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153. 地獄のチキンレース
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「あ、あの……。今、誰かの声が……」
俺は恐る恐るレヴィアに聞いてみた。
「こんな時に何を言うとる! ホイ、できた! 行くぞ!」
どうやらレヴィアには聞こえていなかったようだ。
レヴィアはケーブルをしまい、バン! とパネルを閉める。
ブゥゥン!
起動音がして操縦パネルが青く光り、船室にも明かりがともった――――。
命の灯が戻ってきた瞬間に俺は安堵のため息をつく。
しかし、パン! パン! と、容赦ない威嚇射撃が再度船体を震わせた。
ひぃっ!
俺はこれから始まる逃走劇に胃がキリキリと痛んだ。
キィィィーーーーン!
甲高い音が響き、ゆっくりとエンジンに火が入る。船内に低周波振動が伝播していく。
『S-4237F、直ちに停船しなさい。繰り返す。直ちに停船しなさい』
スピーカーも復活し、スカイパトロールからの警告が響く。その無機質な声が、緊迫感を煽る。
「しつこいのう……」
レヴィアは画面をパシパシっと操作した。
『システムトラブル発生。救難を申請します。システムトラブル発生。救難を申請します』
スピーカーから機械音声が流れる。レヴィアは偽装した遭難信号を、宇宙空間に放ったのだ。
「まずは遭難を装うのが基本じゃな。そしてこうじゃ!」
レヴィアは舵をググっと向こうへと押し込む。それは海王星に真っ逆さまに落ちて行くルートだった。
へっ!?
俺は目を疑った。
通常、大気圏突入時には浅い角度で徐々に速度を落としながら降りていく。急角度で突入した場合、燃え尽きてしまうからだ。しかし、レヴィアの選んだルートは燃え尽きるルート、まさに自殺行為だった。焼失への一直線――――。
「レ、レヴィア様、燃え尽きちゃいませんか?」
声に震えが混じる。
「スカイパトロールから逃げきるにはこのルートしかない。奴らは追ってこれまい」
「そりゃ、こんな自殺行為、追ってこられませんが……、この船持つんですか?」
「持つ訳なかろう。壊れる前に減速はせねばならん」
レヴィアはキュッと口を結んだ。
俺は思わず天を仰ぐ。次から次へと起こる命がけの綱渡りに頭が痛くなる。燃え尽きるか、捕縛されるかのわずかな隙間――――。絶望的なルートしか残されていない現実が、重く圧かかる。
操縦パネルの隣には立体レーダーがあり、スカイパトロールの位置が赤く明滅している。彼らも燃え尽きルートを追いかけてきているようだ。追跡者たちの執念が、レーダー画面に輝いている。俺はただ、祈るようにそれを見つめた……。
「まだ追いかけてきますよぉ……」
「くっ! しつこい奴らじゃ……」
ヴィーン! ヴィーン!
警報が鋭い音を上げ、狭隘な船内に反響した。
『設計温度の上限を超えています。直ちに回避してください。設計温度の上限を超えています。直ちに回避してください』
「うるさい! そんなの分かっとるわい!」
レヴィアの操縦桿を握る手が震えた。
シャトルの前方が灼熱の赤色に輝き始める。大気との摩擦で船体が悲鳴を上げ、まるで太陽に突っ込んでいくかのような光景だった。巨大な流星と化した船体からは、オーロラのような光の帯が引かれていく。
それでも追っ手のスカイパトロールの姿はレーダーの画面に執拗に映り続ける。シャトルが燃え尽きるのが先か、彼らが諦めるのが先か――――。まさに地獄のチキンレースだった。
俺は恐る恐るレヴィアに聞いてみた。
「こんな時に何を言うとる! ホイ、できた! 行くぞ!」
どうやらレヴィアには聞こえていなかったようだ。
レヴィアはケーブルをしまい、バン! とパネルを閉める。
ブゥゥン!
起動音がして操縦パネルが青く光り、船室にも明かりがともった――――。
命の灯が戻ってきた瞬間に俺は安堵のため息をつく。
しかし、パン! パン! と、容赦ない威嚇射撃が再度船体を震わせた。
ひぃっ!
俺はこれから始まる逃走劇に胃がキリキリと痛んだ。
キィィィーーーーン!
甲高い音が響き、ゆっくりとエンジンに火が入る。船内に低周波振動が伝播していく。
『S-4237F、直ちに停船しなさい。繰り返す。直ちに停船しなさい』
スピーカーも復活し、スカイパトロールからの警告が響く。その無機質な声が、緊迫感を煽る。
「しつこいのう……」
レヴィアは画面をパシパシっと操作した。
『システムトラブル発生。救難を申請します。システムトラブル発生。救難を申請します』
スピーカーから機械音声が流れる。レヴィアは偽装した遭難信号を、宇宙空間に放ったのだ。
「まずは遭難を装うのが基本じゃな。そしてこうじゃ!」
レヴィアは舵をググっと向こうへと押し込む。それは海王星に真っ逆さまに落ちて行くルートだった。
へっ!?
俺は目を疑った。
通常、大気圏突入時には浅い角度で徐々に速度を落としながら降りていく。急角度で突入した場合、燃え尽きてしまうからだ。しかし、レヴィアの選んだルートは燃え尽きるルート、まさに自殺行為だった。焼失への一直線――――。
「レ、レヴィア様、燃え尽きちゃいませんか?」
声に震えが混じる。
「スカイパトロールから逃げきるにはこのルートしかない。奴らは追ってこれまい」
「そりゃ、こんな自殺行為、追ってこられませんが……、この船持つんですか?」
「持つ訳なかろう。壊れる前に減速はせねばならん」
レヴィアはキュッと口を結んだ。
俺は思わず天を仰ぐ。次から次へと起こる命がけの綱渡りに頭が痛くなる。燃え尽きるか、捕縛されるかのわずかな隙間――――。絶望的なルートしか残されていない現実が、重く圧かかる。
操縦パネルの隣には立体レーダーがあり、スカイパトロールの位置が赤く明滅している。彼らも燃え尽きルートを追いかけてきているようだ。追跡者たちの執念が、レーダー画面に輝いている。俺はただ、祈るようにそれを見つめた……。
「まだ追いかけてきますよぉ……」
「くっ! しつこい奴らじゃ……」
ヴィーン! ヴィーン!
警報が鋭い音を上げ、狭隘な船内に反響した。
『設計温度の上限を超えています。直ちに回避してください。設計温度の上限を超えています。直ちに回避してください』
「うるさい! そんなの分かっとるわい!」
レヴィアの操縦桿を握る手が震えた。
シャトルの前方が灼熱の赤色に輝き始める。大気との摩擦で船体が悲鳴を上げ、まるで太陽に突っ込んでいくかのような光景だった。巨大な流星と化した船体からは、オーロラのような光の帯が引かれていく。
それでも追っ手のスカイパトロールの姿はレーダーの画面に執拗に映り続ける。シャトルが燃え尽きるのが先か、彼らが諦めるのが先か――――。まさに地獄のチキンレースだった。
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