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163. 本当の姿
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シャトルは徐々に減速し、ジグラートの巨大な漆黒の壁面から突き出たボーディングブリッジに静かに接近していく。
しかし――――。
ボーディングブリッジに近づいた直後、ガン! という衝撃と共に機体が大きく揺れた。
うわぁぁ!
いきなりの衝撃に俺は思わず情けない声を上げてしまう。
シャトルは翼の先を失っているためか上手く接舷できないようだった。
「なんじゃ! 最後の最後で!」
レヴィアの小さな手が操縦桿を握りしめる。シャトルはダイヤモンドの吹雪の中、エンジンを吹かしたり、逆噴射したりしながら何度も大きく揺れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「知らん! 祈っとれ!」
レヴィアはカメラモニターを険しい目でにらみ、タイミングを測る。
「ここじゃぁ!」
操縦桿を一気に倒すレヴィア。
大きく揺れる機体――――。
ひぃぃぃ!
直後、ガッチャン! と重厚な機械音を放ちながら船内の計器が一瞬明滅する――――。
ピロロロロ……パシュー!
「よーし、着いたぞ! お疲れ!」
レヴィアは小さな掌でパチパチと操作パネルを叩き、シートベルトを解除する。金髪のおかっぱ頭が弾むように揺れた。
俺は最後の最後までジェットコースターのような展開にしばらく固まり――――、大きく息をつくと首を振った。
「何度も死ぬかと思いましたよ」
「結果オーライじゃな。キャハッ!」
レヴィアはニヤリと笑いながらサムアップして見せた。
◇
エアロックの自動ドアがプシューと開くと、息を呑むような光景が広がった。漆黒の闇の中で、無数の青い光が瞬いている。サーバーについたLEDのインジケーターが、まるで銀河を形作るかのように広がっていたのだ。
「我が星へようこそ!」
レヴィアが入り口の操作盤を叩くと内部照明が次々と点灯し、ジグラートの全容が姿を現す。それは見渡す限り続く巨大なサーバーラックの群れだった。小屋のサイズの円柱がズラリと並び、その存在感は圧倒的だった。
入り口の脇に目をやると、畳サイズの集積基盤が整然と積み上げられている。水晶のような素材で作られた透明な集積基盤の内部には微細な回路が敷き詰められ、冷媒を通す管が幾何学模様を描くように配置されていた。
「それ一枚で、お主のパソコン百万台分くらいかのう?」
レヴィアは嬉しそうに俺の顔をのぞきこむ。
「えっ!? 百万ですか!?」
その数字の重みに、思わず声が裏返る。人類の技術からすれば、途方もない性能だった。
「海王星人の技術はすごいじゃろ? まぁ、上には上があるんじゃが……」
レヴィアは遠い目をした。小さな体に似合わぬ深い溜め息が、施設内に響く。その瞳に映るのは、はるか彼方の記憶なのだろうか――――。
床の金属の金網越しに上下を見ると、上にも下にも同じ構造が無限に続くかのように広がっている。青く輝くLEDの光が幾重にも重なり、深淵のような景色を作り出していた。外から見た時、高さは数百メートルはあったから、このサーバーラックも数十層は優に重なっているのだろう。
通路の先を見渡すと、地平線のように消えていくサーバーの列。奥行きは優に一キロを超え、数百個のサーバーが整然と並んでいる。時折、冷却システムが発する微かな震動が、この巨大な構造物全体に命を吹き込んでいるかのようだ。
「なるほど……星を作るというのは、こういうことだったのか」
俺の呟きがサーバーの合間に響く。これほどの壮大なコンピューターシステムでなければ、仮想現実空間など実現できるはずもない。しかし逆に言えば、ここまでの規模があれば、星さえも創造できてしまうということなのだ。
ふと疑問が湧く。誰が、何のために、これほどの施設を作ったのだろう? 先ほどすれ違った猫顔の人物には、このような壮大な企みを抱く気配など微塵も感じられなかった。となると、女神様しかいないが、彼女も楽しそうにダンスしていたただの女子大生。一体この世界はどうなっているのだろうか?
「これがうちの星じゃぞ。どうじゃ? 驚いたか?」
レヴィアは得意気な表情を浮かべる。
「いや、もう、ビックリですよ。なるほど、これが真実だったんですね!」
レヴィアはニヤッと笑うと、
「折角じゃから見せてやる。ついてこい」
金髪のおかっぱ頭を揺らしながら、早足で通路を進んでいく。足どりが金属の床を叩く度に、カンカンと甲高い音が響いた――――。
「え? 何かあるんですか?」
「お主の本当の姿を見せてやる」
レヴィアはくるっと振り返り、ニヤッと笑った。
しかし――――。
ボーディングブリッジに近づいた直後、ガン! という衝撃と共に機体が大きく揺れた。
うわぁぁ!
