」
「良くありません!」

「……どうしたいんだよ、君はっ!」
「……殿下と子爵令嬢の真実の愛を見届けたいと思いまして」
「……よく分からん」
「まぁっ、殿下が仰った事でございましょう?」
「私はサインを、しないからなっ!」
「……それでは私が代理で致しましょう」
「そんなバカげたことが出来るかっ!」
「いや、真似して書けばなんとか……」
「サインは自分でするっ!」

「分かりました、それではこちらに、」
「くどいっ! 撤回するっ!」
「はぁ?!」

「……なんだその態度は?!」
「殿下の仰る愛とはそんな軽いものだったのですね……がっかり致しました!」
「……それはだな」
「はぁ……わたくしは帰りますわね」
「待て話が終わっておらん」
「……終わりましたでしょう?」

「……君は私の事をどう思っている?」
「殿下は殿下です」

「……どう言う意味だ?」
「昔からサロモン・ド・アルベール殿下です。貴方は貴方以外でないんでしょう?」
「……意味が分からん」
「殿下が聞いてきたくせに……何を今更」
「……私は君の事を、」

「どうでもよろしいです、サインをして書類を出しておいてくださいませね、わたくしはもうこちらに来ることがございませんので、」

「待て! なぜだ?」
 腕を掴まれる

「離してください、殿下」
「いや、話を聞くまでは離さない」

「わたくしも真実の愛とやらを見つけたくなりましたの。わたくしの相手は殿下ではございませんでしょう? 今までわたくしと過ごしていた時間を子爵令嬢に当ててくださいましね、それでは失礼し、」

「……相手にあてはあるのか?」
「ですから見つけたいと思っております」
「私が邪魔と言うことか?」

「おかしな事を仰らないでくださいまし。殿下が真実の愛を見つけたのですよ? 殿下の恋の相手は子爵令嬢であり、わたくしではございません」
「……それは、そうだが、」
「真実の愛を邪魔するなんて野暮な真似はしたくないのです。今なら婚約破棄の慰謝料は無しにしてもらうように、父を説得しますよ?」

「……どうしてそこまで、」
「応援していますわよ! 頑張ってくださいましね殿下」
「君と過ごした十年間が無駄になるのは心苦しいよ」

「わたくしとの事を天秤にかけるのはおかしいのですわよ? 殿下は愛の重さをお知りになったのでしょう?」
「……もしかしたら気のせいかも、」

「ふふふ、私のことは気になさらずに殿下はご自分の選んだ道を全うしてください」 
「しかしだな」
「はい、まずサインをしましょう。それから考えましょうね」

…」

「そうです、サインをしてからでも、考える時間はたっぷりございますでしょう?」
「そうなのか?」
「えぇ、私は逃げも隠れも致しません」
「愛とはそう言うものなんだな」
「おそらくは……わたくしは知り得ませんですけどね」

ペンを握るサロモン、もうサインするしかなかった……
しおりを挟む
感想 75

あなたにおすすめの小説

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。

豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」 「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」 「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

この嘘が暴かれませんように

豆狸
恋愛
身勝手な夫に一方的な離縁を申し付けられた伯爵令嬢は、復讐を胸にそれを受け入れた。 なろう様でも公開中です。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

愛は見えないものだから

豆狸
恋愛
愛は見えないものです。本当のことはだれにもわかりません。 わかりませんが……私が殿下に愛されていないのは確かだと思うのです。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

この雪のように溶けていけ

豆狸
恋愛
第三王子との婚約を破棄され、冤罪で国外追放されたソーンツェは、隣国の獣人国で静かに暮らしていた。 しかし、そこにかつての許婚が── なろう様でも公開中です。

真実の愛の言い分

豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」 私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。

処理中です...