捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻

文字の大きさ
36 / 71

3-7. 弟子の造反

しおりを挟む
 班長はしびれる手をさすりながら、うなだれ、言葉を失う。
 見知らぬ幻術で部下は全滅、自信のあった剣術も全く通用しなかった。強さの次元が違う……。王国最強を誇る騎士団長ですらこれほどまでの強さは無いのだ。

 班長はちらっとヴィクトルを見る。金髪碧眼の可愛い子供……、あの子は彼女よりも強いらしい……。班長はゾクッと背筋に冷たい物が流れるのを感じる。
 なるほど、『王都の脅威』としたあの男の言葉は本当だった。彼女とあの子が攻めてきたら騎士団全員を投入しても止められない。まさに王都の脅威だった。

 班長は何度か深呼吸を繰り返すと、ヴィクトルのところへと足を進め、手を胸に当て、頭を下げて謝る。
「我々の負けです。大変に失礼をいたしました」
 ヴィクトルはうんうんとうなずくと、
「大丈夫、彼女に勝てる人なんていないから」
 そう言ってニコッと笑った。
「えっ? でも、あなたは勝てるんですよね?」
 班長は不思議そうに聞く。
「あぁ、まぁ……」
 すると、ルコアがドヤ顔で言い放つ。
「主さまは別格です! 何と言っても主さまは大賢じ……」
 ヴィクトルは焦ってルコアの口をふさぐ。
「え? だいけんじ……?」
 首をかしげる班長。
「違う違う、だ、『大剣使い』ってことですよ?」
 苦し紛れの言い訳をするヴィクトル。
「えっ!? その体で大剣使うの!?」
「そうそう、剣の方が大きいんですよ。秘密ですよ、はははは……」
 何とも言えない空気が周囲に流れる。
 ヴィクトルはジト目でルコアをにらみ、ルコアは目を泳がせた。

      ◇

「ところで、君たちは何しに来たのかね?」
 腕組みをしたマスターがニヤニヤしながら、班長に聞く。
「とあるミッションに『ギルドの助力も得よ』との指示があり、相談に上がりました」
「とあるミッション?」
「ちょっとここでは……」
 そう言って班長は周りを見回す。
「おい、お前ら、見世物は終わりだ! みんなギルドに入れ!」
 マスターはやじ馬たちを追いやった。
「あ、あなたたちは残って欲しいんだが……」
 班長は、立ち去ろうとするヴィクトルとルコアに声をかける。
「えー、国の依頼なんて嫌ですよぅ」
 ルコアは露骨に嫌な顔をした。
「話だけでも聞いてくれないか?」
 班長は頭を下げる。
「話……聞くだけですよ」
 ヴィクトルも嫌そうに言った。

 班長はやじ馬が居なくなったのを確認すると、小声で話し始める。
「実は国王陛下の護衛をお願いしたい」
「陛下の護衛? そんなのあなた達の仕事ですよね?」
 ヴィクトルはいぶかしげに返した。
「それが……、テロリスト側にどうも奇怪な魔法を使う魔導士がいて、我々では守り切れない懸念があり……」
「奇怪な魔法?」
「重力魔法と火魔法を混ぜたような物という報告がありまして……」
 ヴィクトルは背筋が凍った。重力魔法と火魔法を混ぜるというのは前世時代、賢者の塔で研究していたテーマの一つである。上手く混ぜることで殺傷力を高められることは分かったが、危険なため封印していた成果だった。もし、それが使われているとなると、それは賢者の塔の関係者が加担しているということであり、自分の責任と言える。
 ヴィクトルは青ざめた顔でうつむく。弟子のうちの誰かがやっている……。一体誰がやっているのか……。
「護衛なんてやりませんよ! ね、主さま?」
 ルコアがムっとした様子で言った。
 ヴィクトルは腕組みをしてしばらく考える……。
 弟子はみんな正義感もある、しっかりとした者ばかりだった。一体誰が……。
 しかし、いくら考えても分からない。
 そして、大きく息をつくと言った。
「日程は?」
「四日後にサガイの街への移動があり、これに同行いただきたい」
 班長は真剣な目をして言う。
「え? まさか、主さまやるんですか?」
 ルコアは目を丸くする。
 ヴィクトルは大きく息をつくと言った。
「ルコア、悪いが付き合ってくれるか?」
「え――――! でも……、主さまがやるなら……付き合いますよ、そりゃぁ……」
 口をとがらせるルコア。
「悪いね、ありがと!」
 ヴィクトルはルコアの背中をポンポンと叩く。
「受けますので、条件などはマスターと詰めてください」
 ヴィクトルはそう言うと、足早にギルドを後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...