いきなりの衝撃に俺は思わず情けない声を上げてしまう。
シャトルは翼の先を失っているためか上手く接舷できないようだった。
「なんじゃ! 最後の最後で!」
レヴィアの小さな手が操縦桿を握りしめる。シャトルはダイヤモンドの吹雪の中、エンジンを吹かしたり、逆噴射したりしながら何度も大きく揺れた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「知らん! 祈っとれ!」
レヴィアはカメラモニターを険しい目でにらみ、タイミングを測る。
「ここじゃぁ!」
操縦桿を一気に倒すレヴィア。
大きく揺れる機体――――。
ひぃぃぃ!
直後、ガッチャン! と重厚な機械音を放ちながら船内の計器が一瞬明滅する――――。
ピロロロロ……パシュー!
「よーし、着いたぞ! お疲れ!」
レヴィアは小さな掌でパチパチと操作パネルを叩き、シートベルトを解除する。金髪のおかっぱ頭が弾むように揺れた。
俺は最後の最後までジェットコースターのような展開にしばらく固まり――――、大きく息をつくと首を振った。
「何度も死ぬかと思いましたよ」
「結果オーライじゃな。キャハッ!」
レヴィアはニヤリと笑いながらサムアップして見せた。
◇
エアロックの自動ドアがプシューと開くと、息を呑むような光景が広がった。漆黒の闇の中で、無数の青い光が瞬いている。サーバーについたLEDのインジケーターが、まるで銀河を形作るかのように広がっていたのだ。
「我が星へようこそ!」
レヴィアが入り口の操作盤を叩くと内部照明が次々と点灯し、ジグラートの全容が姿を現す。それは見渡す限り続く巨大なサーバーラックの群れだった。小屋のサイズの円柱がズラリと並び、その存在感は圧倒的だった。
入り口の脇に目をやると、畳サイズの集積基盤が整然と積み上げられている。水晶のような素材で作られた透明な集積基盤の内部には微細な回路が敷き詰められ、冷媒を通す管が幾何学模様を描くように配置されていた。
「それ一枚で、お主のパソコン百万台分くらいかのう?」
レヴィアは嬉しそうに俺の顔をのぞきこむ。
「えっ!? 百万ですか!?」
その数字の重みに、思わず声が裏返る。人類の技術からすれば、途方もない性能だった。
「海王星人の技術はすごいじゃろ? まぁ、上には上があるんじゃが……」
レヴィアは遠い目をした。小さな体に似合わぬ深い溜め息が、施設内に響く。その瞳に映るのは、はるか彼方の記憶なのだろうか――――。
床の金属の金網越しに上下を見ると、上にも下にも同じ構造が無限に続くかのように広がっている。青く輝くLEDの光が幾重にも重なり、深淵のような景色を作り出していた。外から見た時、高さは数百メートルはあったから、このサーバーラックも数十層は優に重なっているのだろう。
通路の先を見渡すと、地平線のように消えていくサーバーの列。奥行きは優に一キロを超え、数百個のサーバーが整然と並んでいる。時折、冷却システムが発する微かな震動が、この巨大な構造物全体に命を吹き込んでいるかのようだ。
「なるほど……星を作るというのは、こういうことだったのか」
俺の呟きがサーバーの合間に響く。これほどの壮大なコンピューターシステムでなければ、仮想現実空間など実現できるはずもない。しかし逆に言えば、ここまでの規模があれば、星さえも創造できてしまうということなのだ。
ふと疑問が湧く。誰が、何のために、これほどの施設を作ったのだろう? 先ほどすれ違った猫顔の人物には、このような壮大な企みを抱く気配など微塵も感じられなかった。となると、女神様しかいないが、彼女も楽しそうにダンスしていたただの女子大生。一体この世界はどうなっているのだろうか?
「これがうちの星じゃぞ。どうじゃ? 驚いたか?」
レヴィアは得意気な表情を浮かべる。
「いや、もう、ビックリですよ。なるほど、これが真実だったんですね!」
レヴィアはニヤッと笑うと、
「折角じゃから見せてやる。ついてこい」
金髪のおかっぱ頭を揺らしながら、早足で通路を進んでいく。足どりが金属の床を叩く度に、カンカンと甲高い音が響いた――――。
「え? 何かあるんですか?」
「お主の本当の姿を見せてやる」
レヴィアはくるっと振り返り、ニヤッと笑った。
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